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SonnyBoy第11話考察「だから僕らはやっていける。」

今回は7話から10話までの総集編というか総括というか、やってきたことがここで全部つながるんだと気付かされる回だったなと思いました。

7話〜10話の各話を見ているだけだと各話完結の寓話的私小説といった感じがしたのですが、今回でその答えようのない私小説を最後に全肯定するような内容となっていて震えました。

ぜひもう一度、7話〜10話まで見直してから今回を見てみてください。最高です。

複葉機

初めに何かを探す瑞穂のカットから始まる。そこには何故か複葉機が…

プロペラは四枚。複葉機。色々調べた結果、これは第一次世界大戦初期にてイギリスが偵察機として採用した空冷V型8気筒の複葉機であることが分かった。

では何故、数多ある航空機の中で、このB.E.2を選んだのか?

後にサターンⅤ型が作中に出てくるのだが、技術の連なりを示すならライト兄弟が作り上げた飛行機でも良かったはず。

敢えてこの機体にしたのは、このB.E.2が「初期は非武装だったが、ドイツ軍の技術進歩による武装化に対して、自身も機銃をのせ武装化した」という経緯にあるのかもしれない。

飛行機でいえば、スタジオジブリ作品の「風立ちぬ」では通底して、「飛行機は呪われた夢」であることを説いている。

それと同じく、サターンⅤ型もまた冷戦という争いの中心にある呪われた夢の続きであると言えよう。

だからこそ、この功罪の始まりとしてライト兄弟のライトフライヤー号ではなく、まさしく”戦争”の中で非武装から戦うことになっていったB.E.2が選ばれたのだろう。

葬式

起きたトラ。希のとこへ行こうとするトラをサクラは尻尾を捕まえて引き止める。(この慣れた感じが良い)

それを目を見開き、ひょっとした顔で見つめるトラ。

「邪魔したらアカンで。」

ということだろう。

そしてオルゴールを見つけると挿入歌が。

ここでは音楽と映像、両方で視聴者に語りかけているので別けて整理してみる。

歌詞

ヒカリの中にいつも君がいるみたいで 僕は目をそらせない
道は続いていく悲しみや祈りを照らす声
寂しがりの心から伸びた 根っこを捕まえて笑った
君の優しさ きらめく夜空の星のように いつでも
ここで会えないときもずっと 心で話をしよう
君がいたから 変わった
世界のほんの隅っこで産声を上げ繋がる奇跡
君は見てるかな
耳を澄ませば聞こえる 愛しい声それはそこにいるのと似てる
僕はホントは寂しいけれど 君が(君が)くれた言葉を (ずっと)
消えずに (まだずっと) 二人の中で (希望)

ザ・なつやすみバンド「lightship」

映像

夕焼け、長良はヤドカリを見つける。

(ヒカリの中にいつも君がいるみたいで 僕は目をそらせない)

そして、瑞穂と見つけたものを見せ合う。

(ここからAメロまで間奏)

そうしてネコ三匹とヤマビコ、長良、瑞穂だけで葬式の準備。

青色で鯨幕を作る。

トラがゲンにペンキを付けてイタズラしてる?

長良は、島でスミレのような花を見つける。

島をもうすぐ沈みそう。

カットが切り替わり、沈没しかけの学校を散策する瑞穂。

(道は続いていく悲しみや祈りを照らす声)

そこにはラジダニの肖像が。供え物を置いて額だけもらって帰る。

(寂しがりの心から伸びた 根っこを捕まえて笑った)

さっきのトラに仕返しするゲン。サクラとヤマビコは一緒に作業をする。

今回、この動物たちのセリフがない。そうすることで、「この動物たちは今何を思っているのだろう?」と推測できるのがラストに繋がってくると思う。

そうして、斎場を作る。ヤマビコが手伝ってる絵がすごく良い。

影をここで2影(影を二色で描く)まで描くことで新鮮さが出ているなと感じた。

今回は今までタメてきたものを開放する回だったんでしょうね。

テントに集めた物資で希の祭壇を作る。

(君の優しさ きらめく夜空の星のように いつでも)

まるで長良の気持ちを代弁するかのような歌詞と映像のシンクロ、「この瞬間に、この歌詞のようなことを考えているのかな。」と思うと心揺さぶられる。

箱にはオルゴールと一緒に、集めたものが詰められる。

律儀に名簿ノートを用意している。ラジダニが残した仏像には会場の案内がはられている。

そして木に電球を付けてライトアップ。

(ここで会えないときもずっと 心で話をしよう)

そして葬式を始めるため不思議な形のロウソクを並べる瑞穂。

一方、長良は魚を焼いて拝み、サクラはそれに寄り添う。

おそらく長良がサクラに注文し、それをちゃんと殺して焼いてるのかもしれない。

敢えて、既製品の出来上がり食品ではなく、自分で一から最後まで作って初めて「精進料理」を食べる。

そこで魚が出るのは敢えて、昔の肉魚を食べないというしきたりよりも、希がいつも釣り上げていた魚を食べようという今ここにいる自分たちの思いを大事にしたのだろう。

(君がいたから 変わった)

配膳する瑞穂。長良・瑞穂・やまびこは魚を食べる。

先に食べようとするトラが周りを見渡すと、しばしの黙祷。

(世界のほんの隅っこで産声を上げ繋がる奇跡)

そして瑞穂が食べていいよと言ったのだろう。みんな一斉に食らいつく。

だが、長良はどこか上の空だった。そんな長良を瑞穂が見つめる。

(君は見てるかな)

結局ほかに誰も来てくれなかった。朝風も骨折ちゃんも。

漂流メンバーも恐らく見つけた居場所で色々あって、もう連絡手段も帰る手段も失ってしまったのかもしれない。

もう残っているのは自分たちしかいない。

そこで流れるビオラとフルートのメロディが切なくも優しく力強い。

だからこそエモーショナル。胸震える。

希を偲ぶ会

みなさまご無沙汰しております
2組の瑞穂です
このたび希を偲んで「お別れの回」を
執り行うことになりました
遠く離れている人も多いと思いますが
参加していただきたいです
ベースキャンプ跡 7月21日 正午

そしてメンバーは二人。

返事もない中でふいに空を見上げる瑞穂。

夜がふけても長良は式場で座り尽くしている。

そうして夜更けにて、写真をオルゴールに入れて船で送葬する。

そこには生きているヤドカリがいる。これは送り出す際に縁切りとして供えたのかもしれない。自分たちがいつまでも引っ張られないためにある種身代わりとして、どこまでそうかは分からないけれども。

オルゴールを回す瑞穂。二人で送り出す。

それを眺めた後、長良は浜辺にて仰向けになり希と同じく 空に手をつかもうとする。

(耳を澄ませば聞こえる 愛しい声それはそこにいるのと似てる)

気づくと瑞穂が泣いている。だが、長良は何も言わずにずっとそばにいてあげる。

瑞穂はここで泣けた。だが、長良はここで泣けなかった。未だに整理が付いていないのだろう。それが後のシーンの伏線に。

(僕は、本当は寂しいけれど 君が、くれた言葉はずっと)

そうして、またもや鳥が映る。これは2話で見捨てようとした鳥なのかな?

