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”ヨシノ”のこと

7月某日
某神社へお参りに行きました。
この神社には、事あるごと・・・というか、「行きたい」衝動にかられては、たびたび訪れています。
一般の参拝者でも、時間に間に合えば神職の方と一緒に朝拝をすることができ、”せっかく”なので、朝拝を目指して行くことにしました。
”せっかく”というのも、私自身の節目を迎えるときで、そんなときだからこそ、良い気をいただきたいと思ったからです。

もう少し早く出ればよかったかな…。
そんなことを道中で思いながらも、途中の休憩はきちんとして、急ぐようで急ぐでもなく車を走らせました。
早朝と言っても、真夏の朝。
すでにしっかりと明るくて、時間の感覚が分からなくなるほどでした。山間の明るさに朝も昼もないかもしれないと思ったのは、光が射す範囲や時間が限られているから、平地よりも柔らかく、そして太陽を少し遠くに感じるせいかもしれません。

そんなこんなで運転をしていると、その地域の中心部に差しかかり、車も増えてきました。でもまだ、6時半過ぎ。
車が増えだすと、自分との速度の違いも当然、出てきます。
私の前をゆっくり走る地元の車。私のドライビングテクニックでは、追い抜くのも憚られます。でも、このままでは間に合わないかもしれない・・・。
少し焦りだしたとき、その思いが通じたのか、前を走る車が道を譲ってくださいました。
そのご厚意をありがたく受け取り、ハザードランプで謝意を伝えて先を急ぎました。道を譲ってくださった車は2台。本当にありがとうございました。

おかげで、朝拝の15分前に無事に到着することが出来ました。

聖地、到着!


駐車場にはすでに数台の車が止まっていて、たくさんの人と朝拝をご一緒するのだなと思いました。
駐車場から本殿へは社務所の横を通れば近いのですが、でもやっぱり、鳥居からお邪魔しないといけません。人のおうちを訪ねて行き、勝手口から入るなんてしませんから、そこは同じです。逸る気持ちを抑え、鳥居へと回りました。
鳥居をくぐり、手水舎で手と口を清め、拝殿へと進みます。

拝殿には少しだけ朝日が射し込み、日中とは違った美しさがありました。
まずは、ご挨拶。
名を名乗り、参拝のお許しをいただけたこと、無事にたどり着けたこと、そして日頃の感謝を伝え、お願いもさせていただきました。
このとき気づいたのは、道を譲ってもらえたのは、今こうやって神様に会わせていただくための運びだったのだと。
そう思うと、合わせた手をしばらく離すことができませんでした。

拝殿には女性の神職さんが控えておられたので、朝拝をご一緒させていただきたいことをお伝えし、きれいに並べられた胡床のひとつに腰掛けました。
朝拝が始まるまでの間、静かに目を閉じ、拝殿の香り、神社周辺の音、早朝のひんやりとした空気などを感じていました。
清らかで、幸せな、ひとときでした。

不思議な感覚

太鼓の音から朝拝は始まります。
この音を聞いた瞬間、涙が出ました。
太鼓は神様への合図と聞いたことがありますが、人間の私の心にも深く響き渡りました。

心はこの清らかさを求めている。

そう思いました。

神仏習合のならいで執り行われる朝拝はとても不思議でした。
時代が変わり、近代化されていっても、なんら変わることなく続けられていることに感動し、この朝拝が毎日行われていることを思うと、ここの神様が身近に感じられました。
実は、いつもこの神社にお参りをする際は、少しピリッと緊張していたのです。同性には厳しいかもしれない。でもそれは、私が勝手に思っていただけのことだったのかもしれません。
ここ最近はそのように感じなくはなっていたのですが、今回の朝拝によって、特殊ではなく、求めるすべての人の祈りの対象であり、いつもそばにいて見守ってくださっている、そう思えたのです。

最後に宮司様から
 ”生きとし生ける命が光り輝く一日になりますように”
とお言葉をいただきました。温かい言葉に、また涙が出ました。
朝拝は30分ほどで終わり、直会としてお神酒と昆布をいただき、帰りのご挨拶をして神社を後にしました。

ずっと、見ていられる水

心清まる朝拝を終え、もう一か所、訪ねたいところがありましたので、今度はそちらへ向かいました。
今度はお寺です。

山深いところにある温泉地。山岳修行をされる方々の拠点となるそこに、そのお寺はあります。
お寺には修行をされる方が心身を清めるために使う行場があり、その水はいつも透明に澄んでいます。その水を見たくて、夏になるとそこへ行きたくなるのです。
今回は久しぶりの訪問でしたが、本堂へのお参りもそこそこに、あとはひたすら水を眺めていました。
清らかな水は、見ているだけで癒されます。

