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立花隆さんが居ない問題

ボクが読書をするようになったきっかけは間違いなく「立花隆」と言う方の著作に出会ったからである。

彼は「作家」ではなく、いわゆる「ジャーナリスト」と呼ばれる範疇の方であり、その著作のほとんどは「ノンフィクション」「評論」であり、その取り扱う分野の広いことと言ったら他に類を見ない。
昭和の政治腐敗を徹底的に調べ上げた田中角栄氏に関連する一連の著作や、共産党に関する著作は有名だし、その他にも 脳死・臨死の話、分子生物学的な話、宇宙の話、環境問題、デジタル社会の話などなど、到底同一人物が扱っているとは思えないほどの広い分野をカバーし、それぞれについてとてつもない量の情報を収集したうえに、自身の知見を展開しながらその全容を読者に提供してくれる。
彼が「知の巨人」と呼ばれていたのも合点のいく話である。

何か新しい分野のことを調べたければ、氏の著作をとりあえず一冊読めば、その分野の概要はだいたい解った気になる。
事実、ボクが今の会社に転職した直後に「環境ホルモン問題」が世を騒がせ、ボク自身もそ環境ホルモン物質のモニタリング方法の検討を当時の会社で担当していたこともあり、「環境ホルモン問題」の全容を手っ取り早く知りたかった時に、立花隆さんの「環境ホルモン入門」と言う著作にたいそう助けられたのを覚えている。

なので、その環境ホルモン問題の時もそうだし、インターネットが爆発的に普及した時もそうだし、再生医学が盛り上がった時もそうだし、「脳死状態からの臓器移植」問題が騒がれた時もそうだし、とにかく知識を手っ取り早く仕入れたい時には彼の著作に大変お世話になって来た。

ここ 10年ぐらいは仕事が忙しく、色々な分野の知識を蓄えるという余裕がなかったので、立花隆さんに限らず本をゆっくりと読んでいる時間がなかった。

ところが最近「生成系AI」が世を騒がせはじめ、「生成系AI」について手っ取り早く理解したいなと思い、何冊か本を斜め読みしてみたものの、いずれも「帯に短し、たすきに長し」で「概ね知っていることばかりが書かれている本」であったり、「あまりに専門過ぎて半分も理解できない本」であったり、なんとなく「腹落ちする本」が見当たらない。

で、「ふと」思い出したのが立花隆さんのことだった。
氏がご存命なら、生成系AIに関する様々な角度からの知見を1冊の本にまとめてくれていたんだろうなぁ~と、つくづく惜しい方を失ったものだと思ってしまった。

ふと思い立って「Chat GPT」相手に「立花隆さん」に関して色々と議論してみたが、Chat GPT が持っている「立花隆さん」に関する情報はかなり偏っている上に、2021年に氏が他界したという情報も持っていなかったようである。

「生成系AI」が、入力されたあらゆる情報をもとに新たな情報を作り上げるということなのであれば、立花隆さんの著作活動が正にそれだったと言えるのかもしれない。 

そういう意味では Chat GPT にとっては「立花隆さん」はある種の「ライバル」なのかもしれないので、そのライバルに関する情報収集はあえて避けてきたのかなぁ・・・などと考えてしまう今日この頃なのです。

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