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歴史から何を学ぶのか?〜社会人向けレッスン「世界史講座」で気づいたこと【Aflevering.179】

 私はオンライン家庭教師として、日本を含むいろんな国の子どもたちや社会人の学習サポートをしております。その中でも、講座開設のご要望をいただき、社会人が学ぶ用に設定した「世界史」の授業も行っております。今日は、試験を目的としない世界史の講座の準備や実際の授業の中で感じた「歴史を学ぶ大切さ」についてまとめておきたいと思います。

 現在受講していただいている方は、社会に出てから海外などに行ったりすることがある中で、世の中の仕組みに無知であることに気づかれたそうです。そして、世界の成り立ちやこれまでの歴史を学ぶため、高校世界史を学び直したいということでお声がけをいただきました。

 私は元高校の社会科の教員ですが、一般的な学校の授業のイメージにあるような一方向的な授業は行いません。自学先行型の学習を取っていて、学習者が事前に学んで来られたことを元に、授業を進めています。

 授業で使用するテキストは、事前に相談してどれを使うのかを決めます。また、受講者の方がご希望される教材などでも可能です。
 授業までに事前に決められた場所までを読んできていただき、授業の初めはこちらからその単元の簡単な解説を行った後、それぞれ受講者からの質問を受け、その後は全体でその単元に関して考察するべきテーマについて議論していきます。また、課題の量については、その都度受講者の方と相談して決めます。あくまで学習者を主体として、自学を援助するというイメージでサポートさせていただいています。

「歴史」を学ぶ価値は何か?

◯歴史嫌いの原因

 日本で歴史(あるいは社会科)の勉強というとどんなイメージがあるでしょうか。それは、教科書に書いてある歴史の事実について学び、その知識がきちんと定着しているかを確認するためにテストを受けるという形式が主にあると思います。テストの際には、大量に暗記することが求められ、テストが終わると学んだことを忘れてしまう。
 近年、新学習指導要領に基づいて、新しい学習がスタートしますが、指導要領が求めている学びが実施できるのはもう少し先になると感じています。

 社会人の友人や大学生などと話をしていても、「用語は覚えた気がするけれど、その人が何をしたのかまでは覚えていない」という話をよく耳にします。こういう状況下では、歴史を嫌いになる人が増えても仕方ないと思います。

 歴史の面白さは、知識をクイズみたいに覚えていく中では感じることはできません。

◯今の社会の成り立ちを紐解く歴史

 私は現在ヨーロッパのオランダに住んでいます。住む国が変われば、人々の考え方も全く違います。オランダに住む人たちはなぜこんなに物事を合理的に捉えられるのだろうか、オランダが移民を受け入れ多様性を尊重しているのはなぜなのか、と疑問に思うことがたくさんあります。
 そういった文化や価値観の背景を理解するために必要なのが「歴史」なのです。

 私がこれまでに読んだ本などによると、オランダは元々海面よりも低い土地で、オランダ人が自らの力で土地を開拓しました。オランダは、一般的には"The Nederland(低い土地の国という意味です)"と言われます。
 低地で洪水などの被害が起こりやすいため、全てを事細かく決めるのではなく、ある程度の枠組みだけ話し合いで作って、あとは現状に合わせて調整しながら行動していくことで自然災害を乗り越えてきたと言われています。

 オランダ人の価値観は、こういった過去に歩んできた歴史を学ぶことで理解することができます。また、この合理的な考え方が宗教政策にも影響して、当時異教徒を追い出そうとしていた江戸時代の日本との貿易も可能になったのです。
 日本とオランダが400年以上の付き合いがあるのにも歴史から理解することができます。

◯考えること自体を楽しむ歴史の授業

 授業の中で受講者の方が求められる場合は、歴史の細かい知識をお伝えすることもあります。しかし、私が最も大切にしていることは、歴史がどのようにしてつながり、今の社会を形成したのかを理解することです。歴史を学ぶ視点は、あくまで現代において授業をしています。

 例えば、中世と近代では人々の価値観が大きく変わりました。宗教や科学と人々の価値観の変化を歴史の中で学ぶことができれば、私たちが疑うことなく信じているものが実は疑う必要のあるものだと気づくきっかけを与えてくれるのです。
 また、そういった学習の中で、宗教の役割がどのように変化してきたのかを考えることで、世界の今起こっている問題についても理解することができます。

歴史を学んで今を生きる糧にしてほしい

「小さな動き」が「大きな流れ」になる

 現在、古代ヨーロッパについて学習している授業があります。そこでは、アテネのデロス同盟の中にあった軋轢や、古代ローマ帝国の歴代皇帝の生き様などに触れながら、機械的に時間が流れていったような感覚になるのではなく、その時代に生きた人々による小さな選択の1つ1つが最終的に歴史を形成したことを理解してもらいたいと思っています。

 それによって、個人の悩みや私たちが今直面している大きな問題に対しても、小さな積み重ねが大きな影響をもたらすと信じて行動に移すことができるかもしれません。

今の不安の原因を見つけるヒントになる

 私たちが学校で学んできた歴史は事実を羅列した無味乾燥なものを知識として覚えることがメインになっていました。そのため、どうしてもつまらないという印象が強かったと思います。

 私が歴史を学んでいてよかったと思うことの1つに、何か悩みを抱えた時にその前後の関係について考える癖がついたことです。今その自分の悩みが生まれた原因は何なのか、このままだと自分はどうなってしまうのだろうか、その原因となっているものはどこから発生しているのかを分析することで、自分を悩みから一旦切り離すことができます。歴史を俯瞰するように自分自身も俯瞰できる力をつけてもらいたいと思っています。

最後に〜授業づくりはまだまだこれから

 社会人向けの世界史講座をスタートしてからまだ3ヶ月ほどしか経過していません。そのため、授業の方針や運用の仕方も私もまだまだ模索中です。

 これからも受講者の方に歴史を学んでよかったと思えるような授業づくりをしていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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