そんな彼女との繋がりの一つである鳥を見つめて、あのときのことを反芻させていたのかもしれない。

(消えずに、ただずっと光の中で)

夜が更け

(希望…)

ここで、朝日・再生の祝福にふさわしい旅立ちのサックスが勇壮と鳴り渡る。

「行こう」「うん…」

そうしてリュックを背負い旅立とうとする二人。

そこに、ラジダニが弔問者として現れる。おそらく長良たちから訃報を受けて帰るのに時間がかかったのだろう。どこか畏まるような物憂げな表情を見せる。

そして場面は切り替わり、崖の上にて、ラジダニは切り株の上に石を2つ乗せ、そこで倒立する。

洗ってないのか臭うようだ。

「なにそれインド式?」

彼なりの礼拝なのだろう。

「帰るんだろ。君たちは。」

そう言われ二人息ピッタリと「うん!」とうなずく。

「じゃあ、手伝わせてくれないか。」

「僕ならきっと役に立てるはずだ。」

「うん、頼むよ。」

先程のシーンでは二人で帰ろうとしていたように見える。二人で帰れるんだけど不確定要素が多いのか、最後にラジダニと一緒に何かをしようと思ったのか。

2,243歳のラジダニ

そしてラジダニのスマホには

4250年7月21日 12:40

と記載されている。つまり、2229年近く経ったということになる。

(漂流当時、彼が15歳だとすると現在おおよそ2243歳なのかもしれない。)

それで7月21日なので、瑞穂の言う待ち合わせ時刻にはたどり着いている。

「これ、2千年ぐらい立ってるんじゃ」

「それにこの、かっこいい船とかどうしたのよ?」

「まあまあ時間はたっぷりあるんだ。道中ゆっくり話すよ。」

「はい。」

大人の対応にすっかり落ちる瑞穂。2話で先生と何かしら関係があったような描写からも、大人の男性がタイプなよくいる女子中学生といった感じの瑞穂。

「え?」

「これ、長良が計画したの?凄いじゃないか。うーんここなんて…こうすれば、ほおら完璧だ。」

そうして手直しするラジダニを見て長良は笑みを浮かべる。

いつもの頼もしいラジダニが帰ってきた感じがして嬉しかったのかも。

そうして、出来上がった最終案を3人手を合わせて判を押す。尊い。

それは2話で出てきた机なんだなって。そして、その時からずっと計画してきたロビンソン計画が遂に実行される。胸の熱くなる展開。

ただ、自分たちの願いを叶えるためには美しい環境をも破壊するということを僅かながらのシーンで見せるのも、この作品の背後にある不条理さを垣間見たような気がした。

そうして、トレーラーやクレーン車、それらはおそらくネコのサクラのコピー能力で取り寄せたものだろう。それをラジダニが能力で遠隔操作する。

そうして、沈みゆく島が更に切り崩されていくのを見つめるヤマビコ。

自分が作り出した世界が壊されていく物寂しさと、それが望む二人の帰還のためであるという板挟みの中で、何とも言えない面持ちでその光景を見つめる。

そんなヤマビコに瑞穂は手をかけてあげる。その背後には巨大なトラックとクレーン車。かける音楽はそんなやまびこを優しくねぎらうかのようだ。

そしてラジダニのカット。

ラジダニはたくさんのリモコンを使い大規模開発もできるように。

初期のラジダニがLV.60で十分強かったのに、今回のラジダニはLV.1000になって帰ってきたような感じだ。

見つめる先には長良。

長良の回想

そしてカットが変わると釣りをしているときに絵葉書が届いたことの回想が入る。

二人では釣りができない物寂しさ。そんな折、つばさ(骨折)ちゃんから能力遺物の時空を超えて届く絵葉書が届く。

「長良くんへ
私からの手紙におどろいているかもしれませんね。
このハガキのことは希に教えてもらいました。
突然ですが、希はこの世界からいなくなってしまいました。
朝風くんとのこの世界『戦争』の攻略中に、
事故でこの世界からいなくなってしまいました。
希は最後の一瞬まで朝風くんを信じていた
■(今?)はそれしか言うことが出来ません。ごめん」

戦争は人物であるはずが、この世界『戦争』となっている。つまりこの漂流世界では、人は内側に「能力・世界・遺物」という三位一体の関係を構成しているのかもしれない。

そうして、その世界の中で希は最後の一瞬まで朝風くんを信じていた。

それなのに死んでしまった(遺物化してしまった)ということは、逆に朝風くんは最後に希を信じきれなくなったのかもしれない。

希が欲しいが、本当の自分を知った今、希が手に入っても自分は生きられない。

彼女は自分にないものを与えてくれて、そんな自分はどうすることも出来ない。

希がいてもいなくても自分は生きられない。

希がいたお陰で前に進めた長良と、いたことで修羅と化した朝風。

希に対する朝風の渇望や葛藤は、まるで信仰心のようだ。それはつばさちゃんも同じったのかも。

まさしく、朝風の気持ちは「With or Without You」だったのかもしれない。

忘れらんねえよ

ロケット格納庫も順調に開発が進んでいる。凄い開発スピードだ。

だが、それは無人で自動化された開発。人っ子一人で確認出来ることはたかが知れている。

ただ、それでも3人とヤマビコ、ネコ三匹で何かをすることに意味があるのかもしれない。それはバベルの塔を大人数で作ることと同じことなのかも。

ホイッスルを吹き、カウンタをカチカチしながら現場監督をする瑞穂、目の前にはコンテナの群れ。

チェック項目は大量だ。

一方で、パイプの配管を手伝う長良。ラジダニのアイテムを使うとすぐにパルプが締まって便利。

「どうだい便利だろそれ?」

更に大型の銃を使って一気に建設パーツを生み出すラジダニ。ラジダニ一人で出来るんじゃないか?

スゴイネ!スゴイネ!

