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発掘

xxxx年
 ザ・ナショナルジオグラフィティ 春季号 巻頭記事より



 極地観測隊によって永久凍土(ツンドラ)の下から凍結された謎の生命体の死骸が発掘された。発掘されたのは表皮の一部ではあるが、約1万年前頃に地表に存在していた生物の死骸の一部とみられる。永年氷点下以下で凍結されていたことにより保存状態はよく、黄色い色素までもが鮮やかに残っている。
 我々の祖先は人類と言われているが、今回の発掘は、人類が栄えた同時期に別種の生命体が存在していた可能性を示唆している。人類の身体を構成する成分は主に数万種類に及ぶアミノ酸から成る複雑なタンパク質であるが、分析によれば、この生命体の主たる素性は、鉄、樹脂、そして植物を由来とする繊維質から成り立っている。これは人類の素性とは大きく異なっており、今回の発見は、研究者の間では大きな驚きをもって迎えられている。また、眼球や鼻梁のサイズから察するに、この生き物は、標準的な人類と較べれば、スケールもかなり大きく20倍、30倍もあると考えられる。
 人類が地球を支配していた頃、現在とは地軸や重力がかなり違っており、このように巨大な頭部を持った生物が存在していたとすれば、これまでの学説を大きく覆す可能性がある。
 科学省によれば、今後、周辺の調査を進めるとともに、この死骸を持ち帰り詳しく調査するという。その結果次第では、これまでの我々の進化の歴史や、まだまだ謎に包まれている、地球に人類が栄えていた時代の生態系、さらには英華を誇った人類が滅んだ原因の解明までもが期待される。

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