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起業時にやった事務作業

「行程さん」という旅行のしおり共有サービスを作り、2017年に公開、2018年に起業、2020年に廃業しました。その2018年に起業したときのことを残しておこうと思います。起業する際の参考になれればくらいの位置付けです。

2018年7月 連絡

株式会社ムーブメント(以下、ムーブメント)にて行程さんを開発し、2017年7月にリリースしました。その1年後、投資家の方からムーブメントに連絡がありました。

2018年8月 方向性の確認

投資家(俗にいうエンジェル投資家)の方とお会いし「行程さんのサービスで起業する」ということに向けて実際にどういった形を取るのがいいかを、ムーブメントの社長と相談。この段階では、ムーブメントの社長が新会社の社長になる想定でしたが、私が代表取締役社長になることになりました。理由は、開発者であることと、その開発への熱意や想いがあることが理由です。

このあたりからいろいろ本を読み勉強をしていました。

2018年10月末 退職時期

落ち着いてきた4月くらいに起業すればいいかと感じていました。しかし、退職時期(というより起業時期)は早めがいいらしく、この旅行業界で様々なサービスが出てきた今、起業することに価値があり今しなければいけない理由があるなと感じ、10月末で退職をしました。

2018年11月 起業の準備

11月になり、起業の準備をします。

人生最大に予定が詰まった月でした。すべての日になにかしら予定を書き込んだのは人生で初めてです。起業の準備があるにも関わらず、LT(ライトニングトーク)を行ったり、登壇をしたりしていました。しかも引越しの準備もありてんやわんやでした。

判子の作成

会社設立時に判子が必要です。よくあるのが、下記の3つです。

・会社実印(代表者印)
・法人銀行印
・法人角印(会社印)

これにプラスして認印や住所印などもありますが、とりあえずこの3つを作りました。会社実印は法務局での設立登記をする際に必要です。契約書などの重要度の高い書類に対して使用します。

会社として必要なのはこれらだけで足りますが、個人として「実印」が必須です。今まで作る機会がなかったので今回作成しました。特になんでもいいらしいのですが、実印として役所に登録しなければならないため百円ショップなどで売っているようなものは避けます。作成後役所に届け出ます。

2018年11月 オフィスレンタル

新宿でオフィスを借りました。オフィスは、賃貸のところではなく個室のあるビジネス用のレンタルスペースを借りました。幅1メートル、奥行2メートルほどの小さな個室です。

・初期費用が抑えられる
・登記ができる
・会社が実在することが伝わる

オープンアドレス制ではなく個室のあるレンタルスペースにした理由は、銀行からの融資を受けるときに会社が実在することが伝わりやすく審査を通る確率が上がるそうです(レンタルスペースでもいいという噂も聞きましたが)。銀行からの融資、つまりお金を借りるのですが、近年は「日本政策金融公庫」というものがあり「無保証・無担保」でお金を借りることが可能です。

レンタルスペースを借りたときは個人で借り、その後法人に切り替えます。

会社設立 freee

会社の業務の補助的なサービスを提供する「freee(以下、フリー)」には、下記のものがあります(結果的には全部使いました)。

・会社設立フリー
・会計フリー
・人事労務フリー
・社会保険加入フリー(登記した直後に一度だけ使う)
・マイナンバー管理フリー(管理するだけ)

この中の「会社設立フリー」を使いました。

必要事項入力

会社設立フリーで必要事項を入力します。会社の名称などを記入していきます。しかし、埋める項目をどうすればいいのかわからず、一項目埋めるのにも数時間かけて調べるような感じでした。

設立書類用意

・行政書士提出用の定款
・発起人全員分の印鑑証明書の写真データ
・実質的支配者となるべき者の申告書
・顔写真付き身分証明書

「行政書士提出用の定款」は会社設立フリー上で必要事項したあと、WordとPDF形式でダウンロードできます。私の場合は、「平成」となっているところを西暦にし、会社の称号の英文を追加という変更を加えました。

それと「発起人全員分の印鑑証明書の写真データ」を行政書士の方に提出します。ウェブ上で完結します。

設立時には私の他の発起人(株主)2人分の印鑑証明書を、面倒ですがそれぞれの方に役所に取りにいってもらいます。私は印鑑証明書を取得するために実印を登録するところからやりました。

「実質的支配者となるべき者の申告書」は、2018年11月30日から新たに提出しなければいけないものでした。会社設立フリーの説明だけではよくわからず、公証役場の人、東京法務局新宿出張所の人に聞きましたがよくわからないと返されました。結局、フリーに電話をして聞きました(フリーの人が一番よく知っていました)。あとは自分で調べたりして、Wordのテンプレートに入力しました。嘱託(しょくたく)人の欄と公証人の欄は特に記入せず提出。

