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スポーツ界でキャリアを切り拓くには?

 ゼミ受け持ちの3年生の個別面談のために今後の展望を中心にして簡単な調査をした。自由記述「キャリアや業界について知りたいこと」の中に

「スポーツのチームに(アスレティック)トレーナーとして関わりたいが、どう道を切り拓いていいかわからない」

というコメントが一定数あった…。そりゃそうだ、大学の就職課に普通にそのような仕事の求人募集の案内など来るはずがない、だけど、多くの学生たちは、そのような現実をこれまでどこからも教わっていないみたいだ。

 前任校では前のめりな学生が学外の(中にはワケわからない)セミナーなどで、その現実を知り(僕らからみたら)とても適切とは言えない方法も用いてなんとかそういった派手な仕事に就こうと1年・2年の時から藻掻き始めて、早ければ3年には「どうせそんなの夢みたいな話なんだって…」と達観(したふりを)する学生まで現れるまでがデフォルトだが、今の勤務先はなんというか、そういういかがわしい学外セミナーの洗礼を受けることがなかった(ちょっと東京から距離もあるし)おかげで(良い意味で)例えばJリーグのトレーナー職でも就職課に求人が出ると学生が思うほどの純朴さがある(いいんだよ、今はそれで)。

 ただ、その辺の話を1年の前期あたりでちゃんと話しておけば、みんなもう少し勉学に力が入ったかもしれない、と思うともう少し早く業界について話しておけばよかったと思わなくもないんだけど、まあ僕も1年・2年を対象にした講義を受け持っているんだから、そこで少し時間を取ってあげることを心がければいいだけのこと、やればいいだけ。 

 前置きが長くなった…さて、そういった高い競技レベルでの専任(アスレティック)トレーナー職だけど、ちょっと他の仕事に置き換えて考えてみてほしいんだ、例えば、今はもう日本ではマイナーな競技でかつ参加するにあたり莫大な費用がかかるオートバイレースだけど、その世界最高峰のmotoGP、そこにホンダは3チーム、4人のライダーにマシンを供給している。その4人を走らせるにあたり、ホンダは全世界にむけ年間1500万台の2輪車を生産・販売(2020年)している。

2024年ホンダワークスチーム

年間販売台数1500万台のうち、何台が競技車(者)になると思う?下のカテゴリーまで合わせたところで全世界で200台行けばいいほうなんじゃないかな。 ヤマハ・スズキ・カワサキはホンダの半分くらいの規模だから、そこに300台+しても、日本のメーカーが関わっている実働競技車両はせいぜい世界500台…

 その500台の競技車両をメンテナンスできる整備士ってどういう人なのか、ってことだよね、そう、時速300キロの世界で命を懸けて走る選手が、その命を預ける存在、ってこと。

 うわぁ、「Best of the Best」の職人たちが世界最高峰の競技レベルにいる!オレは無理だぁ、と思うって?

 ところで、競技車両にならなかったホンダの1499万9800台は、売りっぱなしで大丈夫なの?やはりこちらも定期的な整備が必要なんだよね。そう思うなら勝手に諦めていけばいいけど、競技車両にならなかった方のクルマを整備する経験で、仕事としてお金もらえるんだよ(こちらの方がより多く稼げたりする)、メカニックってのはさ。そうしてお得意様の新聞配達のカブや君の通学で使っている原付の整備を経験していくうちに、スキルが認められて、いつか世界最高峰を走るマシンを触るようになれる、そういう道ができているんだよね。

世界に誇るホンダ・スーパーカブ

 逆にいうと、新聞配達のおっちゃんのカブや君の原付の整備がちゃんとできない人に時速300キロ以上で走らせているライダーたちが命を預けることができると思う?motoGPのライダーも、新聞配達のおっちゃんも、君も、稼ぐ額は違うかもしれないけど、命の重さは同じなんだからさ…。

 
 
 僕の趣味の世界で例えたから、話が大きく逸れたように思うかもしれないけど、治療家とか(アスレティック)トレーナーの世界も同じなんだよね、道はあるんだ、けど、ゴールが遠すぎて、霞んで見えないだけ。

 ときどき「なんでこんな奴(悪い意味で)がこの(競技)レベルにいるんだ?」と疑問に思うような人がいたりするけど、自分を高めていけば、いつかそんな人は気にならなくなるよ。僕も、フロリダ時代はそう思われてたんだと思う「なんでアイツが?」と…

3週間のインターンの経験だけで、大舞台に上がってしまいさぁ大変…

まあ、柔道整復師にしろ、鍼灸師にしろ、理学療法士にしろ、スポ協ATにしろNATA-ATCにしろ、資格取った時点では「今まで以上に悪くはなりません」ってだけの話であって「怪我を治せる・防げる」保証ではないんだよね。 それがちゃんとわかっていれば、焦らず慌てずにこの世界でキャリアを築いていけると思うよ、少なくとも僕はそうしてきたつもり、参考になれば幸いです。


このnoteをご覧くださりありがとうございます。サポートいただけた際には子供たちが安心してスポーツに打ち込める環境づくりに使わせていただく所存です。よろしくお願いいたします。