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”思いつき”定義集㉚「は」

【敗北】敗北上等!
 わかりやすい一例を。今さらながら「勝ち組」「負け組」は最悪の二分法の一つ。人生に勝ち負けは原理的にあり得ない(そもそも線引き不能)。あらゆる人間が「勝負」という線引き可能な同じ土俵に立っているとの錯覚に縛られている人の言いぐさだから。例えば「偏差値」「学歴」「肩書」「結婚」「年収」「長寿」など不確かな尺度に信じがたいほど執着する人たちがいる。そうした視野狭窄に惑わされたくない人は自分なりの物差しを自分に向けていればいい。そもそも世界にはそうした物差しなど必要としていない人びとが大勢いる。
 また、他人を貶めることに精力を注ぐ人たちの「どや顔」にも辟易する。そうした人たちは自身の敗北を認めることがないので質が悪い。「勝っている」を前提に他者との関係を築く人たちだから。
 それでも、ある価値観を基準に人生を賭けることもある(スポーツ競技などを含め)。それゆえに理想と現実との乖離に敗北を認めざるを得ないことはある。それはそれで潔いし経験値を積むことになる。
◆注:例えばゴッホは「敗北」を絵に描いたような人である。
◆参考文献:市川弘正『敗北の二十世紀』(ちくま学芸文庫、2007年)、松村圭一郎『くらしのアナキズム』(ミシマ社、2021年)。前者は政治哲学的で難解かも。

【はびこる】悪、カビ、ダニ、クモの巣、台所のアリ、スズメバチ、雑草など――およそ歓迎できないものに対して使われる。はびこって欲しくないのは他者を痛めつけて、ほくそ笑む「悪党」だが、その自覚に欠けるのが「悪党」の特質でもあり、誰にでもその陥穽に引き込まれる可能性も否定できない。それゆえにか、カビやダニと同様に絶滅することはない。

【張りぼて】(比喩)剥がれ落ちそうな化けの皮。虎の威を借る狐。しっぽを振る日本(どこに向けて振っているのかは言うまでもない)。その意味で人間も国家も意外と脆い。それを自覚できないのは弱さの裏返し。強がるチンピラもどきは早々に卒業すべき。


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