2018年12月11日 公証役場

12月10日と11日に、株主2人のところまで行き、個人の実印を押してもらいます。そして指定の公証役場に定款を持っていきます。

公証役場では、「定款を持っていく」「定款を受け取る」の2つのことをします(ここが初めよくわかりませんでした)。持っていくのは、実印が押されて承諾されたことがわかるものを持っていき、もらうのは認証後の定款。CD-Rに焼かれたもの(CD-Rは買って持っていきました)。そして、印刷されたもの2部。2部は会社設立フリー経由の行政書士の方が指定した部数。

数十分で終了。かかった費用は、51,900円。定款の認証自体は5万円。

2018年12月11日 資本金振込

私個人の口座に、私も含めて資本金を振り込んでもらいました。私は、別の私名義の口座から振り込みます。そうすることで通帳に記帳されます(同口座へ振り込む方法もあるのかもしれませんが)。

振り込んでもらう日付は、定款認証日以降会社設立前ではないといけないため、事前にお願いしておきました。

2018年12月12日 東京法務局新宿出張所

東京法務局新宿出張所には、予約を入れて行きました。公証役場に行く前に予約したため、公証役場で不備があった場合どうしようと思っていましたが、無事に認証されたので、予約どおりに事を進めることができました。

収入印紙売り場があるので、事前に東京法務局新宿出張所で購入し、提出用紙に貼り付ける。印紙代は15万円。何度も見直す。

こちらは、相談できるカウンターがあり、そこで見てもらう。おそらく自分自身で書類を作成している人は数十分とかかるのだろうが、私の場合は数分で終わりました。相談カウンターとは別のところで提出をします。

この日が会社設立日になるのですが、本来であれば退職した次の月の11月に起業する予定でした。ですが、12月の頭に引っ越す前に起業すると、引っ越し後に様々な書類の変更があるので引っ越し後の12月に手続きを済ませました。

創業者株主間契約

創業者(つまり出資者、つまり発起人)の間で契約が交わされます。会社に関わらなくなったら他の株主が株を売り渡すことができるとか、秘密を守ってねとかそういう契約です。

事業譲渡契約

今回の起業の場合、ムーブメントからスピンアウトする形になるため、「行程さん株式会社」が「株式会社ムーブメント」から事業譲渡を受ける形を取ります。

クロージング日、瑕疵担保責任、またムーブメントは似たようなサービスを作っちゃダメだよというようなことを取り交わします。

株主間契約、投資契約

ここで設立後初めての出資者(投資家)が入ることで株主が増えます。株主間契約と投資契約が交わされます。これで株主は私以外に三者。

出資者的には、「お金を入れるので、こういう権限が欲しい」ということが書かれています。譲渡はどこまでできるのか、買収されたときにはどうするとか、こういう場合は投資者の承諾が必要だとか、こういう場合は知らせてねとか。

株式保有率が高くなくても、一部の事柄をある条件下では拒否できることも書かれています。これはけんすうさんが以前に記事に書いていたことでもあります

契約書類は面倒ですが、事前知識を入れつつ、一字一句すべてに目を通しました。不明なところは紹介していただいた弁護士の方に相談したり、あまりに不利になりそうな条件等は変えてもらったりしました。

創業後すぐにもらう書類

登記が完了したら、東京法務局新宿出張所に出向きました。登記の完了の連絡はないですが、いついつまでに連絡がなければ登記が完了しているという予定がわかるので、その完了するときに行きました。

・履歴事項全部証明書(登記簿謄本) 5枚
・印鑑カード
・印鑑証明書 5枚

10枚合わせて5250円。結果的に、もらってから2か月の間に、それぞれ3枚ずつ使いました。

「登記簿謄本」という言い方は古い言い方らしく今は「履歴事項全部証明書」としてもらいます。

銀行口座の開設

紹介してもらったみずほ銀行で開設。2日後に口座番号を教えてもらえるというスピード感でした。通常であれば審査が入るので1か月近くかかるものだと思います。

新宿年金事務所

通常は社会保険事務所というところなのかもしれませんが、私が行ったところは新宿年金事務所の4階です。

下記の書類を提出しました。

・ 健康保険・厚生年金保険 新規適用届
・ 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
被扶養者(異動)届

3つこれらに加えて、

・履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
・レンタルオフィスの契約書

を持っていきました。レンタルオフィスの契約書は、登記された住所が足りないため(下記参照)、補足資料として提出しました。提出しにいった、というよりも相談しにいって、大丈夫であればそのまま提出しようという感じでした。不明な点は印をつけて持っていきました。

