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清水の次郎長(8人目のAさん)

Aさんは78歳の男性、一人暮らし。
エレベーターのないマンションの4階で暮らしていましたが、下肢筋力低下で引っ越しが必要。
ケアマネから有料老人ホームへ引っ越しをするので、その間リハビリをしてほしいと依頼がありました。
生活保護のため転居についてはいろいろ手続きとタイミングがあります。

スムーズにいけば1ヶ月あまり。
あまり問題もなさそうです。

ただAさんのことですが、とケアマネから申し送り。
性格も悪くないし、入院生活も問題なく送れると思いますが、軽い認知症と本来のキャラクターで、自分のことを清水の次郎長と思いこんでいて、名前を呼ぶ時も次郎長と呼ばないと返事してくれません、と。
いろんな人がいるものです。
一応大事な情報なので事務と看護師に申し送りをしておきました。

そして入院当日、やってきた次郎長さんは年相応の普通のおじいさん。
受付ではもちろん本名でやり取りをしています。
別に次郎長さんと呼ばなくても返事しています。

病棟に上がる前に私も本名で呼びかけてみました。
すると普通に返事してくれます。
やっぱり病院と自宅は違うようです。

入院中に入居する有料老人ホームを決め、引っ越しをするために生活保護課に確認しながら進めました。業者に連絡し一度自宅を見てもらうことに。
最低限度のものだけ持っていき、残りは処分してもらいます。
Aさんを連れていくと近所の人がぞろぞろ集まってきました。
みんな口々に、次郎長さん元気だった、次郎長さんもう退院するの、次郎長さん・・・、とすっかり人気者です。
ここではやっぱり次郎長さん。
ここを引っ越すことになったことを伝えると、みんな本当に残念そう。
この自転車使ってくれたらいいよ、あと家の中のもので欲しいのあったら持っていって、長いことお世話になったし、次のところへはあんまり持っていけないみたいだし、と義理堅い次郎長さん。

必要なモノだけ目印を付けてまとめて、後は処分。
見積もりは業者から生活保護課の担当者に送ってもらうことにしました。
不要なモノはご近所さんに配りながらお別れのあいさつ。

ご近所の人気者だったのに残念です。

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