イギリスで新しい家に住み始めてすぐするべきだったこと

さて、ヨークシャーに住み始めて、しばらくして「あー!!!」と思ったことがいくつかある。その大概が「やっておけばよかったのに、やらなかったから掃除が大変になった」ケースだ。

忙しければ忙しいほど、家を切り盛りしている人間は「そもそも家が汚れない」ようにする工夫をもっているものだ。

忙しければ換気扇にフィルターは絶対につけるし、冷蔵庫の野菜室の底には新聞紙を敷くし、底に液漏れがしそうな調味料の入っている棚も、少し綺麗めの包装紙で保護する。その5分の手間が後で20分30分の時間のゆとりをくれるからだ。

けれど、国が変わると家の造りも違うし中に入っている機器の仕様も違う。売っている洗剤類も違う。気付かずにいたり試行錯誤していたりするうちに、思わぬ汚れ方をし、「あー」とため息をつくことになる。

ましてや築130年の建物での生活は想定外の落とし穴があって、「あー」と思うことが多かった。

そうした私の後悔を3つあげてみる。


後悔1 「シャワーを浴びた後はカーテンを広げておくべし」を家族に通告すべし

シャワーカーテンのない家からシャワーカーテンのある家に引っ越しをして数ヶ月後、カーテンにびっしりと黒いカビが。

そう、毎回のシャワーの後、綺麗に広げておくだけで水滴が落ちてカビが生えなくなるのに、それに気づかず、こまめに広げておかなかったが故の悲劇だった。水が多い時は、もちろん裾を浴槽内に入れたまま広げておくけれど、だいたい雫が落ちそうになくなったな、と思ったら外に出しておくと綺麗に乾く。

ちなみに、先日泊まりに来たお客様が出た後、バスルームに入ったら、カーテンが綺麗に広げてあったので、ちょっと感動した。私が知らなかっただけで、他人の家にお泊まりする時のエチケットなのかもしれない・・・。(ホテルで使う時などそんなこと、気にしなくても良いですものね。)


後悔2 Magic Oven Linerをオーブンの底に敷いておくべきだった

こちらに引っ越しをして、(帰ってきて?)、ホッとしたのは「ちゃんとしたサイズの」オーブンがあることだった。なにせ、東京にいた時にはクリスマスのローストポテトと、ローストターキーが我が家の電子レンジ兼オーブンには入りきらず、それはそれは苦労したものだった。

子供が小さいとオーブンの料理はとても便利。オーブントップでの料理に比べ台所の壁も汚れない。

が、しかし、どうしてもオーブンの中は汚れる。

グラタンはふきこぼれ、ピザのチーズは滴り落ち、ロースト肉の脂は、はねる。

特に汚れやすいのが底で、昔はtin foilを敷いて汚れを受け止めたという。ただし、現在普通に使われるアルミホイルだと、熱耐性がティンホイルよりも低いとかいうことで、故障の原因になるからやめろと、最近では言われている。

が、絶望することなかれ。Lakeland(イギリスの台所用品店…私はここのカタログだったら一時間ぐらい飽きずに眺めていられる…)からオーブンの床用の敷物が売り出されている。

引っ越してすぐ、買って敷くべきだった。それができないのだったら大きめのベイキングティンを買って底においておくのだった。と、今私は猛烈に後悔している。一度汚れが焦げ付いてしまったオーブンの中を掃除するのは結構な重労働だからだ。

後悔3 トイレにはホワイトビネガーのスプレーを常備しておくべきだった

別にロハスな奥さんではなかったのだけれど、都内にいる時には重曹とクエン酸によくお世話になっていた。小さな子供がいたからだ。

とにかく注意散漫な人間なので、掃除中にふと、他のことに気をとられてスプレーを出しっぱなしにする、というようなことが(実際はなかったけれど)ありそうで、子供には危険な洗剤類を普段使いにするのが怖かったのだ。

ま、そういうわけで、ロハスな人たちだとトイレにはクエン酸、が常識ではある。とにかく匂いが派手にならないように軽く日々クエン酸水で壁や便器を拭いておくと、尿石もできないし、匂いも発生しない。(普通は)

男の子が数人いる家庭の掃除担当は大概その手のこまめな掃除に頼っているんじゃないかと思う。

が、困ったことに、実はこちらに引っ越してしばらくの間、クエン酸(citric acid)も重曹(bicarbonate of soda)も、掃除用のものを見つけることができなかった。売っていないわけではない。Dri-pakという会社がだいたいその辺りはお掃除用に売り出している、が、なぜか私の町では一般的ではないらしく、たまーに売り出されている時に買わないと、次いつ買えるのかわからない。

(余談だが、重曹やクエン酸を使った家事はイギリスよりもアメリカの方がずっと一般的なのではないかという印象を持っている。)

・・・こっちのミドルクラスのロハスなおくさんはEcoverみたいな洗剤を使うのね。

とにかく、それほどサボったつもりもないのに、男子2名(と成人男性1名)が生活する我が家のトイレは気づくと変なところに尿石ができてしまっていて、「・・・こ・・・これは」と頭を悩ませていた。

引っ越して2年めにしてふと手に取ったWhite Vinegar は8%前後(普通の米酢で5%弱)という代物で、今まで洗剤片手に苦労していたトイレをとにかくスプレーしておくだけで綺麗に保ってくれることが判明。

ちなみにWhite vinegar はdistilled vinegarとも呼ばれる。蒸留して作るわけではなく蒸留酒をもとに作られる。大概の台所にある代物だ。

掃除用クエン酸が簡単に手に入らない田舎町でもピクルス用に安く売っている。本当に、「あの苦労はなんだったの?」と言いたくなるくらい簡単に、使い始めて1週間ぐらいでバスルームが綺麗になった。

ちなみに、White vinegarはトイレの日々の漂白や(寝る前にカップ一杯入れておくと綺麗になる)先日話をした硬水によってできるライムスケールの除去にも効果的だ。赤ワインを絨毯にこぼした時にも強い味方なのでとりあえず常備しておきたい。


・・・余談ではあるけれど、クエン酸はヘロインを溶かすのにも使う、ということで地域によっては本当に売っていなかったり、買いに行ったら「何に使うの?」と聞かれた、なんていう話もある。食用になるレベルのものだったら大概、Home brew shop(自分でワインを作る人たちのための用品店・・・そこそこメジャーな趣味だ)にはあるはずではあるけれども。


その他もろもろの後悔

その他にも後悔は山のようにある。換気が全然考えられていない古い家だから、シャワーを浴びる時は真冬でも窓を開けることを徹底しなくてはならないのにそれを怠った、(浴室ではなく、なぜか上の階の壁紙にカビが生えた)とか、年に一度はタイルの目地を埋め直すべきだったのにそれを怠ったら下の階に水が漏れた、とか、それこそいろいろ。

古い家と付き合って暮らすのにはいろいろとコツが必要なのではある。



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