この鳥は何なのかは分からない。だがソレにながらも

「うん、すごいね!」

そういいつつ下を見て無表情な長良。何か思うことがあるのかもしれない。

「よぉしここは大丈夫だ。」

トランシーバーの通信から

「長良、後を頼んでもいいかい。」

「うん、分かった。」

そして今度は打ち上げステーションにて、遠くのテントが気になった瑞穂は双眼鏡で覗きラジダニのとこへ向かう。

そこでは、小型PCで機械全体を動かすラジダニ。

「やぁ、瑞穂。」

ニャ〜と言った感じのポーズから、何て言おうか迷った感じだが

「向こうは使わないの?」

布がかぶさった管制室。

「あぁ、コレで足りるからね。それに、せっかくだから自分の目で見たいんだ。」

結局オペをするのは一人だけ。映像よりも現物をみたいラジダニ。

「やっぱり、ラジダニは一緒に帰らないんだね。」

「うん、僕は残るよ。」

ネコや鳥のカットで一緒に残りそうなモノたちを映す。

「ラジダニはさあ、ホームシックとかならなかった?
ずっと一人だったんでしょ、二千年。」

「ホームシック…懐かしい感情だ。」

完全に沈もうとしている校舎に鳥が一匹。

「前に立ち寄った世界に、故郷の情景が描かれた世界があってね。それは恐ろしいほどに正確で鮮明、何より神秘的だった。不安になるくらいにね。」

→こだまのセリフ

「ここはとても穏やかで優しい世界だ。信じられないくらいに。」

に近い。ラジダニは希の代わりに今回、二人にヒカリを見せに来てくれたのかもしれない。

「そのとき、この世界に漂流して初めて懐かしさを感じたよ。

僕はこの世界をホームシックと呼ぶことにしたんだ。」

次のカットで、二人はトラックに乗り込み、組立工場まで向かう。

「故郷って元の世界のこと?」

「あぁ、だけどちょっと違うんだ元の世界より元の世界らしい世界だった。」

「ん?」

そんな世界があったりしたらもう帰らなくても良いんじゃないとさえ思ってしまう。

漂流世界と現実世界の違い、別に帰らなくても良くないという考えが脳裏をよぎる。

「その世界の主は、病的なほど思い出に囚われ故郷を描き続けたんだ。

奇妙なことにその世界には、どこまで行っても人っ子一人、人間は描写されていなかった。」

「寂しいところニャ。」

写真をとっても自分や人が写ってない風景ばかり取る人、結構いるのでは。

「でも、ある時期を越えるとガラッと作風が変わるんだ。」

「その絵を見てあっとしたよ。それはある女子生徒の肖像だった。」

「ほ?」

「とても美人に描かれていてね、どうやら彼女は彼の恋人らしかった。」

「面白くなってきたじゃん。」

近寄る瑞穂、ゲンと鳥が見合わす。意見の一致。

「だろぉ。僕も好奇心に負けてね。独自に開発した能力遺物、スコープスクープで彼女を覗いてみたんだ。」

「どうだった?」

ネコの腕を持ち上げて顔を隠しながら聞く瑞穂。ウキウキだ。

「実際の彼女は、絵ほど美人じゃなかった。」

「ハッハハハ。恋の色眼鏡は度がキツイからさあ。」

つまり、対象が変わっただけでその彼は、物事を理想化しないと見つめることが出来なかったのかもしれない。

「でも彼女は彼のことを本当に愛していた。」

彼女は、

だけど逆に、彼は本当に彼女を愛していたのだろうか?

「気になって他の絵も覗いてみたんだ。実際の故郷は、彼の描く絵のように美しくも大して魅力もない僕のよく知ってる街だった。」

「簡単な話、彼は現実を受け入れなかったんだよ。」

理想でしか物事を見れない。現実を受け入れないくせに、漂流してもそんな現実世界を夢見てる。理想という色眼鏡をかけて…

つまり彼にとっては漂流したことには目もくれず、一番最新の思い出に浸ることしか出来なかった。

「恋人も彼に目の前の現実に生きてほしいと願っていた。でも彼は変わらなかった。そして、ついには愛想を尽かして、その世界から出ていってしまうんだ。」

トラックの音がなくなる。そこには「WATCH YOUR STEP(足元注意)」と電車の扉が。

足元が見えず、世界に閉じこもり、恋人?(一方通行な感じ)すらも消えてしまう。

まるで、8話のやまびこのようだ。

つまり、ありとあらゆる世界において、やまびこ・こだま・戦争の関係があるのかもしれない。

「すると彼は、今度はとりつかれたように恋人の絵を書き始めるようになった。」

「肖像の彼女は、その絵だったんだ。不意に僕は現実を突きつけられたような気がしたよ。」

ラジダニはこの寓話を見て「WATCH YOUR STEP(足元注意)」と感じたのだろう。

「果たして本当に自分は現実を生きているだろうかって。」

ラジダニ自身も旅を続ける中で、気づかない内に自分の世界にとじ込もっていたのかもしれない。

その中で郷愁の世界へたどり着き、世界を観察したことで自身のこれまでを内省する機会を得たのだろう。

「知らぬ間に築いてた 自分らしさの折の中で藻掻いてるなら 僕だってそうなんだ」

Mr.Children「名も無き詩」の一節が不意によぎる。

7話にて、ラジダニは帰還の目的を失い、かねてから外の世界を求めていた。

ある意味、ラジダニのアイデンティティ・クライシスから立ち直るための旅立ちだったと言える。

そうして自分にとっての現実を探していく内に、それが理想化された現実を追い求めていくことに変わり、いつしか自分らしさという折の中に囚われていたのかもしれない。

ラジダニの2千年にも及ぶ探求は、まるで現実の人間が生まれてから死ぬまでに体験する悲喜交交(こもごも)そのものと言える。

そうして、うつむきながら瑞穂は、

「その子は彼と、美しい思い出じゃなくて、まだ形のない未来を一緒に作りたかったんだ。」

と返す。今度は「名も無き詩」からの「Tomorrow never knows」だと思った。

それは、同時にラジダニの

「果たして本当に自分は現実を生きているだろうかって。」

という疑問へのアンサーにもなっているのかもしれない。

明日が地獄でも虚無でも、それでも今に留まるよりも飛び出す。

この作品に通底するやり取りだと思う。

死ぬことについて

組立工場に付いた二人。

「いつしか彼は、彼女との思い出に囚われたまま、この世界そのものになってしまった。」

「死んじゃったの?」

「どう言ったら良いんだろう。この世界での死は少し複雑なんだ。」

世界や遺物になるのは、この世界においては一つの形態に過ぎない。

少し複雑とは死んでるとも言い切れない不確定さを指すのかも。

「私、死ぬことを考えると、暗くて、怖くて、お腹がギュッてなる。希もそうだったのかな。」

それを見つめるだけのラジダニ。

2000年経ってしまった彼の顔にはもはや、そんなことすらもどうでも良くなったような感じさえする。

「怖かったのかな。」

今度は長良、4話でみんなが飛び込んでいたあの黒い穴に来た。そこでなにやらハンマーで金具を打ち込む。アンテナ?

あの飛び込み台もすっかり壊れ、そこには黒い水たまりだけがある。

空を見つめ、手紙を見る。これまた能力遺物で運ばれたのだろう。

カットが切り替わり、薄暗い部屋でラジダニがその手紙を見る。

死ね お前のせいだ フザケルナ

10話で朝風は変わることが出来なかったことがこの手紙ひとつでありありと伝わってくる。

「長良は、希が死んでしまった世界には行ってみた?」

首を横に振る長良。「ううん」

「どうやって彼女の死を確認したんだい?」

コンパスを見せる長良。

「そうか、瑞穂のネコか。」

おそらく、手紙が来るよりも先に、瑞穂のネコのコピー能力で瑞穂がコンパスになったことを察知したのかもしれない。

そうして手紙が来て、認めたくない事実を認めざるを得ないときが来たというわけだ。

「みゃーお」

「この子には分かるんだ。」

「すべてのものの状態が。」

アンニュイな表情を浮かべる長良を見つめるラジダニ。

カットが切り替わって翌日、長良に別の世界の話をする。

「ある世界に発明家がいたんだ。その世界の生徒たちは自らを神の子と信じ、心身の全てが潔白でなくてはならないと思い込んでいた。」

ラジダニが、ケーブルorパイプに聴診器みたいなのを当ててケーブル・パイプの状態を確かめる。

飛行機・ロケット。その開発に発明家は不可欠。今回は人の進歩の証である技術についての話もテーマに含まれているのだろう。

「殺戮はせず、肉も食わず、植物も殺さずに生きていくと決めていた。」

「そこは断食の世界だった。」

「なんだかすごくつらそうな世界だ。」

物質主義と精神主義がその世界では併存している。

それはまるで、ラジダニの研究・開発欲と仏教信仰を象徴しているかのようだ。

「いや、彼らは案外幸せだったらしい。その世界は美しく、高度な文明として栄えて、多くの遺物も残っている。」

日が強くてってるのか影が強い。真上に太陽があるのか、まるでエクアドルのキトのようだ。

ロケット打ち上げは、できるだけ遠心力を受けられるように赤道直下に近い場所を選ぶ。長良の能力でそういう風に調整したとか?

