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セイバーメトリクスと行動経済学

マネーボール

「マネーボール」と言う映画を、
ご存知の方も多いと思います。

マネーボール

2011年に米国で公開された映画で、
ブラッドピッドが主演し話題になりましたので、
私も映画館で見させて頂きました。
事実を基に作られた映画で、
マイケル・ルイス氏が書籍化したのですが、
メジャーリーグ(MLB)球団の
「オークランド・アスレチックス」が舞台。
ゼネラルマネージャーのビリー・ビーン氏が、
「セイバーメトリクス」と呼ばれる、
独特な統計学的手法を用いて、
MLB随一の貧乏球団を、
プレーオフ常連の強豪チームに作り上げていくドラマです。
ベストセラーになりました。

MLBでさえ金銭ゲームだった

少しこの映画の内容を振り返りましょう。
マネーボールの紹介です。
2000年代初頭のMLBでは…
財力のない球団は、
勝利に貢献できる大物選手を抱える事は出来ない、
と言われていました。
財力のない球団オーナーは、
「もはや野球はスポーツではなく、
金銭ゲームになってしまった」
と嘆いていたそうです。
そんな中でも、
リーグ最低クラスの年俸総額でありながらも、
黄金時代を築いていたチームがあったのです。

データ野球の神髄

独自のデータ野球を取り入れ、
黄金時代を築いていたチーム…
それが映画「マネーボール」の舞台となっている、
ビリー・ビーンGM率いる、
「オークランド・アスレチックス」でした。
毎年のようにプレーオフ進出を続け、
2001年&2002年は2年連続でシーズン100勝を達成!
(100勝って結構凄い事です!)
その上で2002年には年俸総額1位の常連である、
「ニューヨーク・ヤンキース」
の1/3程度の年俸総額ながらも、
全30球団中【最高勝率&最多勝利数】
を記録しました。
「アスレチックスの強さ」の秘密、
その疑問の答えが徹底したデータ野球
「セイバーメトリクス」
から基づくチーム編成だったのです。

セイバーメトリクスとは?

肝心の【セイバーメトリクス指標】とは何?ですが、
当然ながら打者と投手に分かれます。
打者は(詳細は飛ばします)、
OPS「打席での貢献度」
wOBA「 打者の攻撃力」
Spd「 足の速さ」
IsoP「長打力」
IsoD「 四死球出塁の選球眼」
その他、リーグ平均打者と比べ、
どれだけ得点出来たか等々でも数値化され、
以上を基本としたグラフで構成されています。
投手は、
勝率「勝利した割合」
WHIP「1イニングあたりに何人の出塁を許したか」
K/BB「奪三振 と与四球の比率」
BB/9「与四球率(9イニングあたりの四球)」
K/9「奪三振率」
その他、一試合で打たれる本塁打数や、
投手の責任である被本塁打&与四死球数&奪三振数等々でも
数値化されていきます。

数値化の重要度

私も常に数値化をして来た人間ですので、
数値化=データ化の重要性は知っています。
今ではかなり浸透して来ましたが、
一昔前までは「勘」や「経験」に基づいて、
野球をやっていたのが日本です。
しかし!
何十年も前からデータ野球をやっていた日本人がいるのです。
それが今は亡き野村克也氏のID野球です!
その教えを学んだのが古田敦也氏なのです。
野村氏は常々「考えて野球をやれ!」
と言っていました。
私は当初からこの考え方に共感し、
ビジネスセミナーで語っていたのを思い出します。
今ではデータ野球と言う言葉は当たり前ですが…
最近になって認知度が広がって来ました。
そのきっかけが「マネーボール」なのだと思います。

日本式ID野球

日本式のID野球を広めたのは野村克也氏です。
そのノムさんから学んだ方々は数多くいらっしゃいます。
その中で元ヤクルト一軍打撃コーチの杉村繁氏は、
このように語っていらっしゃいます。
「僕らがノムさんから学んだID野球というのは、
【確率と根拠】の上に成り立っている。
つまり…
『この投手はカウント2-1からは100%カーブ!だからカーブを狙え』
投手それぞれにカウントによって、
『投球のクセ』がある。(以下省略)」
伝えたいことがお分かりになるかと思います。
【確率と根拠】なのです。
【この投手はカウント2-1からは100%カーブ!】
【だからカーブを狙え!】
まさにその通りです。
これは経済学と似ているかもしれませんね…
確率は可能性で根拠は事実です。

ID野球とセイバーメトリクス

今回データ野球の話をさせて頂きました。
日本のID野球と、
MLBのセイバーメトリクスは、
データ野球と言う観点では同じかもしれませんが、
内容を考えますと、
対個人の実戦を育成する主観的な観点と、
対チームの結果を左右する客観的な観点と言うくらい、
全く別物であります。
私はノムさんのID野球の考え方が大好きです。
とても理に適っていますし、
何より雑草魂を持っています。
その上で結果も出しています。
しかし!しかしです…

人間×スポーツは計り知れない感動を与える

データだけで野球が成り立つか?と言うと、
そうでないのは皆さんが知っているはずです。
想像して下さい…
舞台はこちらです!
一年のうちのクライマックス戦!
長い長いペナントレースを戦い抜き、
今夜勝利した方がリーグを制する世紀の第一戦!
両チーム総力戦で臨んだ戦いは、
緊迫の中で試合は進んでいきます。
場面は0-0の同点で迎えた9回裏ツーアウト満塁!
ツーストライクスリーボウルのフルカウント!

このシーンを想像してみましょう!
全国の野球ファンが固唾をのむ瞬間です。
このタイミング…
お互いが悔いを残したくないベストを尽くすシーンです。
プロとプロが相対する戦いです。
変化球ではなく直球一本勝負!
全力でぶつかります。
【データ野球】では測れない戦いなのです。
「人生はドラマ」で溢れています。
人間は感情で行動を左右されるからです。
次の一球で試合が決まりますが…
どんな結果であったとしても、
人々は世紀の一戦を永遠と語り継ぐのです。
様々な経済が動くと思いませんか?

セイバーメトリクスと行動経済学

ビリービーンGMが、
「セイバーメトリクス」を用いて独自に、
「勝利するために重要視すべき」
と定めた諸要素は、
従来の価値観では重要とされませんでした。
ホームランを数多く打つ選手が良いとせず、
「選球眼」を最も重要であると位置づけたのです。
いわゆる「ボールを見極めて四球を選ぶ能力」です。
これは「出塁率を上げるために必要な要素」であり、
投手により「多くの投球をさせる能力」です。
「粘る力」=「選球眼は天賦の才で決まる」としており、
「野球の成功(勝利)に最も直結する能力」
であると語っています。
勝敗は終わってみれば戦いですが、
勝敗の中にあるドラマに人は心惹かれるのです。
そして20年近く前はこれで通用しましたが、
今の時代はどのチームもセイバーメトリクスを取り入れています。
数年前にビリービーン氏が言っていたのですが、
今の時代は「トレード」と、
「再生プロジェクト」が重要だそうです。
セイバーメトリクスもID野球も、
少し裏側が分かれば…
人間の感情により深く触れる事が出来るのです。

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