見出し画像

脱退手当金(18人目のAさん)

Aさんは61歳の女性。
事情があり知人とアパートで一緒に暮らしていました。
スーパーのパートで生計を立てていたのですが、脳梗塞発症。
救急病院で治療の後、リハビリ目的で当院転院。
転院時は左マヒで車いす介助の状態でした。
もともとパート収入のみで蓄えもあまりなく、入院費で貯金がほとんどなくなったので生活保護を申請しました。
老齢年金について60歳になる前に資格確認にいったのですが、資格なしといわれていました。
借りていたアパートは知人名義で、Aさんは同居人、居候ということになります。
生活保護申請上は住所がないという扱い。
生活保護は申請から約1ヶ月で決定しました。
これでAさんも一安心。
しかしその時保護課の担当者からこう言われました。
Aさんは約7万円の脱退手当金がもらえます。手続きにいってください、と。

脱退手当金。
年金の勉強をした時に、さらっと読んだことがあります。
確か20年以上前にこの制度はなくなったはず・・・。
でも生活保護課が調べてもらえるというのだから、まずもらえるのでしょう。
一応調べてみました。
するとやっぱり脱退手当金は昭和60年の改正で廃止されています。
脱退手当金とは、一言でいえば厚生年金保険料の掛け捨て予防です。
もともと厚生年金は20年以上の加入期間が必要でした。
でも女性は結婚して退職するとそのまま専業主婦となることが多く、納めた年金保険料は掛け捨てとなってしまうことが多かったのです。
これを防ぐため、退職時に手当金として納めた保険料を返金していたのです。
但し経過措置として支給されることがありますが、昭和16年4月1日以前生まれで、被保険者期間が5年以上、60歳以上で老齢年金の資格がない等、対象者はあまりいません。
年金のテキストにも現在その存在意義は少ない、とまで書かれています。

でも、昭和16年4月以前生まれとありますが、Aさんは昭和25年生まれ。
この要件を満たしません。
ネットでいろいろ調べましたが、そもそも脱退手当金について余り詳しく書かれていないのです。

これは、と思いいつも相談する年金窓口の社労士先生にメール。
それによると、確かに基本的には昭和16年以前の生まれの人が対象ですが、女性の特例というのがあり、昭和53年までに資格喪失していて、被保険者期間が2年以上あれば生年月日にかかわらず支給されるということです。
そもそも脱退手当金自体特例的なものなのに、さらに特例があるなんて・・・。
しかしそれなら60歳前に年金相談に行った時、教えてくれていたら良かったのに。

当時の対応に不満を感じつつ、年金は奥が深いものだとまた改めて勉強させていただきました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?