「へぇ〜、そうなんだ。」

「第一、空腹なんて僕らにとって大したことじゃない。」

1話でラジダニはお腹が空くことを不思議がり、きちんとご飯を食べていた。

7話でもキャベツ太郎を頼んでいる。

そんな彼が2000年経ってしまうと、あっけらかんと、冷めたような言い方になってしまった。

7話で、立ち直りとしての航海、自分探しの旅に出たラジダニの終点はどこかも寂しげだ。

だからこそ、これから先の人生を生きる人にとって、ラジダニもまたやまびこと同じく、未来からの結果を過去として提示し、問題提起しているのかもしれない。

そう言われて上を向き、考える長良。続けてラジダニ、

「そんな世界の端っこで、死ぬことに執着している生徒がいた。」

「彼は静止したこの世界で死を作り出そうとした。」

「死の発明家だった。」

「死の発明?」

断食人は精神的に豊かな生活を享受していた。それに対し、発明家は死を望んだ。

「あぁ、彼は人の死によって、この世界の静止を打ち破ろうとしたんだ。」

死んでカピカピなダンゴムシが映る。コンクリで陽に干されたのだろう。

だが、このダンゴムシもまた死んでいるのである。

「実を言うと、僕はちょっとだけ彼に憧れを抱いたんだ。」

ラジダニはそんな彼に憧れを抱いていた。つまりたどり着いたその世界は、8話のヤマビコと同じく自分の精神構造を模した世界だったのだろう。

それは内なる自分、無意識への親近感かもしれない。

「倫理観はともかく、コレはこの世界に対する挑戦だからね。」

そうしてダンゴムシを気づくこともなく踏み潰す。

「でも、実際の彼は悪魔そのものだった。神を罵り、森を焼き払う、肉を食い荒らし、断食人たちを侮蔑した。更に静止をいいことに、自殺や殺人の実験を繰り返したんだ。」

影が悪魔みたい。歩く度に影が大きくなっていく。

神殺し、世界の荒廃、世界の人物の否定、自殺、殺人。まるで8話の戦争のような人物だ。

つまりラジダニはたどり着いた世界にて、ヤマビコと同じ体験をしたということになる。

それが先に瑞穂と話した

「果たして本当に自分は現実を生きているだろうかって。」

に繋がっている。探検の中で、人と関わりを持っていたと思っていはずが、実は自分の世界に閉じこもっていただけだったのかもしれない。

「そんなのただの殺人鬼じゃないか。」

この世界に無い”死”を発明。そのために他人を巻き添えにしていく。

発明は一人では完結しないところがある。開発過程、その後の運用、終始責任が伴う。

その中で彼は責任を超えた越権に至る。

「あぁ、あまりの残虐さに僕は本気で彼を殺してやりたいと思ったよ。」

そんな彼にラジダニは殺意を抱く。

「そして、遂に彼は死を発明する。」

ロケットを固定する発射台が映る。

「彼はどうしても死にたくて仕方なかったらしくてね、その発明をまっさきに使った。それで見事に死んでみせた。」

ロケット台の影で語る。内なる自分を語るかのよう。

「え、」

「うん。僕はその発明を実際に見つけたんだ。」

映画館みたいなとこ。ヘッドギアっぽい。電気椅子。

「彼に、君も座れと言われているようで。」

汗がどっと溢れ、誘惑に焦りを感じるラジダニ。思わず椅子に触れてしまう。

「え、すわったの!?」

ニッコリと見つめるラジダニ。自分には「そうだよ。」と言ってるようにも見えた。

「死んだ彼は何ら変わらないように見えた。だが変化は日を追うようにつれて現れた。」

発明家が映る。なんだか服装とか髪型がラジダニっぽいけど肌の色違う。

やはり、発明家はラジダニにとっての戦争、彼の物質主義の要素の象徴なのかもしれない。

「発明家はもう何も望まない。目の前にあるものを受け入れ、満足し、何も批判をせず、誰も憎んだりしない。ブッダのようなよく出来た人間になっていた。」

「この世界から発明家は居なくなった」

ズドーン。ブレーカーが落ちるような音。

衝動や業、あらゆる人間としての感情を失う。

それはブッダのように悟りを開いたような状態にある。

この発明とは、人間としての欲望や本能を尽く破壊する装置、ロボトミー手術的なものなのかもしれない。

ただ、実際の悟りとは、このあらゆる苦しみはこの世の理、自身の本能を解きほぐし解消することにより訪れると言ったような内容だったはず。

自身で考え体得していく悟りとは違う、まさしくただ死に至るための発明だったのだろう。

この世界では能力で何でも出来るようになっている。ただ死だけがない。だからこそ、死を求める。

それは、現実世界でこの世界にない何かを発明するのは、漂流世界で唯一つ存在しない死を発明することと同義だったのだろう。

その終着点が死でしか無いというのは、まるで現実の僕らも最終的には死ぬのに発明やらなんやらしてるなんて結局は死のために発明をしてるんじゃないかと、こんがらがった考えが頭の中で渦巻く。

「彼は衝動の終わりこそが自分という命の終わりだと知ったんだ。

これはこの世界での死の一つの形だ。」

しゃがんで木の葉が水に流れていくのを見るラジダニ。この旅の終わりで自分の中の渇望が消え失せたのだろう。

「結局、僕は座らなかった。」

自分の中の影が死に、穏やかに物事をどこか俯瞰してしまうラジダニだけが残った。

「その人、自分が嫌いだったのかなあ」

そんな心の戦争を表す一言を長良は問いかける。

ただ、自分が嫌いなだけで人は死ねるのだろうか?

「さあ、今となっては何故彼が死に取り憑かれていたのかは分からない。」

自分が死にたかった理由は何なのか?

嫌なことを思い出すから、こんな空虚な世界で発明など意味を持たないことに失望したからか、色んな理由が考えられて分からないし、自分の中で本当に100%これって言える感情なんてあるのかもわからない(何かしらノイズのように喜怒哀楽やらなんやらが入る)。

「けど長く生きてみて分かったよ。色んな経験やらなんやらが積み重なっていくと、いびつな何かが出来上がっていく。それが大きくなっていくと、一つ一つの意味が薄くなって、均一化されていくって言ったら良いのかなあ。自分が偏ってくのに、どんどん無感動になっていくのが分かるんだ。最後にそれはポッカリと歪な穴になる。」

ここで2000年生きてきたラジダニの結論が出る。

年を取ると、若い頃に感じていた感動や怒り、あらゆる感情を俯瞰して「そんなときもあったなあ…」と想い出に浸るようになってしまう。

それこそが、郷愁の世界なのだろう。

そうして出来上がった歪の前には、あらゆる感情、死の恐怖すらも薄れていく。

良く言えば受け入れられる準備ができた。悪く言えば心が死んでいってる。

現実世界で、海外旅行も最初のうちは感動体験が多いものの、数をこなす内にいつの間にかホテルに居たまま出られなくなるような、経験値のカンストが起きるのかもしれない。

どの道、死が訪れることは変わりない。

「僕も時間に干されて、いつかは希みたいに、ただの形になる。でも、これは静止に織り込まれた一つの状態に過ぎない。それを死というのなら…」

「元の世界の死と変わらない。」

そういい左を向く長良。

ラジダニは最早、自分の死すらも受け入れている。2千年という設定で語るラジダニの現実世界と漂流世界、2つを跨いで存在する”死”についての思想は、こちらにも諦観が伝わってくるような説得力があると思った。

