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【第5話】移住にまつわるお金の話、仕事の話(1)

◇給料もらえて住宅もタダ?! 地域おこし協力隊 

 移住って言ったら、一番心配なのは「お金」のことでしょう。いくら出費が減るとしても、ある程度の現金収入は必要だ。交通費とか病院とか、あと税金! 息してるだけで1人5~6万円ぐらいはブッ飛びますぜ。おー、怖っ。

 瀬戸内海に縁もゆかりもなかった我々が、どうして愛媛県今治市で生活できる(正確には「生活できそう」)のか? それはもうひとえに「地域おこし協力隊」制度のお陰なのである。夫がこれに応募し、採用されたのだった。

 地域おこし協力隊とは、都会のマン&ウーマンを過疎地に定住させるための制度。「役所の臨時職員としてMAX3年間までは給料出してあげるから、その間に食いぶち見つけて自立してね。でね、その後もここに住んでほしいんだよ。強制はできないけどさ」という感じ。移住先で暮らしながらゆっくりやりたいことを見つけたい人には、打ってつけの制度だ。自分の足で立てそうになったら、1年で辞めても2年で辞めても自由なのだから。

 さらに、愛媛県今治市の場合は、その間の家賃までタダ!! おおっぴらには言えないらしいけど、勤務時間以外なら副業も可能だ。例えばライターなら、取材を土日に設定して平日の夜を執筆に充てれば、なんとかなるかも。業務内容も「あなたがココでやってみたいことがあれば、何でもチャレンジしてみてください」ってな具合で、だいぶ大らかな設定。確かにそうだよなぁ。だって役所の仕事ばっかりしてたら、いつまで経っても自立できないもんね。

 だが、この辺の事情は、自治体によってだいぶ違うので、気になる方は協力隊の公式サイトをチェキしてみてください。日本全国津々浦々、いろいろあってビックリしまっせー。

 あとは、こんな雑誌もあります。

 『田舎暮らしの本』(宝島社)。その名の通り、田舎ぐらし志望者のバイブルである。移住成功者の輝かしい体験談から、全国の古民家情報、DIY入門に就職情報、家庭菜園のちょっとしたコツまで至れり尽くせりだ。もちろん地域おこし協力隊案件も外せないゼ! どうでもいいけど、雑誌ホームページのURLが‟inaka”だったのには、ちょっと泣けた。あと表紙が毎回犬なのも(たまにサルだけど)。左のヨークシャテリアなんて、絶対イタチにすら負けそうだ。非田舎犬。

 ところで、都会暮らしを愛するマダムたちよ、ダンナの本棚にこーいう類の本が増えてきたら要注意でっせ。

 例えばこれは、うちの夫の本棚……に入れるのも面倒なぐらい頻繁に読む本のスペース。藻谷浩介の『里山資本主義』(角川書店)ならまだビジネスってことで、ごまかしが効くが、もしかすると導火線に火はついてしまったかもしれない。『ナリワイをつくる』(東京書籍←!)など伊藤洋志がらみの本が並びだすと、だいぶ症状が進んだ証拠だ。もう夢見ちゃってるね。あとは猟師や島関係。

 大事なのは、これを読んだ後にちゃーんと現実に戻ってきて、自分の頭で考えなおすってことだろう。幸いウチの夫はその辺が冴えている……と思っていたのだが、人生(たぶん)初の「俺の夢叶えようぜスイッチ」が作動しているらしく、冷静に見守る必要はある。まぁ、でもさ。そういう熱って必要だよね。人が飛び立つ前にはさ。


◇採用までの道のり

 地域おこし協力隊に採用されるまでは、ざっとこんな感じである。

①都市部で行われる説明会に参加 → ②書類応募 → ③現地で面接 → ④合格通知 → ⑤着任

 ①の工程は必須ではない。ウチの場合は、①浜松町での説明会に参加(12月中旬)→ ②自主的に現地視察(12月下旬)→③書類応募(1月下旬)→ ④現地面接(2月中旬)→ ⑤合格通知(2月下旬)→ ⑥着任(4月1日予定)であった。

 特筆すべきは……、合格から着任までの期間が短かすぎ!! だって夫はバリバリのサラリーマンだ。たったの1カ月間で、上司に報告~挨拶まわり&引き継ぎ、引っ越し準備なんて急すぎるでしょ!! みんなどうしてるんだろう。応募するのは、フリーランスとニートだけじゃないだろうに。 

 なんだか大らかそうな今治市のこと。実は「交渉次第で着任日を後ろ倒しできるんじゃないか」と高をくくっていた。この業界にはちと詳しいヴァダ先輩(音楽&相撲ライター)曰く、「開始日の先延ばしできるらしいよー。半年だって余裕っぽい」だったんだよ。でも、甘かった。

 「2、3日の延期はあっても、それ以上は前例がないので何とも言えない。もしどうしても延ばしたいなら、有休を使ってほしい」

 とのこと。交渉の余地なし。あぁ、まさか引っ越しまで1カ月もないとは。まさに我々は、今この状況にてんやわんやなのである。それに、夫はよくても私の話にはまだケリがついていないのをお忘れなく……。そりゃ「フリーランスが、突然の移住でどう仕事していくか」ってことですよ!! 全然気持ちがついてってないぞ、ゴルァ!!

 結局、なんとかなりそうな気はしてきたんですけどねぇ。長くなったので、その辺の話はまた次回。

                               (続く)

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