ヨシノのこと

目的を果たし、十分に気をチャージできたので、家路につくことにしました。と言っても、時間はまだお昼前。
朝食もおにぎりで簡単に済ませただけでしたので、どこかでモーニング兼ランチを取ることに。
深い山から下界に降りて向かったお店はマクドナルドでした(笑)
モーニングを提供しているお店がなかなか見つからず「朝マック」と相成りました。

朝マックをしながら次なる作戦を考えたのですが、無理に目的地を決めなくてもいいかもしれない、と思い、たまにはさっと帰ることにしました。

お店を出て車を走らせていくと「吉野山」の文字が目に入りました。
どこへも立ち寄らず帰る、と決めていましたが、だんだんと「このまま吉野に寄らずに帰ってもいいものか・・・」という気持ちになってきました。

そう、私、ヨシノサオリの「ヨシノ」は、「吉野」から勝手にいただいたものなのです。
全くのド素人でプロではないし、今のところはこのnote以外に投稿する予定もないのですが、勝手に「ヨシノ」名乗り、こんな子ども染みた文章であっても発表せていただいているのに、挨拶もなく名前を使い続けるのはいかがなものか?と、急遽、吉野山を目指すことにしました。

事後報告

まずは、吉野山の玄関口にある吉野神宮へお参りに行きました。
この日の境内には、氏子さんたちがこしらえた茅の輪と涼しげな音色で癒してくれる風鈴がたくさん飾られていて、数日後にはたくさんの人で賑わうのだろうと、夏越の大祓のことを想像しました。
*吉野神宮では夏越大祓を7月30日~31日に行うようです(2023年)。

事後報告ながら、ご挨拶をしました。
「いいよ」とお許しいただけたかは分かりませんが、自分の気持ちが少し楽になりました。

吉野神宮からほどなくすると、吉野山の駐車場にたどり着きます。
春のハイシーズンには有料となる駐車場ですが、夏は無料で開放されています。もう少し先まで車を進めることもできそうでしたが、運動も兼ねて、この駐車場に停めることにしました。
朱塗りが印象的な大橋を渡り、金峯山寺を目指します。

桜の頃の吉野では、一般のおうちのようなところでも商魂たくましく、あらゆるものを売っているのですが、この日、開いているお店は食堂とみやげ物屋さんだけでした。
ちょうどお昼時でもあったので行き交う人も少なく、少し寂しい感じ。
いろんなお店を覗くと、ちらほらお客さんがいたので、「みんな、ここに居たのか!」と少し安心しました。皆さんランチをされていたようです。

金峯山寺でお参りを済ませ(簡単に済ませてしまいました)、吉水神社へと足を延ばしました。
吉水神社でも事後報告をさせていただき、ここまで無事にたどり着けたことにも感謝しました。
吉水神社といえば、「一目千本」と言われ、境内から中千本、上千本の桜を一望できます。ここから見る、盛夏の山々はさわやかで、春にはない力強さも感じました。
また、吉水神社は南朝皇居がおかれていたところですので、雅な書院も見学することができました。
書院には、狩野山雪の屏風、襖絵があり、思わぬ鑑賞会にもなりました。
山雪の絵には、菊のような花が描かれていて、後醍醐天皇を思い、ここが南朝であったことを意識していたように感じました。
ここのところ、美術館から遠のいている私にとって、屏風や襖絵を見られたことは、別の癒しにもなりました。
ご挨拶をしに来たのに、良い思いをさせていただきました。


自己満足に過ぎないのだけど・・・

良き散策にもなった吉野山。
車に乗り込むまでに、駐車場近くのカフェで休憩をしました。
心のチャージは出来たので、今度は体へのチャージです。甘いものが欲しい・・・(笑)
昨年の春に訪れたときも気になっていたお店。でも、そのときは時間の都合で入店を諦めたのでした。
八十吉さんは、吉野で長く創業をされている吉野葛のお店です。
こちらで「くずもちラテ黒糖」をいただきました。
くずもち、黒糖、ミルク。すべてがちょうど良く、とても美味しい逸品です。これは是非たくさんの人に味わっていただきたい。

八十吉さんの「くずもちラテ黒糖」

自分が求めた神社の朝拝から、思い立って吉野を訪ね、結果的には大満足の小旅行となりました。
春は人も多く、桜や周辺のお店ばかりに目が向きますが、夏の落ち着き払った吉野山は、ゆったりと静かで、時間を忘れさせてくれる素敵な場所でした。
この山が持つ歴史、この山から生まれた物語、今も人々の信仰の場であり、その美しさに多くの人が魅了される。「よしの」という音の響きもまた、美しく神秘的に感じます。
私も吉野に魅了されている一人として、この名前を大切に、そして、誰かの心を埋められるような言葉を紡いでいける者になりたいと思います。
事後報告というのは、ただの自己満足だったかもしれないけれど、訪ねてよかったと心から思っています。

心癒され、良い気をいただけました。ありがとうございました。
どうか吉野がいつまでも美しく、私たちの癒しの場であり続けますように。



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