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2022年4月7日、『恋する』『ひとくずディレクターズカット版』別府ブルーバード劇場上映、舞台挨拶参加。映画の神様について考えたこと。


一昨年の11月、別府ブルーバード劇場で上映された『ひとくず』

4月7日、別府ブルーバード劇場で、改めて『ひとくず ディレクターズカット版』が上映されることになった。
ディレクターズカット版の別府での上映は、去年を含めて2回目。
心の準備無しに参加した一昨年の舞台挨拶有りの上映に、映画の熱量と、監督の作品への並々ならぬ思いに撃ち抜かれた『ひとくず』という作品。
今回は、出演者である木下ほうかに関しての報道もあり、色々タイミングが微妙な状況。
ただ、上西雄大監督初映像作品の『恋する』の上映もあるため、平日の非常に早い時間の上映開始であるが、参加することを決め準備していた。
ここでは、『ひとくず ディレクターズカット版』を取り上げて、作品から受け取ったもの、舞台挨拶に参加して感じたことをまとめてみる。


別府ブルーバード劇場、『ひとくず ディレクターズカット版』上映決定


一昨年の11月に『ひとくず』を別府ブルーバード劇場で鑑賞し、この作品に大いに心を揺さぶられた。
その時の舞台挨拶のレポもnoteにまとめている。こちらはネタバレ無しのレビューなので、まだ『ひとくず』が未見の方どうぞ。

この時は、期待も心の準備もせずに参加した舞台挨拶だったため、かなりの衝撃を受けた。
今回の上映も急遽決定。普段は上西雄大監督、古川藍さん、徳竹未夏さんのお三方が、かなりSNSで告知をされるのだが、『ひとくず』の上映も行うからなのだろう、告知もあまり目立たない、ひっそりした感じだった。


『ひとくず ディレクターズカット版』について

この作品、去年の夏にも別府ブルーバード劇場で、2日間だけの特別上映があって、その時の舞台挨拶で、ディレクターズカット版が制作されていること、制作にあたり、クラウドファンディングが開催されること、劇場で上映できるように動きたいこと等、上西雄大監督から発表された。
自分もこのクラウドファンディングに参加し、1ヶ月迷いに迷ったあげく、エンドロールに名前が出る、1万円の支援を行うことにした。
平日の夕方からの上映、告知もそんなに行わず、正直お客様の入りを心配したことをここに正直に告白します。

劇場での上映に触れる前に、『ひとくず』というこの作品、複数回作品を鑑賞する『追いくず』と呼ばれる熱烈なファンが大勢いる。
「同じ作品も何回も観るって意味が分からない」
と思う方もいらっしゃるかもしれないが、この作品『幼児虐待』がテーマなため、最初の鑑賞は、かなり構えて観ることになる。

ここから、ネタバレがあります!

この作品を初めて観るとき、全てのシーンでハラハラしてしまい、内容を良く吟味して観ることが非常に難しい。様々な伏線が、後から最悪の展開に発展して回収されるのではないかと、最初から最後まで心が休まらないのだ。
例えば、空き巣に入ったカネマサが、マリのためにその家のぬいぐるみを持って帰る。観客としては、それを観て
「あぁ~!」
「それやっちゃ、後から大変な展開になるよ!」
と思ってしまう。そういう最悪の展開へ導くかもしれない、エピソードのオンパレードなのだ。
本当にラストまで気持ちが落ち着かない。だからなのか、ラストを迎えた時の何とも言えない安堵感と、最終的に救われる内容に、張り詰めた気持ちが一気に緩み、余韻が想像以上に広がる。

そして、登場人物の描写が丁寧なため、色々な登場人物の視点で作品を味わうことができる。視点を変えて観る度に、この作品がまた違った印象を観客に与えていると感じる。
虐待を受ける側、過去に虐待を受けていた側、虐待する側、虐待されていることに第3者として関わる側… 何度も何度も観ることで、その全ての視点で物語を追体験することが、この作品が長く人々の心を離さない力なのだと思う。
各キャラクターもかなり心情を深掘りしており、考え過ぎかもしれないが『ヒロ』役の税所篤彦さん。セリフの言い回しが舌っ足らずで、滑舌がハッキリしていない。
それが演出で、彼は吃音がひどく幼少時イジメられていたため、役柄のような暴力的な人間になったのではないか? みたいな設定、演出を勘ぐってしまう。そのくらい、出演するキャラクターのひとりひとり、特に嫌なヤツ程存在が際立っている印象を受ける。

それに、1シーンの長さ、テンポがものすごく心地いい。何回観ても、映画を長く感じたり、ダレたりすることがない。
これは作品を編集する時の意識がかなり高く、非常に吟味して構成していることをうかがわせる。
今回で何回目になるのか、もう定かでない『ひとくず』と、初見の『恋する』を観るために、仕事を定時であがり、別府ブルーバード劇場を目指す。



『恋する』『ひとくず』上映、舞台挨拶参加


上映に間に合うか、かなり心配していたが、仕事終わりすぐに劇場に向かい『恋する』は、頭から鑑賞することができた。着替える余裕がないので、参加はスーツのまま。

『恋する』は、初見だったが『ひとくず』でも出演されている役者ばかりで、パラレルワールドを観ている様な気持ちになる。
そのまま『ひとくず』の上映に入り、『ひとくず』は、何回観てもその世界に浸れる作品の力を改めて感じた。
今回の『ひとくず ディレクターズカット版』は、元々のオリジナルを上映しているため、木下ほうか出演シーンに何とも言えない気持ちになった。

上映後の舞台挨拶は…
これは文字に起こせない。発信したら大変なことになる。
普段は舞台挨拶をメインにレポをまとめるのだが、今回は非常にデリケートな内容や、上西監督、10ANTSに係わる話を包み隠さず語られたため、形にすることは控えようと思う。
ただ、監督にとって別府ブルーバード劇場は、特別な場所なんだと改めて思う舞台挨拶だった。

このタイミングで『ひとくず ディレクターズカット版』オリジナルの上映を決めた、別府ブルーバード劇場、館主の照さん、マネージャーの実紀さんの懐の深さに感銘を受けた。

『作品に罪はない』

館主の照さん、マネージャーの実紀さんは、ディレクターズカット版オリジナルのままの上映を快諾したエピソード。上西監督、この下りを話す時に涙ぐんでいた。


『映画の神様』に愛されるということ


個人的な感想としては、『ひとくず』は、
「映画の神様に愛されているな」
とつくづく感じた作品だ。

2018年から、足繁くブルーバードに通い、様々な作品、役者、監督を見てきたが、確実に『映画の神様』に愛されていると感じる人達がいる。
そして『映画の神様』は決して優しくない。超ドSだと確信している。
人に届けなければならない、何か使命の様なものを持った作品に『映画の神様』は、試練や、困難を与える傾向が有るように思う。そして、それを乗り越えると、作品がまた新たに生まれ変わるように成長し、大きくなる…
気がする。

今回の出演者の件で、新たに『ひとくず』という作品がクローズアップされるはずだ。何かしらの決断を下し、この試練を乗り越えたら、再び『ひとくず』という映画に注目が集まると思う。

いい意味でも
悪い意味でも

だが、そうやって『映画の神様』は、自分の贔屓した作品を世に広めようとしているように思えてならない。
『映画の神様に、愛されるということ』
とは、そういうことなんではないだろうか?

2年前に観た、映画を覚えているだろうか? 
ましてや、つい最近まで上映が続いていた作品が、他にあるだろうか?
これから先も、上西雄大という人間が、映画に関わることで沢山の試練や困難が襲うかもしれない。
それは、きっとその作品を『映画の神様』が愛するが故だと思う。

「勝新太郎や、松田優作も、『映画の神様』に愛されていたなぁ」
と、映画と舞台挨拶終わりの帰り道、思いを馳せる夜になりました。



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