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ミヒャエル・エンデの「モモ」がコンセプト、鎌倉の『亀時間』で感じる 豊かな時間

2019年の終わり。その数ヶ月前に初めて訪れ、とっても気に入ってしまい、ど〜しても、もう一度行きたかった『亀時間』へ仲間と訪れた。

『亀時間』は、鎌倉駅から海に向かって10分ほど歩いた先にある、古民家をリノベーションして作られたゲストハウスだ。日中には、カフェとしてもオープンしている。

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なぜ、また訪れたかったか?というと、なんでだか説明できない不思議な魅力(魔力?)がある空間だったからだ。

チェックインした私たちは、遅い時間だったということもあり、お店が閉まる前に『亀時間』から10分ほどの場所にあるカレー屋さん『香菜軒 寓(こうさいけん ぐう)』へ訪れた。

このお店も私が以前来てお気に入りになった場所だ。

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ここのお店には、「海老のカレー」もあり、以前から気になっていたメニューだったので、私と、もう一人はこちらをオーダー。

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「出退勤時間は自由」「嫌いな作業はやらなくてよい」という風に、パートの方達の働き方を変え、その働き方が『生きる職場』という本にもなったエビ工場の海老を、こちらの『香菜軒』さんでは使っている。ご主人は、この本が出る前に この本の著者で社長の武藤さんをご存知で、その頃からのお付き合いだと言う。

以前一人で、こちらのカレー屋さんに来たときは、ご主人と色々語って、1時間があっという間に過ぎてしまったのだけれど、「鎌倉は、お金だけのやりとりだけではない」ことや「オフグリッド」や「新しい経済」の話をしたり、有意義な1時間だったことを覚えている。
「鎌倉」って、なんか不思議な場所だな。そんな風に思ったのは、その日からだった。

積もる話を仲間内で語らい合い、夕飯も食べ終え、飲み物やつまみを買い込み、再び、あの不思議な空閑『亀時間』へ戻った。

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実は『亀時間』の話は、オーナーの櫻井雅之さんが本として出版されていて、事前に今回宿泊する友人も完読していた。友人は彼の奥様にも勧めていて、お二人とも感銘を受けたと言う。かくいう、私もその一人。

この日は、なんと、その著者である櫻井雅之さんにお会いすることが出来る!ということで、以前より滞在を更に楽しみにしていた。

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櫻井さんは、20代で世界を旅し、「語らう場」の大切さを知ったと言う。

「メインストリームではなく、オルタナティブでいたい」と言う想いから社会の接点として、ゲストハウス『亀時間』をオープン。8年経った今も、狙いは間違いなかったと仰っていた。人と人は、ちょっとした語らいの中で気づきがある。

それは、初めて私が『亀時間』を訪れた時も強く感じたことだった。
 初めて会う人。たわいもない会話。だけれどそれが、知らぬ間に深い会話になっていて、驚くほどの気づきがある。それは、この『亀時間』ならではなのかもしれない。だから魅了された人たちが何度も訪れる。

今や鎌倉には3〜40軒のゲストハウスがあるそうだけれど、『亀時間』は国内の中でもゲストハウスブームの先駆けになった存在。とりわけ、多くの人を魅了するのは、ミヒャエル・エンデによる児童文学の『モモ』がコンセプトになっていると言う点ではないだろうか。「時間泥棒」が人々から時間を盗んで行く。それを不思議な力を持つ少女モモが、冒険のなかで、奪われた時間を取り戻すというストーリー。主人公のモモを助けるカシオペイヤと言う亀から『亀時間』と言う屋号がついたそう。だからここには、時計がない。

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鎌倉のすぐ近くには、逗子や葉山がある。そこには「トランジション・タウン」という活動があり、それが『亀時間』の本の中にまとめられていた。グローバリゼーションの反対であるローカリゼーション(地域化)を目指しており、出来るだけお金も物も地域の中で循環できる社会を理想としている活動。入会金などはなく、情報共有するメーリングリストに加わって、集まりの参加を促される「ゆるやかな繋がり」。そんな繋がりが「活動」を形作っていく。コミュニティベースでの活動。

だけれど、資本主義の中で「理想」と「現実」を感じる時があると櫻井さんは仰っていた。それがこれからの課題なのだそう。

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今回の滞在では、ベルギー人のアレクシスと出会い、ベルギーという国の状況、彼が働いていた会社の話や、私たちの話を語らいあった。これから4ヶ月をかけて日本を始めとしてアジアを中心にオーストラリアなど世界中を旅するのだそう。

何かの会話の中で彼が言っていて印象に残っているのは、インスタグラムをやめたことだった。「なんで辞めちゃったの?」と聞くと「前までは、いつでも自分が何をしてるかってことを、インスタのストーリーにあげていたんだよ。でも、まるでインスタグラムにのせるの為の人生を送ってるみたいでね。やめちゃったんだ。馬鹿らしいってね。」

彼は、今回の旅の始まりを、なぜ日本にしたかと言うと、「謙虚さ」がある人達だと思ったからだと語っていた。

わたし達は、何に時間を盗まれているのか?アレクシスの様に立ち止まって、考える必要がある時代を生きているのかもしれない。

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櫻井さんは、『ムビラ』というアフリカ・ジンバブエに住むショナ族古来の民族楽器の奏者でもある。その楽器を演奏してくださった。
 例えることの難しい、純粋な音色。その音色を聴いている間は、まるで夢をみている様な気持ちになる楽器。

『亀時間』に滞在する間は「誰にも盗むことの出来ない豊かな時間」があったとおもう。

そんな時間が大切だから、きっと私はまたここを訪れるのだと思う。

そして、大切な友人にも、オススメしたい場所の一つだ。

この文章は、2019年に書いて、そのまま保存していたものでした。
実はとあるオウンドメディアで公開しようと画策していたのですが、お蔵入りに…

今回、オーナーの櫻井さんからFacebookで、とあるお誘いのメッセージをいただき公開することにしました。

なぜかというと!!!
2021年の4月で、開業10周年になり『10周年記念イベント-亀時間縁日-』を2021年4月24日(土)12時~17時に鎌倉の亀時間で無料開催するから!

せめてものお祝いの気持ちでこの文章を公開させていただきます。

湘南エリアにはこういった コミュニティベース の素晴らしい場所と素晴らしいオーナーさんがいらっしゃいます。

日々忙しく過ごしてしまうと忘れてしまう大切な気持ちを取り戻してくれる、こういった場所こそが『本当に豊な場所』だなと思うのです。

   開業10周年イベント「亀時間縁日」の詳細は こちら をクリック



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