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久米島日記2-2

船は久米島へと順調に進んでいる。

しかし、海は荒れ気味だ。船は左右に大きく揺れ、気持ちの悪さも収まる気配は一切ない。僕は横になったまま目をつむり、出来るだけ船酔いがひどくならないよう心掛けた。体の向きを変えてみたり、船の揺れに体を合わせてみたりもした。これまでの人生で船酔いをしたことがなかったため酔い止めの薬を飲もうとは全く思わなかったが、そのことを今では少し後悔した。変な自信は持たず、何事もある程度の備えをしておくことは必要である。船からは慶良間諸島の島々が見て取れた。

知らない間に眠ってしまっていたのだろうか。ふと目を覚ますと、船はだいぶ久米島へ近づいているようだ。

気持ち悪さはかなり収まった。目を覚ます目的も兼ねて再び甲板へ出てみる。船の上からは久米島周辺の美しい海が広がっていた。沖縄らしい海だ。久米島の海を見つめ、いよいよ沖縄に来たのだ、久米島に来たのだという実感が伴った。


いよいよ久米島が目の前に迫って来た。


僕が乗った船もスピードを緩め始めている。同時に久米島の島影が段々と大きくなって来る。久米島上陸まで、あとわずかだ。

沖縄の海は、本当に綺麗だ。心が洗われる気持ちになるし、地球の美しさ、ひいては人生の素晴らしさまでも感じさせてくれるような気がする。この海の美しさに惹かれ、多くの人が沖縄を訪れる。

船がいよいよ久米島に着こうとしている。那覇からのフェリーが着く港は、兼城(かねぐすく)港だ。沖縄らしい地名や読み方である。”かねしろ"でもなく、“けんじょう”でもなく、かね"ぐすく"。沖縄の言葉が残った読み方であり、沖縄各地域で「城」という字は”ぐすく"と読む。僕も最初は読み方が分からなかった。その兼城港が、もう目の前に迫っている。僕は甲板の上から港や海や島の様子をじっと眺めている。


船が港のすぐそばまで寄り、いよいよ着岸だ。港ではお迎えに来た人や業者の方が船の着岸を今か今かと待っている。僕は着岸する瞬間を見るため、岸側の甲板からじっと船の側面を見ている。船に乗る時は、いつもこの瞬間を見るのが楽しみのひとつだ。船を港に係留させるためのロープが港に向かって投げ出される。船に乗っている船員の方も、港側で待ち構えている作業員の方も、まさに海の男といった感じである。

そしてついに、僕が乗ったフェリーは久米島兼城港へ着岸した。

魅力的な着岸のシーンを見届け、僕は船の乗降口へと足を進める。那覇からの3時間半の船旅も、まもなく終わりを迎えようとしている。そして、タラップを進んだ僕の右足は、ついに久米島の地を踏み締めた。

4ヶ月に及ぶ、久米島生活のはじまりだ。



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