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【カナダ】ニュースの屑籠 番外編  次期カナダ連邦総督は「仏語ができない」ことに仏語圏が反発

久々に「ニュースの屑籠 番外編」を書きたくなりました。屑籠クラスのニュースではなく、全国規模で、トップニュース扱いのものなのですが、いかにもカナダ的な話なので紹介させていただきます。

7月6日にカナダ連邦政府のジャスティン・トルドー首相が、次期連邦総督にカナダ先住民、イヌク(Inuk)の指導者、マリー・サイモン女史を選んだと発表しました。この連邦総督というのは、英国女王のカナダ名代という感じで、国の象徴、名誉職的な存在です。実質的な権力、権威、政治力などはありません。カナダの先住民の中から連邦総督が選ばれたのは、サイモン女史が初めてです。

2017年から第29代連邦総督に就任していた、元宇宙飛行士のジュリー・ペイエット女史が、今年1月、首都オタワにある連邦総督府のオフィス内でのパワハラ問題が明るみに出て辞任に追い込まれ、今まで正式な連邦総督不在の状態が続いていました。

トルドー首相は再び女性連邦総督を任命したのですが、ケベック州内などを中心に昨今になって、マリー・サイモン女史の連邦総督就任に疑問を投げかける声が増え続けているというのです。

その主な理由は、英仏2言語主義を国是とするカナダの連邦総督たる人物が「フランス語を話すことができない」という点にあります。サイモン女史は英語と、ネーティブの言語であるイヌクティタットの2言語を自由に操ることができますが、仏語を勉強する機会がなかったというのです。

彼女はイヌクの指導者として長年、活躍し、特にケベック州政府と州内の大規模水力発電開発プロジェクトを交渉する中で、ケベック州北部の先住民クリー及びイヌクの伝統的なライフスタイルを保護、継承させるという合意に達するなどの功績をあげました。さらに、20年間、カナダ政府外務省に勤務し、デンマーク大使を務めた経験もありました。

国内の仏語圏から「なぜ仏語ができないのか」という声に対し、サイモン女史は「自分は、子供の時、英語とネーティブの言語を使う学校で勉強をしたので、仏語は習わなかった。でも、今からでも仏語の勉強をするつもりだ」と語っています。

それに対してケベック州内の有力仏語紙、ラ・プレスのコラムニスト、パトリック・レガセ氏は、「確かにサイモン女史は英語の学校教育を受けてきた。でも、学校を出てから連邦総督になるまでの何十年もの間、仏語を勉強することがそれほど有益なことではないと思ってきた人が、73歳になって仏語を勉強すると言ったら、私はそれを称賛してよいものだろうか」と皮肉たっぷりのコメントを書いています。

このCBC(カナダ国営放送)のニュース原文はもっと長いものですが、かいつまんでいちばん話題になっているところをお伝えしました。以下のURLには、記事原文、サイモン女史の写真などが掲載されています。

https://www.cbc.ca/news/canada/montreal/mary-simon-governor-general-french-1.6101190

(追伸)私自身、かつて4年ほどケベック州モントリオール市に住んでいたことがあります。私が働いていたところは、連邦政府管轄のところで、基本的に職員は「バイリンガル」という条件があり、普通は英仏2言語なのですが、「君の場合は日英両語でバイリンガルだ」と言われました。ま、冗談半分なんですが、国際短波放送という特殊な環境なので、それで通りました。

でも、モントリオールに住んでいて仏語ができないと、ほんとにフツゴ―なことが起きます。地下鉄の車内PA、構内PA すべて仏語オンリーです。何言ってるんだかさっぱり分かりません。一生懸命、聞き耳を立てて、意味の分かりそうな(英語の発音に近いような)言葉をキャッチして、大まかな意味を想像するしかありませんでした。

勤務先でランチタイムの仏語コースに行かせてくれましたが、ヒジョーに難しかったです。確か1タームぐらいで断念しました。上記のサイモン女史が73歳から仏語の勉強をするというのが大変なことだというのが、よく分かります。

好き勝手にやっていますので、金銭的、経済的サポートは辞退させていただきます。ただ、スキ、コメントは大歓迎させていただきますので、よろしかったらお願いいたします。望外の喜びです!