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初級地域公共政策士の資格(その4:PBL②)



前回は、PBLとはなにか?という紹介や、僕が取り組んだPBLテーマの紹介(「防災運動会で地域おこしー地域コミュニティ主体の社会課題解決を目指すー」)をしました。
今回は、課題へのアプローチ方法や、なぜ防災運動会が地域課題解決につながるのか、という部分を書きたいと思います。
前回の記事はこちら↓

◇ 課題の見つけ方(アプローチ)

PBLは課題解決型演習と和訳されるように、まず解決する(解消する)課題を見つける必要があります。課題と言っても、個人レベルで日々感じる小さな課題から、新聞で取り上げられるような社会課題、国や自治体の制度上の課題など様々です。その中で課題を見つけるためのヒントとしては、自分の住むまち(PBL対象地域)の課題や展望、目標に対する達成指標などが書かれている「自治体の総合計画」を読んでみることがおすすめです。(「〇〇市総合計画」と検索すると、すぐに出てきます。)

僕の場合、当時特に興味があった分野が防災でした。前記事で書きましたが、僕は防災士の資格を持っています。防災士になるためには防災士養成講座を受講するのですが、そのときの講義で「沖縄の自主防災組織世帯カバー率(以下、組織率)が全国で最も低い」ということを知りました。具体的に数字を見てみましょう。
※自主防災組織:「自分たちの地域は自分たちで守る」という意識のもと、自主的に結成する防災組織。学校区単位、自治会単位、共同住宅単位など体系は様々。

この記事のように、当時全国の組織率が80%を越えているのに対して、沖縄は30%弱。そして僕の働く町の組織率を計算してみると5%未満(4.9%)でした。そんな中、隣町が組織率100%を達成しているという記事もあり、「この差はなんだ…」と衝撃を受け、沖縄(特に自分の町)の課題とも言えそうな自主防災組織率低すぎ問題を解消するテーマをPBLで扱うことにしました。

ちなみに現在、沖縄の自主防災組織率は40%程度まで上がっているようです。

◇ 「防災」×「スポーツ」=防災運動会

結論から言うと、防災とスポーツを掛け合わせたイベント「防災運動会」を企画し、既存の団体のイベントで実施してもらおう!と考えました。自主防災組織は「設立しようよ!」と言っても「はいそうですか」で立ち上がるようなものではないため、その必要性を考えてもらい「あった方がいいかもな」と思ってもらうきっかけをつくることから始めたいと思いました。その前段階として、まずは防災を考える機会をつくるための地域イベントとして実施するのが防災運動会です。

当初参考にしたのは下記のリンクですが、広く調べてみると十数年前から防災運動会を行っている自治会や、事業として実施している自治体もありました。サイト内の動画を観ているだけで、これを地元でできたら面白いだろうなとワクワクしました。

しかし、運動会というのは人を集めることができるそれなりの規模の団体がいることが条件で、個人の呼びかけレベルでできるイベントではありません。そこで、既存の地域団体や組織に企画を提案して賛同してもらい、実施してもらうという方法をとりました。

ただ、当時はコロナ禍ということもあってイベント自粛が続いていた時期でした。事あるごとに自治会や町内にある団体に「防災運動会をやってみませんか?」と営業をしました。営業をはじめて半年以上かかりましたが、縁あって町の各種団体(社会教育関連)が集まる意見交換会でプレゼンする機会をいただき、4年ぶりに開催されるというイベント(老人大運動会)のプログラムに防災運動会の種目を導入するに至りました。あくまで僕は伴走に徹し、役員のみなさんのアイディアのもと一緒に企画を練り上げてカスタマイズする方法をとりました。

◇ 初級地域公共政策士として見る防災運動会

この防災運動会、テーマとしては単純ですが横断的なものになっています。
防災:防災を考える意識の醸成
健康:軽スポーツを通して体力づくり
人のつながり:相対的に魅力が低下した地域コミュニティの再興

考えると他にも結び付けられそうなキーワードは出てくるのですが、すべて社会教育的な側面に包含されると考えています。
社会教育の課題の1つとして防災教育が少ないことが指摘されています。今回、社会教育関係団体へプレゼンした際には、学校教育で終わりがちな防災教育を社会教育の一環として実践したいということを強調しました。

参考:広島県教育委員会HP「生涯学習・社会教育とは」より

社会教育は、学校や家庭から飛び出し、地域に飛び込むことで得られる学びです。その飛び込みを後押しするのがここでいう防災運動会です。防災を運動会の中に組み入れて参加ハードルを低くし、気付いたら地域のみんなと一緒に防災について学んでいるという仕掛けをつくるわけです。

参加者側だけでなく主催者側(地域の要人)の方にもメリットがあります。運動会種目を一から考え、加えて防災に絡めたアイディアを出し合うので、それだけで防災意識が高まります。また、これまでマンネリ化していたイベントに一石が投じられ、何か新しいことが始まるというクリエイティブな感覚には年齢問わずワクワクするのです。
僕もアイディア出しをお手伝いするので、地域の方とひざを突き合わせて対話ができる時間を確保できます。なにより地域のみなさんの「やってみよう!」から始まる新しいイベントに、僕の「やってみたい!」を掛け合わせるので、互いにやらされ感が生まれないというのも良かったなと思います。

◇ 次回予告

いよいよ次回、初級地域公共政策士関連記事の最終回です!

資格取得のための活動の区切りを「防災運動会実施まで」としたかった僕は、ここまでの経過を最終プレゼンとして担当講師へ発表し、無事に合格をいただき「初級地域公共政策士」という肩書きをいただくことになります。
次回の記事では「資格取得後の展開」を書き、このシリーズを終了したいと思います。

ここまで読んでくださりありがとうございました!