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【詩】笑う老木

公園のベンチに腰掛けて
無邪気にはしゃぐ子供たちに
目を細める
これから伸び行く新芽と
十分に伸びきらなかった
ひしゃげた灌木
自分はもう終わったのだと
日陰に枯れようとするのを横目に
大空を覆うほどの樹冠をゆさゆさ揺らし
老木はおおらかに笑う
お前はまだ何も知らない
外国の異文化に触れる衝撃
極限まで味覚を研ぎ澄ましたシェフの一品
宇宙のばかげた壮大さ
地を這う蟻の疲れを知らぬ足さばき
戦争における命のあっけなさ
人類の本能に刻まれた残虐な喜び
愛を失う痛み
見ず知らずの兄弟たちへの慈しみ
成長していく高揚
体の自由が利かなくなる悲しみ
何も物言わず
どこへも行かず
ただ息をして
終わりへと育っていく
たったそれだけでも
誰かの役に立っている
うぬぼれることなかれ
自分で何かを成そうとすることほど
生を侮辱することはないのだ
と                                      

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