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東大を出たけれど21「金ちゃん」

 飯田橋のラーメン屋に勤めていた小柄な中年の男。金田という気のいいその客を、皆は金ちゃん金ちゃん、と親しみを込めて呼んでいた。
 ある日ラーメン屋の店主と揉めて店を飛び出し、いつも入り浸っていたうちの雀荘で働く事になった。四十男が容易く他所で再就職できるわけもなく、他に行き場がなかったのだろう。学生バイトだった我々に混ざって、尺寸の時給で細々と口に糊することを金ちゃんは選んだ。

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