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ジャカルタ~バンドン間を走る高速鉄道建設プロジェクト

インドネシアのジャカルタ~バンドン間を走る高速鉄道建設についてご存知だろうか?その顛末は?
 


1.本プロジェクトの受注競争

以前、ブログに次のようなことを書いた覚えがある。
「この建設プロジェクトは、日本案か中国案かで関心を集めていたプロジェクトであったが、結局、2015年10月、インドネシアと中国の企業連合が合弁会社を設立することで中国側が受注した。
 
その背景には、中国側から、「インドネシア政府の財政負担や債務保証を伴わずに、事業を実施できる」との新たな提案があったようだ。また、インドネシアが、高速鉄道に代わり時速200~250キロ程度の「中速鉄道」導入の検討を始めた事も、中国に傾いた理由のようである。
 
インドネシア政府の中にも、中国の鉄道の安全性に懸念を持つ人もいたようだが、政府の負担が少ないとされる中国案に決まった。
 
中国にとって、高速鉄道システムを海外輸出するのは初めてのことである。2016年1月着工、2019年前半の開業を目指すというが、インドネシアの財政負担をなくし、債務保証を求めないとの中国側が提示した契約条件が本当に守られるものか疑問である。
 
因みに、インドネシアの企業連合幹部によると、事業費は約55億ドル(約6,550億円)だということであり、合弁会社の出資比率はインドネシア企業連合が6割、中国の「中国鉄道総公司」などがつくる企業連合が4割となっているようだ。
 
調印式で、インドネシア側の代表は「国家予算を必要としない、インフラ開発における新しいビジネスモデルになるだろう」と述べたというが、ジャカルタとバンドン間は、平坦な道ばかりではなく山なども多い。今では高速も走っているが、昔は、普通道を長い時間かけて走ったものだ。それを3~4年程度で事故もなく開通しようというのである。正直、心配なところは多い。
  
さて、この事業は、どうなったのであろうか?当初から、土地買収ができていないなど、多くの課題が指摘されていた。

ここから、以下のURLの引用です。
https://www.theepochtimes.com/indonesia-to-seek-chinas-help-to-finance-blown-out-belt-and-road-high-speed-rail-project_4424617.html
 

2.高速鉄道プロジェクトの追加コスト

 インドネシアは、北京の一帯一路構想のインフラ計画の一部であるジャカルタ~バンドン高速鉄道プロジェクトについて、「コスト超過分の20億ドルをカバーするために、中国にさらなる融資を求める」と、地元メディアは伝えた。
 
ジャカルタとバンドンを結ぶ88マイル(142キロメートル)の鉄道プロジェクトは、2015年に中国とインドネシアの国営企業のコンソーシアム、すなわち PT Kereta Cepat Indonesia China(KCIC)が受注した時点で、約45億7000万ドルと予測されていた。
 
しかし、その後、原材料価格の高騰やその他の予期せぬコストにより、コストは約79億ドルにまで膨れ上がった
 
インドネシアの通信社Tempoによると、PT KCICの社長取締役である Dwiyana Slamet Riyadi氏 は、4月21日、「コンソーシアム株主には、コスト噴出をカバーする「義務」があり、資金確保を支援する追加当事者が必要になる可能性がある」と述べた。
 
「PSBIとBeijing Yawan HSRが、追加支出の資金調達することが困難な場合、両者は資金調達機関に助けを求めることができる」と取締役は語った。
 
インドネシア政府は、数回の会合で最初の合意と同じく、「中国開発銀行(CBD)が75%、コンソーシアムが25%をカバーする融資構造を使うこと」を提案してきた。

3.首都移転のニュースの影響

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、2024年に首都をジャカルタから東カリマンタンに移すと発表した。

このニュースは、プロジェクトの投資回収という点で、マイナスの効果を与えている。2月、前述のDwiyana Slamet Riyadi氏は、鉄道の収支が均衡するまでに20年ではなく40年かかると試算し、チケットの価格は15万ルピア(10ドル)から35万ルピア(24ドル)で、多くのインドネシア人にとって手の届かない価格であることを明らかにした。

 また、ジャカルタから首都が移動することにより、鉄道の乗客需要見込みは1日あたり 61,157人からわずか 31,215人にまで落ち込むと述べた。「投資額、乗客数、チケット価格などを見ると、20年以内に投資回収が見込めるという、以前のフィージビリティ・スタディに従うのは非常に難しい」と述べた。 

このプロジェクトは、当初から、土地の所有権争いや経済的・環境的影響への疑問をめぐり 3年近く遅れて、2018年になってやっと始動した。また、COVID-19のパンデミックの初期には、規制により中国人労働者と管理者の移動に影響が出たため、建設が中断されていた。 

KCICによると、2021年末時点で、工事の進捗率は 80%に達しており、2023年6月の完成を目標としているということである。 KCICは、インドネシアの国営企業4社(KAI、Wijaya Karya、PTPN VII、Jasa Marga)からなるインドネシアのコンソーシアムが 60%、北京亜湾高速鉄道が率いる中国の鉄道企業コンソーシアムが残りの 40%を所有している。

4.所感

かって、仕事で、インドネシアには何度か出張していた。その時に、この高速鉄道建設の話を知り気になっていた。日中が凌ぎを削っていたプロジェクトであり、日本側は精緻な調査や計算などを行い、日本が受注するものだと思っていた。豈図らんや、中国が受注したと聞いて驚いた。政治的な裏工作などがあったのであろう。日本の調査したデータもインドネシア政府が持っているのであろうし、泣きっ面に蜂とは、この事か!?

受注後も、土地買収ができていないなど多くの疑問が出され、プロジェクトの進展が危ぶまれていた。インドネシア側も、中国からいま一度日本に乗り換えようという話も出ていたように聞いている。いい加減なものだ。

当初は、2016年1月着工、2019年前半の開業を目指すといっていたが、今回のニュースによれば、5年くらい遅れて2023年完成という事のようだ。だが、それも確約されているとはいえない。


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