「…ああ、魂なんてものはなくて、意識は何の意味もなく生まれて、ただ消えていく。」

仏教的な魂の概念も失いニヒリズムに至るラジダニ。

鳥がハネを広げのと同じく手を広げ

「人生は果てしない徒労だ。」

今までの2千年をそう言い括る。

7話にてバベルのホスト、スス頭のセリフ

「素晴らしい景色だろ。天国へと果てしなく続くバベル。

これはすべて人間の手によって作られる巨大な空っぽだ」

に通ずるものがある。つまり、数千年単位で生きてしまった者は、この空虚感に囚われてしまうのだ。

そこから、間を置いて振り返り

「でも、全くの無意味だからこそ、生きているこの瞬間、その輝きは尊いと思うんだ。」

どうせ意味などない。ならば自分で今この瞬間見出す価値観、それに伴う行動は自分で肯定できるんじゃないか?

積極的ニヒリズムを説くラジダニ。

「それはそのとき、その人だけのものだからね。」

そして、これまで言わなかった

「希はもう戻らない。」

という長良が今回ずっと内に抱えていた問題に切り込む。

それは、現実を突きつけるように言う。低い声で。

「はぁ…!くっ…」

自分で意味を見出し、その人生を生きる。だからこそ、希を断ち切れず過去に囚われそうになっている長良に辛くても真実を告げる。

5話で、長良がクラスのヘイトを買っていたことを言い切れなかったラジダニの成長はここにあるなと思った。

「でもね」

コンパスに磁石をかざすも変わらない。

「はぁ…!」

「彼女の意思はまだ生きている。」

いつの間にか、自分の中にある理想の希だけを振り返っていた長良は、ラジダニのお陰で

彼女にとっての意思は前に進むということ、それをもう一度思い出す。

ようやく吐き出せた

場面切り替わって夜。

「どのくらい出来てるの?」

「猫たちが頑張ってくれてるけど、まだ二割ってところかな。」

長良のスマホにアップ。

「一応声はかけたんだ。けど、みんなはもう帰らないんだって。結局、僕と瑞穂、あと希だけだった。」

瑞穂のトーク履歴とか見るとみんなそもそも返事できない状況かもね。ラジダニ以上に時間を過ごして遺物になってしまった生徒もいるのでは?

恐らく、つばさちゃんとか親交がなんとかあった人からは返事があったのかも。

ここで希と二人で話していたことを回想。

「この方法だと、元の世界に帰ることで自分が自分でなくなるかもしれないってこと?」

5億年スイッチ的な。あれは帰ってきた時点で5億年過ごした自分は死んでいるじゃないかと思う。

つまり記憶を失ってしまった人間はそれも一つ死んでいる状態なのかも。

「うん、それに時間は…戻れても漂流したときよりは二年は立ってるんじゃないかな。」

「私が死んだままって可能性もあるんだ。」

「そうだね。」

今の時間軸の漂流世界と現実世界を組み合わせることになるから、丸っきりコピーがオリジナルに置き換わらない限り帰れたとは言えない。

「まあ、どうなってるか考えてもしょうがないかあ。どっこい生きてるかもしれないし。」

ここで、なぜ三人が帰ろうと思っているのだろうと自分は不思議に思った。

別に帰れなくても、そのまま今いるメンバーで過ごせたらソッチのほうが幸せじゃないの?

そう思ったが、もう一度この作品を振り返って見ると、そもそも長良は帰れなくてもいいという投げやりな気持ちと、本心では帰りたいという2つの気持ちで揺れていた。

そこに希や瑞穂、ラジダニが側にいて声をかけてくれたからみんなのために帰ろうと再起できたのである。

この作品において、登場人物のモノローグはほとんど無く、帰る具体的な理由は形として残っていない。

会いたい人がいるとかこんな将来を生きたいといった理由があっても、別に今ここに残って叶えることだって出来るようなぐらい生徒も街もある。

それでも、恐らく今ここにいることは少なくとも良いことではない、だから本当の世界を生きようと決意したのだろう。

この世界に生きていることが死んでいることだ、3人にはそう思えたのかもしれない。

理由が外ではなく内にある。この何とも腑に落ちるような落ちないような理由は視聴者の側にもあるのではないだろうか。

このままだとマズいから外に行かなくちゃ。

ぬるま湯には浸かってられない。

物語的な能動・欲求の理由ではなく後ろ向きな理由がメインにある。

なんだかこの作品らしい理由だなとも思ったりする。

「ここで起きたことは、全部無かったことになるかもね。そしたらさ…」

言い切れない長良。

「ん?」

「いやぁ…」

「ねえ、帰れたらさ…」

そんな長良に希から切り込む。

この帰れたらさは、6話の「卒業式だね」で、そのときは「さあね」としか言えなかった長良も、1年立つとここまで変わったのかと感嘆。

「1番に何がしたい?」

「ん…そんなこと考えてない。」

「なんで楽しいじゃん?」

1話の教科書を「破るの楽しいよ。」の派生。理由なんてないけど、とりあえずやってる。

「だってさ、覚えてないかもしれないんだし。そんなの考えてもしょうがないだろ。」

さっきの考えてもしょうがないかあ、という希の発言への返し。それを言われて希も、

「いっぱい考えてる私バカみたいってこと?」

なんかキレ感がある返しに。

「どうせ、大したことじゃないんだ。」

「ふふん。あのね、ソレイユのオムライス食べて、グレイスのいちご一杯乗ってるやつ食べて、それからはつねのタンメンお腹一杯。」

「ククッ、ほらな…下らないじゃないか。」

それを真顔で聞いていた希は

「それから職員室の隅で、しみったれた顔をした男の子を見つけたら、首根っこひっ捕まえて質問するの。」

長良は、サッ、と砂の小山に木の棒を刺す。

「なんて…」

「もう一回私と友達になってくれるって。」

見つめる長良。

「そしたらそいつなんて答えるかなあ…」

赤くなる長良。何だかシュタインズゲートっぽい。

世界線を伝播してもう一度再会できるか。

「僕らはもう高校生になってるんだし。」

「えぇ?」

「それは分からないよ。」

「どうして?」

「だって…!」

何かを言おうと顔を見て言おうとするも、

「君と僕が友達だったことがなかったことになるんだ。」

ここで顔を背け、うつむいてしまう。

そして、盛った砂を払っていく。グサリと刺さった言葉を砂を取り払うことで落とそうとする。

「君はまた教科書を破ってるだろうし、僕はまた鳥を見捨てるんだ。」

「そんなことない…」

ここで、慰めるような肯定してくれるような言い方をしてくれる希。

「私達はちゃんと進んでるはずだよ。」

下を向いたまま、長良はやりきれない思いを叫ぶ

「ここで起きたことは、向こうで起きてるかは分からない!」

そうして力いっぱい砂を引いて、棒を倒そうとするも倒れない。

それを見て唖然とする長良。

「でも、ここでは確かに起きたんだ。」

棒が倒れない=確かにそこにある。映像とセリフで同時に語る。

漂流世界、現実世界、どっちが本当かじゃなく、どこにいても、そこでの行いには命がある。9話の相撲、神への祈りに通ずるものがある。

「じゃあこうしよう。」

覗き見る希に、ハッとなってみる長良。

「覚えていたほうが言うことにしよう。」

手を差し伸べて

「もう一回、友だちになろうって。」

お友達からお願いしまあああす!

