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【物流】静脈物流とは?知られざる隠れた物流網


■静脈物流とは

皆さん、静脈物流を知っていますか?
 静脈物流を知るあたっては、まず逆の意味である動脈物流を知ることが近道になります。
 動脈物流とは製品が製造側から消費者側まで流れる物流をいいます。    
 例としては冷蔵庫の製造から消費者が家で受け取るまでの流れです。
 簡単に追っていくと以下のようになります。

①原料を部品製造工場に輸送
②製造された部品を組み立て工場に輸送
③完成した冷蔵庫を小売店の倉庫に輸送
④倉庫から購入した消費者の家に輸送

 今回、本記事で触れる静脈物流は主に動脈物流とは逆の動きをする使用済みの製品の回収など廃棄に関する物流などフォーカスします。 
 静脈物流は廃棄物のほか消費者にとっての不用品、副産物などの再利用、再販、再資源化等に関する物流全般が含まれます。

■静脈物流の重要性

 高度成長期やバブル期のように物を増やすことで生活を豊かにしていた時代もありますが、現代では生活に必要な物品を当たり前にすでに手にしているケースがほとんどであり、物を購入したり、製造したりした場合、消費財でない限りは以前からある物の処分を必ず検討することになります。
静脈物流と聞くと廃棄処分を思い浮かべますが廃棄物流も含めて静脈物流は主に3類型に大別できます。

静脈物流3類型 

■物流企業にとっての静脈物流とは

 物流企業はトラックで物を運んでいるときに運賃として収入が発生しています。逆にいえば荷物を運んでいないときには収益を生み出しませんのでいかに常に荷台を埋めて空車状態を短くしておくかで利益が左右されるといっても過言ではありません。
 特に維持費が高く運行距離の長い大型のトラックほど空車の状態が長くなると加速度的に低収益化します。長距離の大型トラックが配送先で荷降ろしした後、とんぼ返りせず、帰りに多少他県へ足を運んでまでも帰り荷を積みに行くのは空車状態を避けている顕著な例です。
 空車状態を避ける(常に運賃を発生させる)という意味では必ずしも動脈物流である必要はなく今回取り上げている静脈物流でも良いことになります。
 例えば消費者が冷蔵庫を買った場合に配送した物流企業が配送先の家にあった古い冷蔵庫を家電リサイクル品として回収することが出来れば1件で新品冷蔵庫の配送費用と共に家電リサイクル品の収集運搬料やその手数料を得ることが出来ます。
 家電リサイクル品は一例ですが物流企業が関与できる可能性のある静脈物流について次のセクションからは法的な位置づけと共に解説します。

■物流企業に関連する静脈物流

物流企業に関連性の深い静脈物流について法的な位置づけと共に解説していきます。


下取り行為

<定義>
新しい製品を販売する際に商慣習として同種の製品で使用済みのものを無償で引き取り、収集運搬すること

<解説>
廃棄物を収集運搬する場合、一般廃棄物又は産業廃棄物収集運搬業の許可が必要であるが新品配送時に古い商品を引き取りことは商習慣とされいるため事業者自身が行うのであれば許可は不要である。事業者の定義はされていないものの販売業者が適正処分の義務を負っている以上、事業者にあたるものと考えられる。また、配送業者は販売業者から配送の委託を受けていることから販売事業者と一体として見られているものと思われる。

<参照情報>
「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」(令和2年3月30日環循規発第2003301号)
https://www.env.go.jp/content/900479532.pdf

「規制改革推進のための3か年計画」(平成21年3月31日閣議決定)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2009/0331/

家電リサイクル

<定義>
特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)に基づいて特定の4品目を回収すること

<解説>
一般家庭や事務所から排出された
①エアコン
②テレビ(ブラウン管、液晶・プラズマ)
③冷蔵庫・冷凍庫
④洗濯機・衣類乾燥機
などの特定家庭用機器廃棄物から、有用な部品や材料をリサイクルし、廃棄物を減量するとともに、資源の有効利用を推進する。
一般家庭や事務所から排出された家電リサイクル品は指定引き渡し場所に持ち込み引き渡されたのち、最終的にはメーカーやメーカー指定のリサイクル工場に配送される。
尚、消費者自らが指定引き渡し場所に家電リサイクル品をもちこむ際には特別な許認可を要しないが事業者が収集運搬するには一般廃棄物又は産業廃棄物収集運搬業の許可が必要となる。(都道府県により品目に差異あり)

