見出し画像

死ぬときゃ死ねばいい(そのとき木村さんがやってくる)

住む家や食事にありつけなかったら、死んじゃう。
だから日銭のために働く・・・なら死ねばいい。

でもちょっと待って、あなたは何のために生まれてきたんですか?
死んじゃう前に一度だけ考えてみて。

・・・そんな時間はない?
明日の仕事の準備って、あなたいま死のうとしてませんでした?
あれ? そもそもこの文章を読んでいることがそもそも変じゃない?

なんだか話を聞いているこちらのほうが混乱しちゃうよ。
まぁ細かいことはもういい、そんな日もあるよね。

・・・さて、どうせ死んじゃうんだから、その前に一緒に考えてみよう。

何って? 自分が生まれてきた意味について。
そもそも効率を考えるなら生まれてこなければよかった、だよね?

それなのにあなたは生まれてきた、つまり理由があるから。
きっとあなたはこれまでそんなふうに考えた事なんてなかったはず。
だってことあるごとに周りのせいにして、挙句に死にたいだの生まれてこなければよかっただの。

この際ですからハッキリ言うけど、あなただけでは無く、他の誰一人として存在意義のない人なんていないんだよ。

だからまずはここで一度心を落ち着けて、私の話に耳を傾けてみて。

そんなに時間は取らせないから。

堀江の浜(イメージ)

真心と潮騒のメモリー

かく言う私も二十歳の頃、将来への不安から海に原付きでそのまま入ってやろうなんて、そんな浅はかで愚かな計画を実行しようとした事があったんだ・・・。

私の生まれ故郷にそれは美しい海岸線が広がっている堀江という海辺の町があって、その海辺には何度となく釣りに訪れていた事もあり、最後はその海に行きたいと思い立った日のことでした。

時間はお昼前、原付きでそのまま入っていける波止場を探すため、シャカリキにバイクを走らせる私。・・でも当然そのような場所が見つかる筈もなく、あてもなくバイクを走らせているうち、ついにガソリンが尽きて初夏の浜辺で立ち往生する羽目に。

その日を最後と決めていたのですから、当然ガソリンの残りや手持ちのお金の事など考えているはずも無く、もうそれ以上進めなくなった浜辺でただ薄ぼんやりと近くの堤防の上に横になり空を見上げ潮騒を聴いていました。

どのくらい時間が経ったでしょう、海の声を聴き、頬をくすぐる浜風を感じ続けているうちに、もう死ぬ事などどうでも良くなった頃。

私が寝転んでいた波止場に一台のトラックがやってきて停車し、中から『奇跡のリンゴの木村さん』に似たおじさんが降りてきて、こう言うのです。

「どしたん?」「午後からは雨やで」

私は木村さんに、自分の不注意からガス欠をおこしてニッチもサッチもいかず寝ているしかなくなったと事の経緯をお話しました。

すると木村さんは独特のお声で笑うと、開いた口元からわずかにまばらな歯の並びが見え、愛嬌のある笑顔をいっそう輝かせるのです。

それから木村さんのトラックに原付きを乗せてもらい、近くのガソリンスタンドに連れて行ってもらう傍ら、手持ちのお金がないことや、何度も詫び続ける私に事の経緯などを一切詮索することもなく、ご自身は近所のみかん農家であり、朝一のパチンコで僕もスッカラカンだと言って笑うものですから、つい私も噴出してしまい、それをきっかけに車中での会話の花が咲き、互いに笑いあったりしました。

やがて着いたガソリンスタンドで木村さんは胸のポケットからクシャクシャの千円札を出して渡そうとした刹那、

「あ、母ちゃんからだ!」
そう言って、千円を私に握らせると携帯電話に出て、奥様と話す素振りのまま自分のトラックの方へ歩き出し、最後に私に手を振るとトラックに乗って帰ってしまったのです。

あまりに突然のことに私は木村さんの連絡先はおろか、お名前も聞きそびれ、お礼も漫ろに別れてしまった事態にようやく気づく有様、その頃になってようやく遅ればせながら様々な自分の中でボンヤリしていた感覚が舞い戻ってきたのでした。

木村さんのお陰様で自宅の前まで帰り着いた頃、先ほどまでの晴天はどこかに姿を隠し小雨が降り始めました。

私はなんだか急に胸がいっぱいになって、その場でしばらくサメザメと落涙、強く降り始めた雨がその頬を撫でるように優しく滴り落ちた心地がしたのです。

この日を境に、それまでとは打って変わり、しかし力むことなく何事にも前向きに取り組めるようになり、その折には木村さんの愛らしい笑顔や独特の笑い声が私の中に潮騒のメモリーとしてリフレインするのでした。

その後も幾度となく堀江の浜辺にツーリングに出かけ、木村さんのお姿を探すもついに出会うことは叶いませんでした。しかしそうこうするうちに、死にたいだなんて二度と考えなくなっていました。

心優しい人との出会い、母なる海の声、浜に吹く風、潮の匂いと海沿いの蜜柑山。その尊いすべてが当時の私を癒してくれたのです。

・・・なんだか私の話ばかりしてしまいましたね。
・・・聞いてくれてありがと。

当時乗っていたHONDAの原付(イメージ)

死ななきゃ生きられる

あなたは今すぐ死ななくてもどうせいつか死ぬ。

そもそも今すぐ死ぬ理由なんてない。

・・・そうですよね?

なら生きればいいんじゃない?

ただ何となく生きて、ぼんやりと生きて。

死ぬ前にやりたくないことをやめて、好きなことをする。

死ぬ暇があったら周りなんて気にせず、好きに生きて。

そして死ぬとき死ねばいい。

・・・でも不思議なんだ。

何がって、そうやってぼんやり生きているとね。

現れるんだよ、死んでもいいって思える出来事が。

死ぬ気でやりたい、死んででも守りたいってことが。

嘘だと思うよね、何十年も生きてきて、いまだに出会ったことないから。

でもそれって個人差があって40歳くらいに急にやってきたりするんだよ。

唯一の条件、それは生きているってことなんだ。

当たり前だけどね、死んでちゃ体験できないでしょ。

月並みだけど、私あの時に死ななくて本当によかったって思ってるんだ。

だってこうして自分が書きたいとき、書きたいことを自分の言葉で綴れてさ、そしてあなたが読んでくれる。

なんだそれって思うでしょ? でも私にとっては大切なことなんだ。

・・・ほらなんだかだんだん表情が和らいできたね。

あまりにバカバカしい話でどうでもよくなってきたんじゃない?(苦笑

実際人生ってさ、そんなものじゃない?

それじゃ、最後にこれだけは言っとくね。

あなただけが、自分のことを取るに足らないって思ってる。

あなただけが、自分の価値に気づいてない。

あなただけが、自分の生まれてきた意味をわかってない。

あなたは生きるために生まれてきた、だから生きていい。

あんたは死んでる暇なんてないんだよ。

ただあなたらしく生きてくれればそれで十分。

願わくば生きて、また私の文章を読んでよ。

それじゃ、またね。

バイバイ。

死ぬとき死ねばいい / カンザキイオリ / 鏡音レン・リン

本稿の見出し画像は、Adobe FireflyでAI生成、Adobe Expressで編集、noteと連携機能で設定。文中の画像もGoogle ColaboratoryにてStable Diffusion WebUIで生成しました。また、本文内容はAIアシスタント機能を使って一部書き換えました。

◆著者紹介

この記事が参加している募集

AIとやってみた

一度は行きたいあの場所

いつも本当にありがとう。 これからも書くね。