Don't say goodbye〜

もう今回はシュタゲですね。

驚く長良。

「絶対に断らないって。」

「うん。」

またもや、希にヒカリを見せてもらった。でもだからこそ、見せ合いの関係があるって良いなって。

そして手を取ろうとするとこで終わる。

真理を知っても何も出来ない

回想が終わり、5話で逃げたときのように泣く長良。

心底悔しそうに泣く。抑えきれないものが溢れているような感じだ。

本当にこういう泣き方になるよなあ。

今まで泣けなかったのは、死ぬ瞬間を見てなくて、断片的な情報しか入ってこなかったから漠然としていたのかも。

瑞穂は割り切りが早かったのか、涙もろいのかすぐに立ち直ったのだろう。

だが、長良はラジダニに色々言われてようやく、あの時を思い返し、自分の気持ちを再発見したことで、失った現実を思い知らされたのだ。

「いかにこの宇宙が真理がわかったと言っても、僕は…」

「泣いている友達に、ただ隣りにいてあげることしか出来ないんだ。」

そうして謎の手振り素振りをする。5話のときと違い、本当のことを告げられるようになったラジダニだが、そこから立ち直れるようなベストな答えが見い出せなかったのか。

もしかしたら、そうして吐き出させるまで見守ることが一番だと知っているが、それでも何かしら声をかけられないかと悩んでいる。

或いは、熱心に励ましたり、寓話で諭したりすることの無力さを知っていて、そんな境地にまで来てしまった自分を嘆いているのか。

色んな見方ができるセリフだなと。

そうして、場面はガラリと変わりロケット打ち上げに。

葬式の終わり

宇宙服の試着。ブーツを持ってくる際、中にゲンが入っていて振り落とそうとする瑞穂。

それを見て笑う長良。鳥も笑う。

すっかり憑き物が取れたような長良。つまり、ラジダニと長良が二人座っていたのは、冒頭で瑞穂と長良が一緒に座っていたシーンと韻を踏む構成になっている事がわかる。

憑き物を落とすためには誰かが隣で見守ってくれてることが大事だったんだね。

もはや家族みたい。つまり今回の葬式は

ラジダニ=父 希=母

瑞穂と長良=子息子女

で行われた家族葬だったのかもしれない。

母の葬式を身内二人でやった後に、2000歳のお父さんが帰ってきた。

そしてまだ気持ちの整理がついていない長良にラジダニが最後に面倒を見る。

だが、父というのは案外何も言えなかったりする、そんなもんなのかもしれない。

ただ、その御蔭で長良は立ち直れた。

「ラジダニ。相談があるんだけど。」

「ロビンソン計画に追加したい項目があるんだ。」

まっすぐ明るい顔でそう言う。

「あぁ…」

「ああ!そうこなくっちゃ。」

ようやく、元に戻った長良を見てラジダニもあの頃(航海以前)の気持ちになったのだろう。6話でのディレクターズカット・コンビ最後の仕事だ。

そこへ慣れない感じでこっちに来る瑞穂。

作者の夏目真吾氏は「これテン」という番組にて、登場人物のベースはマンガ「ピーナッツ」から来ていて、瑞穂は「スヌーピー」と仰っていたが、そんな感じに見えた。

SonnyBoyというタイトルも案外、Snoopyのもじりだったりするのかなと妄想したりする。

「どうせ世界は変えられない。それなら。」

何を追加するのだろうか。それは12話でのお楽しみということだろう。今のところは何だかよくわからない。

そこから、また回想に入る。

呪われた夢を辿って帰る

打ち上げステーションにて、サターンⅤ型の全容が見える。

「うわぁ…アナログだね。」

「ハハハ、そうだねぇ、コレは人類を初めて月まで運んだロケットそのものだ。縁起がいいだろう。」

だが、何故ロケットで行く必要があるのか?世界をまたにかけるなら長良の能力だけで十分なはず。

それにロケットで行くなら、わざわざ組み立てる必要もなく、現在のアメリカにある発射場とロケットをそのままコピペすれば済む話である。

そこまでは流石にネコの力では出来ないのか?でも宇宙へと行く手段なら確実にラジダニの能力アイテムだけで行けそうな気もする。

「ネコのコピーは確率まで再現する。それに上はもっと原始的だ。」

現在のスペースX・クルードラゴンのような液晶パネルだけのコックピットではなく、トグルスイッチまみれのコックピット。

デジタル化が進んでいないアナログ設備の塊のことを差しているのだろう。

だが、説明の通りコピーは確率まで再現すると言っている。

監督が仰る「量子論を知っていると更に面白い。」から量子力学の確率について考えてみる。

ミクロの世界での物質は、物体か波かその状態を確定できなくなり、確率で状態を表すしか無い。

だが、観測者が観測という名の干渉を行うことで状態は決定される。

つまり、その世界の根幹とも言える確率が現実世界と漂流世界で一致するというのならば、それこそがこの世界への帰還の手がかりになるということだろう。

サターンⅤ型で月面有人飛行した際、その成功確率99.999999%(シックスナイン)を担保できるまで設計にもしもを備えた保険装置が組み込まれている。

そうしてサターンⅤ型のミッションは成功した。そこには多大な人の労力が関わっている。

だからこそ、自分たちでその足跡をなぞり、曲がりなりにも自分たちで作り上げる必要があったのかもしれない。

今回は帰るための準備なので、どうしても現実における先人の遺物を辿ることが大事だったのだろう。

そのために、RAF B.E.2からサターンⅤ型へと連なる"戦争"が絡まる呪われた夢というテーゼを織り込む必要があったのだと推察する。

この自分の中の”戦争”が絡まる世界を手立てに、元の世界に帰るために。

一抹の不安

場面が再び切り替わり、部屋にて瑞穂がおそらくラジダニが遭遇したであろうタコのスケッチを見つめている。

あらゆる物が記載されていますが、それは作中では語られませ〜ん。

ただ、その答えは作中にちゃんとあるなとは思う。

「瑞穂はなんで帰ろうと思ったの?」

「私は…やりたいことがあるから。」

やりたいことがあるがそれが何なのかは分からない。やはり形ある理由が見えてこない。

一般的な物語構造で言えば、作品の乗りどころとして登場人物の動機づけ、欲求を描くのだが、本作ではあえて本人しか分からない理由で動機を構成している。

隅々まで人物としての描写を徹底する本作は、普段見てきたアニメや映画の色眼鏡を付けて見ると不可解な点だらけになると思うが、一人の高校生として見ると腑に落ちる部分が多い気がする。