登記の住所を番地までにした場合

定款には、

(本店所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都新宿区に置く。

と記載しました。これは会社設立フリーで、新宿区より後ろに記載があっても自動的に「新宿区」まで入力されるものです。

登記時の住所、つまり履歴事項全部証明書に記されている住所は、番地までなっています。これは会社設立フリーで番地までしか入力していないためです。

本店
東京都新宿区西新宿七丁目2番

さて、これで特に問題はないはずなのですが(参考リンク:http://dennsiteikann.click/?p=47)、今後いくつかの書類にて履歴事項全部証明書どおりに入力する必要がある書類があります。つまり「番地まで」を記入することになります。具体的には、「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」等を提出するときと、銀行を開設するときに必要です。この書類に関しては、レンタルオフィスの契約書のコピーやPDFを送る等で対応できました。

税務署に届け出る書類には、履歴事項全部証明書を添付しないため、所在地を郵便物が届く住所にしたほうがよさそうです。会社設立フリーで番地までしか入力していない場合は、書き換えが必要そうです。

番地までにしている理由は、建物の名前が変わってしまったがゆえに住所を変更しなければいけないことを防ぐ理由からなのです。ウェブで検索しても同様の意見がありますし、創業時のアドバイスとしてそのようにしたほうがいい旨を言われました。しかし、正直なところ、何十年もそこにいる可能性が低いのであれば、正確な(郵便物の届く)住所のほうがいいのではないかと思います。なぜなら、書類に住所を書くたびに「この書類にはどこまで書けばいいんだっけ?」と迷うことがないからです。

2018年12月27日 新宿税務署

新宿税務署はたくさん書類を持っていくところです。

耐震工事のためか、会社設立フリーに記されている場所ではなく、小田急第一生命ビルに移動していました。階数が分かれているのですが6階の受付に行くとそこで合ってました。

・法人設立届出書
・株主名簿
・青色申告の承認申請書
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
・設立時貸借対照表

これらに加えて、

・定款のコピー
・「法人設立届出書」「青色申告の承認申請書」「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の控え

を持っていきました。控えは会社設立フリー上から出ます。

特に悩んだのは、住所をどうすればいいかですが、郵便が届く住所を記載しました。この書類を吐き出すために会社設立フリー上で住所を書き換えました。

行って簡単なチェックをしてもらって渡して判子を押してもらって終わりでした。コピーは取ってもらえないので控えを持っていき、控えにも判子を押してもらって返してもらいます。

2018年12月27日 新宿都税事務所

新宿都税事務所もすぐに終わりました。

・法人設立届出書
・定款のコピー
・履歴事項全部証明書(登記簿謄本)

を持っていきました。「登記事項証明書のコピー」は持っていったか忘れました。

設立の形態は「その他(新規に事業を始めるために金銭出資により設立した法人)」としました。

事業種目は「その他(情報通信業)」としました。日本標準産業分類のようなものを参考に書くというわけではなく、定款に記した代表的な種目を書けばいいそうです。

法人設立届出書はコピーを取ってもらえました。

健康保険・厚生年金保険保険料口座振替納付(変更)申出書

・健康保険・厚生年金保険保険料口座振替納付(変更)申出書

を銀行へ持っていきました。社会保険(健康保険・厚生年金保険)を口座振替するためのものです。

2019年1月 顧問税理士探し

私もよくわかっていないですが、税金のことやお金のことは税理士。給与計算や社員を雇うときのことは社労士。諸々書類の作成や提出をするとなると税理士、とりわけ顧問税理士はほぼ必須とのことなので、申告のときだけお願いするのではなく顧問契約をしてくれる税理士を探します。

下記のことを要件としました。細かい要件は話を聞きながら調整。結果的に下記の条件をすべて満たしたところではないのですが一社に絞りました。

・会計フリー、人事労務フリーが使える
・社労士的なこともしてくれる(入社時の手続きや、給与計算など)
・確定申告、年末調整を行ってくれる
・電話か他の手段での連絡可能
・定期的に訪問して相談にのってくれる
・最初に会計フリー、人事労務フリーの使い方を教えてくれる
・領収書などの入力代行が可能(ただし値段によりなくても可)
・年間の料金が30万円前後

クレジットカード

ウェブサービスなど、クレジットカードで支払うものも多くなるため、会社として持っておいたほうがいいと思い下記の条件で探しさっそく作ることにしました。

・年会費があまりかからない
・盗難保証
・フリーと連携可能
・VISA

盗難保証はおそらくほとんどのクレジットカードであるっぽかったです。VISAのカードを個人で持っているため、会社のものはマスターカードで作りました。年会費が無料の代わりにポイント等がつかないところです。限度額は、高くなればなるほど年会費も上がるようです。

