歌野晶午「絶望ノート」

 歌野晶午は「葉桜の季節に君を想うということ」がベストセラーになって有名になったイメージです。作風からするとなんとなく若い作家さんなのかな、と思っていたのですが調べてみると1961年生まれ(!)ということで現在50代なかばのようですね。作風や文章に年齢は関係ないということでしょうか。ちなみに私は20代なかばですが、いかがでしょうか? せめて年相応の文章が書けていたら幸いです。

 本書は、推理小説としても学園モノとしても楽しめる良いエンタメ小説かと思っています。ラブコメ要素もあり。少なくとも、5、6回は声に出して笑ってしまいました。全体的にはシリアスなんですがね。シリアスを形どっている要素と流れを笑いに転嫁してしまう技量は素晴らしいと感じました。単に私が「この部分は雰囲気的に笑っちゃうと不謹慎なところだけど、笑えるように書いちゃえ!」的な演出が好きというのもありますが。

 前半は主人公である太刀川照音が学校でのイジメに苦悩する描写が多いので人によっては読むのが苦痛かもしれません。かくいう私も学生時代はイジメ問題に悩んでおりましたが、なかなかリアリティを感じる描写だったと思います。逆に小説に深く入り込めるから好都合かも? というのは不謹慎でしょうね。まあ、全部読み終えてからの感想は前半部とは大きく異なったものになること請負いですので途中まで読んでみた方は是非最後まで読んでみてほしいものです。「ネタバレしたら面白さ半減」的な要素もある小説なので、この文を読んでいる方がいずれ本書を手に取る可能性を考えてあまり内容には触れませんが個人的には国府田さんのキャラクターが好みでしたね。前述の声に出して笑ったというのは主人公と国府田さんのパートが多かったと思います。あと、あるミュージシャンに関する情報がよく会話に出てくるのですが、それも印象に残りました。主人公の名前から察した人はなかなかマニアックな方かと思われます。ある意味、そのミュージシャンがこの小説のテーマになってるのかも。正確にはそのミュージシャンが作曲した曲の歌詞。

では、このへんで失礼します。

#読書感想文



この記事が参加している募集

読書感想文

最後まで読んでくれてありがとー