「猫たちはもう向こうでは生きられないよ。」

ラジダニは瑞穂にも本当のことを問う。それは長良にとっての希よろしく、瑞穂にとってのネコはそれほどまでに失い難いものなのだ。

「うん…分かってる。」

視線の先の猫たちは悲しそうだ。ただ、ゲンとトラが尻尾振ってるのかわいい。

「実は元の世界には簡単に帰ることが出来るんだ。」

だとしたらロケットやらロビンソン計画も本当は必要ないのかもしれない。

だが、敢えてそうすることに意味がある。

そして、出発前夜にカレーを用意するラジダニ。

「ただ、それには覚悟と犠牲が必要だ。」

ここでサクラに話しかけるようなカット。

覚悟とはこのぬるま湯とかした世界の未練を捨てる。犠牲とは過ごした時間であろう。

未練を持つと現実を生きられない。漂流世界はバケーションのようでいて、いつまでも居ていい場所ではないのだろう。

「過ぎた時間は取り戻せない。でも、君たちはまだ間に合う。」

つまりこの世界と連なってるから、時間がすぎるとどうにもならない。

そして、ヤマビコと同じく「まだ間に合う。」と告げるラジダニ。

数千年生きてしまったものはもう帰ることができない。おそらくそのまま現実世界で数千年先の未来へ送られてしまうからだろう。自分は塵すらも残らない。

だから、もうここしか居場所がない。

今度は瑞穂に切り替わる。

「だけど、ただ帰るだけじゃないんでしょ。」

だからこそのロケット、ロビンソン計画。

今まで世界探索を続け能力遺物を集め続けた長良。

そうして、自分が居なくなると存在を保てなくなる世界にて、それでもこの漂流を無かったことにしたくないと決意した長良が取る選択。

それが何なのか分からない不安定要素として残るのかもしれない。

「ああ、長良は…」

そこへ長良がタイミング悪く?帰ってくる。

「遅くなって、ごめん。」

「これで準備は整った。」

長良の顔は自身に満ちている。

瑞穂は長良を見ている。そこから、ちょい眉を動かして懐疑的なのか「大丈夫か?」という感じの表情をする。

これは最終回で、瑞穂と長良に何かしらのひと悶着があったりするのかもと思わせる一幕だ。

ラジダニの表情も明るくならないのも、表情の動きでは見せないがそういうことなのだろう。

「いよいよ、明日だね。」

お別れ

そして、回想が終わり再び打ち上げ場に。

ロケットを組み立て工場から発射場まで持ってきたのだろう。

それを見ていたラジダニが振り返って

「僕はもう十分だ。みんなとここに残るよ。」

最後の別れをする。それは二人と最後に居られた時間ももうこれで悔いはないということなのだろう。

「もし僕に合う機会があったらよろしく。」

そうして握手する。もう一度会うラジダニは1話のように好奇心旺盛で純朴な中学生だろう。

「うん、わかった。」

そんな二人のやりとりをサクラが見てる。

セリフは無いが、毛無しとして見下していたころと変わり、二人の成長を認められるようになったのだろう。

「これ」

青い手提げを渡す。ネコを持ち歩くようのバッグか。

「ああ、まかせて。」

最後にやまびことお別れ。

「今までありがとね。」

抱き寄せる瑞穂。こだまとの関係ではなかったものがここではあった。

「くぅ〜ん。」

長良は頭を撫でる。8話で「やれるさ。」と言って手をかけてくれたように、最後に手をかけてあげる。

「やまびこも元気で。」

次に、ゲンとトラを抱き寄せ、

「サクラ、じゃあね!」

「私もう行くからね!」

最後まで凛とし、何も言わぬサクラ。今回、動物たちは本当に何も言わない。

そしてエレベーターで登る途中、

「私、ネコを捨てたんだ…」

サクラの心が分からないが故に、うつむいてしまう瑞穂。

旅立つ不安感を裏付ける、捨ててしまったという自責。

「ネコたちも、僕らと同じ気持ちのはずだよ。」

時々入る長良とサクラのカットから察するに、サクラが色々と長良に世話を焼いてくれて、その気持ちを長良は汲み取っていたのだろう。

そうして、瑞穂を励ます長良。

「サクラも見守ってくれるかな。」

そして、サクラもまた、窓から顔を覗かせずっと瑞穂を見つめていた。

それを見ているラジダニ。離れて見えないけど、信頼できるからきっとそうなんだと思える関係がある。

全ての先人へ

「発射15秒前、起動電源船内へ。」

船内への搭乗も終わり遂に発射目前。

緊張する二人。手を添える長良。飛行機初めて乗るときは怖くて隣の人の腕掴んだなあと述懐。

腕には希のコンパスが…

実際のミッションでは3人体制で、月軌道周回船に一人、月面探査船に二人でミッションを行うが、今回のぞみはいない…

それは月まで行く必要がないことを示すかのよう。

「12,11,10,9,イグニッションスタート!」

そして、発射シークエンス開始。

液体燃料を飛ばすには、ガスを温度-100℃以下まで下げて液体にしないといけない。

そのあまりの低温に、周りの水蒸気が冷やされ氷の膜になる。

それが発射の衝撃で剥がれ落ちていく。

これは「王立宇宙軍」で驚異の作画枚数で描かれたシーンでもある。

発射する際のロケット全体を映す構図も「王立宇宙軍」っぽい。

王立宇宙軍ではロケットを飛ばすことを自分たち(ガイナックススタッフ)のアニメ作りとリンクさせるという完全な私小説作品として成立させた映画でもある。

だが、今作ではその肝心のチーム一丸となった挑戦といった熱はひとしおで、全ての工程が能力で自動化されている。

そもそもが3人で出来ることではない。長良・瑞穂の今回のプロジェクトにおける貢献度はどう考えても少ないわけである。

しかも宇宙へと行くだけなら、確率の模倣をせずにラジダニの能力で簡単に宇宙へ行ける最新ロケットを作ればいいだけである。

なのに何故、今回あえてレプリカを作る、模倣をする必要があったのか?

それは先程述べた「帰るための準備だから、どうしても現実における先人の遺物を辿る必要があった。自分の中の”戦争”が絡まる世界を手立てに、元の世界に帰るために。」と合わせて、ここからは完全な妄想だが、この作品の私小説としての試みというのも同じく、「王立宇宙軍」という先人の偉業にあやかっているのかもしれない。

葬式と同じく、送り出すために必要な儀式がこのロケット発射、ロビンソン計画だったのかもしれない。

葬式とは、先人を送ること、その先人の連なりとして複葉機からロケットまでの流れがある。

それがラジダニの言う「覚悟と犠牲」ということなのかもしれない。今回、葬式とロケット発射は不可分の関係だったことが分かる。

大量の鳥がロケットの轟音を聞いて学校のそばを飛び回る。

そうして、漂流地点のベースキャンプ、島の全体図を見せながら、この世界から飛び立っていく瑞穂と長良。

Gがかかる。

1段目の分離が終わる。

「無事、発射台までの起動に乗ったね。」

それは、ロケットの発射台とは別に、もう一つ宇宙に何らかの発射台があることを意味しているのだろう。

それが何なのか、誰が用意したのか、いつもながら説明はないが最終回で分かるのだろう。

「僕のサポートもここまでだ。」

ここで、音声がヘッドホンで聞こえるようなフィルターがかかる。

「幸運を祈る。」

宇宙服、船内、全てが60年代仕様だからか、ヘッドセットもこの当時のオーディオ品質で、少し高音がかった音質になっている。

「了解、さよなら、ラジダニ。」

遠くへ行ってしまう二人。それを見つめ続けるサクラ。

だから僕らはやっていける。

「うぅ〜ん、さてと。」

目視できなくなって、見送りも済み、ラジダニは自分へのプレゼントを確認する。

「ん?これは…」

「病は気から」と書かれたラジダニの肖像。

希の遺影を入れた額縁から贈り物への転換。

この世界での死は、自身の心の腐敗でも起きるのだろう。そんなどこか死にかけなラジダニの本質を突く1枚を送る瑞穂。

それを受けて目が輝くラジダニ。

「瑞穂かぁ〜」

「じゃあこっちは…」

そうして取り出した袋の中にはサル毛玉が…

瑞穂から長良という流れで、病は気からサル毛玉ということで、こころの不安を乗り越えるアイテムとして7話でやり取りしたサル毛玉が。絵画と毛玉、2つで一つのメッセージを持っている。

