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鑑賞レビュー:アーティゾン美術館/マリー・ローランサンー時代を映す眼 

過日(2024年1月26日)アーティゾン美術館で開催されていた「マリーローランサンー時代を映す眼」を鑑賞しました。

なかなかレビューがまとまらなかった理由としてじつは、自分、マリー・ローランサン(1883年~1956)の人物画が苦手。

描かれた女性たちには髪も皮膚も質感が不明瞭で、瞳には光がない。
そして、ふわふわした色合いに包まれ、体臭やセクシュアリティを感じさせない肉体を持った彼女たちの表情からは人間としての感情は読み取れません。

ブルドッグを抱いた女
シェシア帽をかぶった女
プリンセスたち

思った通り、耽美的でポエティックな人物画が延々と並んでいたのですが、パリのアカデミーで学んだ後、キュビスムの画家としてデビューしていたというのがちょっと意外でした。

優美な色彩をまとい、おしゃれでかわいいデザインの衣装を着て生活臭のないポーズをとった少女たちの絵をみていると「装飾性」以外に描かれているものが見当たらず、女性向きの雑誌のイラストレーションのようにも思えます。

しかし、ドローイングのように見える作品が多いので即興的な作品ばかりなのかと思いましたが、水彩で描かれたちいさな挿画のシリーズは工夫された色彩や計算された筆のタッチなどがみられて画家としての技術力が垣間見えました。

もしかしたら、このふわふわした作風は、男性社会における「女流画家」としてのしたたかな「戦略」だったのかもしれません。


以下、挿画シリーズ
「椿姫」より
ちいさな水彩画ですが、端正で抒情的。
岩崎ちひろの作品を彷彿とします。
「椿姫」より
「椿姫」より 第7幕
「椿姫」より

作品点数は大変多く、ローランサンを研究している人には見ごたえのある展覧会だったと思います。






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