VISAやマスターカードは、起業したてはまず作れない、ということをある税理士の方から聞いたのですがなんの問題もなく作れました。限度額30万と少なくしたからなのかもしれませんが、本当のところはわかりません。

保険証

・健康保険被保険者証
・日本年金機構からの適用通知書

適用通知書は7営業日後、保険証は10営業日後に届くそうですが、年末年始などをはさみ、約1か月後に届きました。

「健康保険被保険者証」には「健康保険の事業所整理記号」が記されています。実際には「記号」と記されています。58xxxxxxという数字です。適用通知書の事業所整理記号に「新② いろは」のように記されていますが、これが「58xxxxxx」に対応しています。「新②=58」のように対応しているみたいですなんだそれ。

「適用通知書」には「事業所整理記号」「事業所番号」等が記されています。「厚生年金保険の事業所整理記号」が欲しいところですがここのものを人事労務フリーの入力欄に入力はできませんでした。

決定通知書

「健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書」というものが20営業日後に送られてきます。

住民税の特別徴収

住民税は、普通徴収と特別徴収があり、後者が給与から住民税を徴収します。こちらは住んでいる役所に届け出を出さないといけないのですが、あまり理解していなかったため最初の自分の給与を振り込む前に気づきました。

税理士さんいわく、給与が支払われる前に処理しなければいけないものではないため、時間を見て役所に届け出を出します。もちろん税理士(社労士)の方にまかせても大丈夫ですが、今回は自分で申請しにいきました。

役所に聞きにいくと、去年度の分を6月から払い、それまでは普通徴収ということになりました。

今後は特別徴収で徴収したものを会社として、支払うことになります。

国民健康保険の異動届

こちらは抜ける手続きを忘れていたので、こちらも手続きをしにいきました。

子供の手当関連関連も同時に済ませました。

健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書

「事業所整理番号」「事業所番号」が書かれている。こちらも1月下旬あたりに届きました。

余談ですが、国民健康保険に対しての「社会保険」という場合と、健康保険と厚生年金保険を合わせて「社会保険」という場合があってややこしいです。

コーポレートサイトの作成

「行程さん」のサービスのサイトはあるのですが、会社としてのコーポレートサイトがない状態でした。HTMLとCSSと画像のみで静的なサイトを作っても良かったのですが、いずれニュースリリースなどを載せるとなると、WordPressなどのCMSでの作成が良いような気がしたので、テーマ探しを行いました。自分のPCに環境を構築し、テーマを探しては入れてカスタマイズして、使いやすいかどうか、求めていることができるか、簡単にできるかなどを検討していきます。数時間でできるかなと思ったのですが、意外と時間がかかってしまいました。会社設立前に作る予定でしたが結局設立後1か月以上経ってからでした。

特許出願の可能性

特許出願の可能性について、弁理士の方に会い話を聞きました。デザインや技術的には、現在のもので特許が取れる可能性は低いとのこと。ウェブサービスであれば計算処理が多いものは特許が取りやすい。儲からないと意味がなく、儲かってきてからが意味がある。そして大事なのが「非公開」であること。もしくは公開してから1年以内(意匠(デザイン)はまた別とのこと)。20年先をみすえたものがいい。

商標登録

商標登録はしました。ティラミスヒーローの件でも問題になりましたし、取っておいて損はないです。文字か画像かなど選べます。画像は後で変えるかもしれないので文字のみを取得しました。

株式会社変更登記申請

株式を発行し、出資を受け、資本金が増えると、法務局に登記申請をしなければいけません。株式会社変更登記申請書を作成します。

ググってもよくわからないため、電話で相談しました。法務局のサイトから必要な書類を教えてもらい、記載していきます。文書が長いですが、必要なもの以外を削っていくとそれほどの量はないかもしれません。

・株主総会議事録
・株主の氏名又は名称,住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト)
・取締役決定書
・募集株式の引受けの申込みを証する書面(株式申込証)
・払込みがあったことを証する書面
・資本金の額の計上に関する証明書

などです。

まとめ

以上が、会社設立時にやったことです。書き出してみると、かなりありますね。多分、私がやらなくてもよかったところもあると思います。

ところどころ忘れているものも多いです。それでもここまで細かく書けているのは、当時リアルタイムで書き溜めておいて公開するタイミングを逃していたからなのですが。

起業が初めてだと(大体の人がそうだと思うのですが)たいへんだと思います。もうやりたくない。

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