<参照情報>
家電4品目の「正しい処分」早分かり!(経済産業省特設ページ)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/kaden_recycle/fukyu_special/index.html

小型家電リサイクル

<定義>
「家電リサイクル法」の対象となる家電4品目を除く、28類型の品目の家電を回収すること。

<解説>
一般家庭や事務所から排出された28類型の品目(主に家庭用で電源を要す電化製品)を回収すること。
回収にあたっては廃棄物処理業の許可を要さず、主務大臣の認定を受けることで、広域的・効率的な回収が可能である。また、回収は家電販売者以外にも地方自治体などで回収ボックスを設けてリサイクルを推進している例もある。

<参照情報>
小型家電リサイクル法の概要について
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/haikibutsu_recycle/pdf/027_01_01.pdf

買い取り

<定義>
排出者が不用として売却した有価物について買い取ること。

<解説>
原則は特別な許認可は不要だが、反復継続的に業として売買や交換を行う場合は古物営業法に基づく古物商をして営業許可を都道府県公安委員会から取得する必要がある。配送料を下回る買い取り価格であったり、廃棄を前提とした不要物の無償譲渡契約などの場合は廃棄物処分業の許可が必要となるので注意が必要である。

<参照情報>
古物商(警視庁)(https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/kobutsu/tetsuzuki/kyoka.html

廃棄物の定義など
環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長「行政処分の指針について(通知)」(令和3年4月14日・環循規発第2104141号

【事例】逆有償の例(有償で売却しても輸送料の方が高額だと不要物とみる) 再生製品として販売したが、売買金額をはるかに上回る金額の「運搬費、用途開発費、改質加工費」を販売先の業者らに支払っていた(例:売買代金100円、運搬費等800円)ことから、同製品が「廃棄物」と判断された。

返品・リコール・修理・交換

<定義>
消費者の錯誤や意図しない不具合などにより消費者から販売者等に商品を返送すること。

<解説>
サービスを設けることで、消費者の不安を払拭するとともに、購入のハードルを下げ、販売促進につなげることが期待できる。特別な許認可を要しないことも多いですが商品の性質により個別具体的に検討しましょう。
筆者も全国規模でリコールの蓄電池を回収する(リコールの場合、廃棄前提なので不要物として扱う)スキームを検討する際に産業廃棄物処分業の許可を都道府県ごとに取ることが現実的ではなかったため、環境大臣から特定の回収業務について全国で実施可能な大臣認定を取得したことがあります。

廃棄物としての処分

<定義>
リサイクルや買い取りなど商品の資源を循環できない場合の処分方法。
焼却、破砕、溶解など減量、減容化され最終処分される。

<解説>
不要物を処分すること。排出される品目、事業性の有無により一般廃棄物または産業廃棄物廃棄物処分業の許可が必要となる。
外形上、有価物の場合でも配送料を下回る買い取り価格であったり、廃棄を前提とした不要物の無償譲渡契約などの場合は廃棄物処分業の許可が必要となるので注意が必要である。
一般に許可権者は以下の通り。
産業廃棄物処分業は都道府県
一般廃棄物処分業は市区町村
(組合化して複数自治体で運営している場合や事実上新規許可を出していない自治体もあり)

<参照状況>
環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長「行政処分の指針について(通知)」(令和3年4月14日・環循規発第2104141号)

専ら再生利用の目的となる廃棄物の回収

<定義>
もっぱら再生利用の目的となる産業廃棄物(専ら物)、すなわち、古紙、くず鉄(古銅等を含む。)、あきびん類、古繊維の回収すること。

<解説>
過去からの慣例で再利用が予定されている専ら物の回収には一般廃棄物又は産業廃棄物処分業の許可が不要である。

<参照情報>
「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」(令和2年3月30日環循規発第2003301号)


■まとめ

 いかがでしたか?静脈物流では現代社会では必要不可欠なもので多種多様な回収方法や関連法規があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
 回収方法については許認可を要するものをありますが配送先で組み合わせ可能な静脈物流がないかぜひ確認してみましょう。

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