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燕雀の志14

 武中進、という協会の選手がいる。
 第2期の後期入会、1980年生まれ。双子の競技選手として業界内では名前が知られている。兄は同じ協会の武中真である。
 武中はB2リーグになんと11年も在籍しており、仲間うちからは長く「B2の番人」と揶揄されていた。
 それが15期のB2で昇級、16期・17期でB1リーグを戦い、ついにAリーグまで昇りつめてしまった。今度の18期から、私も一緒に戦うことになる。
 協会に入ったころはまだ彼も大学生で、それからまっとうな企業に就職し、以来地道に競技活動を続けてきている。
 サラリーマンが競技麻雀と長年うまく付き合っていくこと、これは多くの選手にとって重要な課題である。
 我々は団体の名称こそ「プロ」の名を冠しているが、競技麻雀とはつまるところ趣味である。執筆や講師、大会運営、配信スタッフなどの仕事で幾ばくかの報酬を得ることはあっても、ほとんどの選手は、お金のために続けることはできない。ただ、これを趣味に徹していては、自分の目指す最高のパフォーマンスに到達できるかどうかは難しいともいえる。
 私のような雀荘従事者は麻雀に接する機会は彼らより多い。しかしこれも、人生の生活基盤としては賢明な選択とは言い難い。
 現在はMリーグという仕事の全てを麻雀に向き合える舞台があるにはあるが、競技選手全体の1%にも満たない稀有な存在しかそこにはいない。サラリーマンでかつMリーガーという園田賢選手などは、業界ではさらに夢のような人種なのである。

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