屁こきのたくちゃんは、自分のことを屁こきだと思っていない。
 
カーテンのすき間から朝日が差し込む。
「さぁ、みんな準備はいいかな」
体操のおにいさんがテレビに登場。
たくちゃんがテレビの前でいっしょに体操すると、
プッ。
 
朝ごはんが終わり、
さ、幼稚園に出発。
ママの自転車のうしろにまたがった拍子にプッ。
 
たくちゃんは幼稚園でも元気がいい。
滑り台を逆さにおりながら、プッ。
鉄棒で逆上がりをしながら、プッ。
「トンネル掘るぞぉ」
スコップ片手に砂場にしゃがんで、プッ。
 
こんなに屁こきのたくちゃんも、給食の時間だけは屁こきじゃない。
いつだったか、晩ごはんのときに屁こきをしたら、ママがとても悲しい顔をしたからだ。
 
夕焼け小焼けのチャイムが鳴った。
ママが幼稚園にたくちゃんをお迎えにやってきた。
ママの自転車のうしろにまたがった拍子にプッ。
 
ママは、これからついでに買い物だ。たくちゃんもおつき合い。
ショッピングセンターで買い物中にママの横でプッ。
 
たくちゃんはソフトクリームが大好き。
店の表でソフトクリームをなめなめ。
通りがかった柴犬の頭をなでなで。
 
家に帰ると、ゴールデンレトリバーのキナコの背中にまきついてプッ。
「やめて！」とばかりに、キナコが思い切り身体をねじってふりとばす。
 
「ママ、アイスぅ」
「さっき食べたばかりでしょう」
ママのエプロンをひっぱりながら、プッ。
 
すると、玄関でチャイムの音。
「あっ、パパだ」
あわてたたくちゃん。ろうかで転び、プッ。
 
パパがジャージに着替えてリビングにやってきた。
パパと一緒にゲームをやりながら、プッ。
パパも負けじとプププップー。勢いがいい。
 
「今夜のハンバーグはおいしかったね。明日もハンバーグがいいな」
夕食の後は、パパとお風呂につかってプッ。
「ほうら、つかまえた」
パパがタオルを湯船につけて泡ぶくをキャッチ。
たくちゃんは、ふくらんだタオルを両手でつぶす。
「逃げちゃった」
 
パジャマに着替えたたくちゃん。
ベッドにもぐったとたんにプッ。
 
ママがベッドで絵本を読み聞かせ。
プゥ。
「えへへ」とママ。
たくちゃんは夢の中でもプッ。
今日もいっぱいしたね。
 
どうやらパパもママも屁こきなので、たくちゃんは自分のことを屁こきだと思っていない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわり