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ロンの声を恥じた瞬間

(会報コラム「ボーダーライン」第3号/2022.8)

そういえば20年のリーグ戦経験で、役満を打った記憶はおそらく2回ある。

一つはリーグ戦第1節早々、南3局で6巡目に仲林圭に打った親国士。
箱下3万点になったが、初節なのでこのときは成績を立て直すのに猶予があった。

もう一つは、ここで負ければAリーグ陥落という剣ヶ峰の最終節。
金太賢が7巡目にリーチ、場に2枚切れの白を私が一発で打ち上げて、これも国士だった。
私はその日初めての降級を喫し、A復帰に3年を要した。

金の方は覚えてはいないだろう。
いつだって、脳裏に焼き付くのは引導を渡した方ではない。
苦い記憶を拭えない側が、それを引きずるのが人間の常というものだろう。

かといって、金に恨みがあるとか苦手意識があるとかそういうわけでももちろんない。

ただ、強いなと。

金とずっと打ち続けて、掛け値なくそんな印象を持っている。

4月のA1リーグ第2節で、私は結構なトップ目から2回金にトップをまくられている。
自分自身でも、ああすればよかった、こうすれば違う未来があった、と思う局面はあるのだが、
やはり金が強くて、それが素晴らしかったのだという思いは変わらない。

そして6月25日に行われた第21期雀王戦A1リーグ第4節、1回戦オーラス。
点棒状況はこうだった。

東家・須田良規 35800
南家・飯田雅貴 11300
西家・金太賢  36200
北家・松本吉弘 16700

私より400点上にトップ目の金。
松本、飯田は離れていて、松本は飯田より5400上の3着目。

ここで、松本が3着取りの3フーロテンパイを入れる。

2mポン出しの打7sで、仕掛けと河から察するに6s雀頭のマンズの中ほどの待ちだと想像された。
36mか、47mあたりが危険といったところ。

ドラは1mなので1000点なのは間違いないが、現状私と400点差トップ目の金が松本に打つわけにはいかない。
そして私にこのテンパイが入る。

5p単騎のカリテンだったところから、松本に危険な4mを引いて亜リャンメン47mのリーチである。

リーチ棒を出すと金が松本に差し込めてしまうが、私にもマンズの中目は危険なので、それはできないだろう。

(47mの引き合いであってくれ──!)

祈りながらツモ山に手を伸ばす。
数巡後、私が持ってきたのは危険な6mだった。

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