サル毛玉は、どんな状況に置かれても匂い(本質)が変わらないということを示す。

まさしく希のコンパスのような能力遺物なのである。

ラジダニは7話でそれを長良のために贈る。世界を絶え間なく移動できる長良が自分を見失わないように。

そうして託したサル毛玉が、今度は長良から託さた。

「あぁ…!」

察するラジダニ

「ふっふっ、何の意味もないこの世界だけど、でも時折素敵なことが起きる。」

いつの間にか、虚無に陥って心が死にかけていたラジダニ。

そこへ友人から、「病は気から」、「どこにいても本質は変わらない」この2つのメッセージを受けて、おそらくラジダニはようやく、7話で自己の立ち直りを求めて旅立った航海の答えを得たのかもしれない。

やまびこ、ゲン、トラは先程のカットとは打って違い、大きく目を見開いてサル毛玉を見ている。(ロケットのときは見えなくなるともう見てない。)

サクラや鳥も、皆の目が長良の贈り物に集まっている。

つまりここにいる全員にとって、そのメッセージが救いとなったのだ。

そうして、ラジダニはここにいる全てのものたちの声を代弁し

「だから僕らはやっていける。」

そう告げる。7話から10話までかけたストーリー展開はこのためだったのだ。

そうして、今回動物たちが一切喋らなかったのも、この場の共感・一体感を見せるために敢えて何も言わなかったのだろう。

現実世界でも、漂流世界でも、どんな場所でも生きていけるという時空を超える肯定感がここにはあると思う。

だからこそ、このセリフはどこまでも重い意味を持つ。

そうして、もう一度サクラは振り返り、宇宙船に向かって

「みゃ〜お」

と恐らく「ありがとう」とか「お元気で」といった色んな意味をもたせたことを言ったのかもしれない。

そうして、二段目切り離しまで終わり、月軌道周回選+宇宙船の状態(裏返しドッキングまで終わってる)から二人は外に出る。

切り離しまではラジダニが手伝い、それ以降のオペを二人でこなしていたことが分かるカット。長良と瑞穂も同じくやってみせるわけである。

ここでEDが流れるのがたまらない。

雲ひとつなく、果てしなく同じ色の海が続く世界を見つめる二人。

1話では真っ黒から青い海へと移動した。そして12話では青い海から真っ黒な宇宙へ移動した。

まるで時間が段々と巻き戻っていくかのようだ。遂に終わるのだなと実感させられる1枚だ。

そこで恐らく長良が瑞穂に、ラジダニが作ったU字磁石のアイテムを使う合図をする。

そうして二人は手をつなぎながら能力で上まで駆け上っていく。

そこには果ての見えない棒の先端に観覧車のカゴがくっついていた。

これがラジダニの言う発射台なのだろう。

そして、自前の鍵を持ち出し、扉を開けて中に入る。

すると校長が窓から外のヒカリを見つめるカットに切り替わる(ホコリがきらめくのも細かい)。

そして引きで校長室?のアップになると、若干下を向く校長。

ついに校長と対峙するときが来たのだろう。だが、校長は外にも出れずに部屋で一人、ヒカリを眺めている。

再び観覧車のカットに切り替わると、二人は向かい合って、宇宙帽を取り外している。

その間には、希のコンパスが漂う。

そのコンパスは上を向いている。長良もまた上を見つめてEDに入る。

すごい開放感と言うか、希望に満ち溢れてる感じがする最高のEDだ。

完全に振り切ったというか、「だから僕らはやっていける。」からの長良がどこまでも前を見つめるその傍らに、絶対向きの変わらないコンパスが上を向いているという力強さを見て、画の持つ底力を改めて実感させられた回となりました。

自分の中の戦争

そんな感動がある程度おちついた後、どうしても目に入ってしまう他の人の意見というものに目が行ってしまう自分がいた。

だけれども、よくよく考えれば、自分もいろんな作品にケチつけてるよなと。

つまり、裏表のように、作品にケチをつける自分と作品を肯定したい両方の自分がいる。戦争がいるんだと気づく。

その戦争とはそういう肯定したいものに対する否定ということなんだろう。

作品を肯定というか、それで何かが変われたと思いこんでいる自分に対して、

・そんなことないんだどうせ同じ毎日を繰り返すだけだ

・そんな無駄に考察してバカじゃないの、

・こじらせ過ぎ、のめり込みすぎて盲目的だ

自分の内なる声や色々見かけるコメントに対して

自分が良いならそれでいいじゃんと思えないというか、

サイトの高評価とかそんな数字なんて自分が良いと思ったものには関係ないんだとか色々な理由をつけて守ろうとしたりする防衛本能なのか

きれいな思い出が汚れるといったらいいのか。

或いは、それは自分も感じるところがあるからこそ、そんな気持ちに蓋をしようとしてるのか。

多分色々そんな感じがするから嫌なのかもしれない。

だが、それは僕が色んな作品に放った言葉だってそうなんだ。

だから自分は自分で試しているような気がする。

監督は「3割の人に深く刺さればいい。」とアニメージュで仰っていたが、

それで納得してしまったら自分の中で驕りになりそうな気がした。

わからない人を切り離した瞬間からその人を自分の中で存在しない可能性にしてしまう。

と考えて、でもそれはそれで仕方ないとか色々考えて、答えのない袋小路にはまっていく。

そうして、考えていた折、僕は気づいた。そうか、8話で見せたやまびことこだまと戦争とは

やまびこ・長良=視聴者の肯定感

こだま・希=作品そのもの

戦争・瑞穂=視聴者自身の猜疑心

の象徴でもあるのではないかと個人的に思った。

つまり希はいつかいなくなることはこの作品とお別れの瞬間にある。それに対して絶えず肯定と否定が自分の中にある。

それはどんなことにも言えるのかもしれない。自分が好きな作品や嫌いな作品も。だからこそ悶てしまう。

そこからどう立ち直れるか。人生に悩みをえてして持ってしまったモノがこの作品とともに漂流した。

そうして、回を追うごとに世界を知ったような気分になるがそれはどこまでも空虚で徒労なモノなのかもしれない。

だが、そんな瞬間で垣間見えるサル毛玉のような何気なかったり心動くシーンがある。

だからこそ、自分はやっていけるのではと思えたのかもしれない。

ラジダニのようでいて長良でもある。色んな考えが一つになっていく。

それが外への帰還の鍵だったのかもしれない。

「だから僕らはやっていける。」













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