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ケルト人と謎の古代人スキタイ(3)

ここで「ギリシャ神話のオリジナルはスキタイが祀る神である」という点を紹介していきます。
謎の古代人スキタイについて、ヘロドトスは『歴史』の中に以下のように書いています。

ヘロドトスの『歴史』によると、当時無人の境であったスキタイの国土に最初に生まれたのは、「タルギオス」という名の男でした。
このタルギオスの両親は、ギリシャ神話の全知全能の神「ゼウス」と「ボリュステネス河の娘」とのこと。
「ボリュステネス」とは「ドニエプル河(ロシア-ウクライナ-黒海)」のことで「ボリュステネス河流域のステップのヒュライアの森に住んでいた半女半蛇の女を、スキタイ人は自分たちの民族の祖とみなしていた。」という記述があり、ギリシャ神話との関係を匂わせています。
さらに、スキタイ人の祀る神としては次のものがあります。
最も重んずるのが「ヘスティア」(竃の神)で、次いで「ゼウス」と「ゲー」(地の神)、彼らはゲーを「ゼウス」の妻としています。
さらに「アポロン」、「ウラニア・アプロディテ」、「ヘラクレス」、「アレス」以上はスキタイ全民族が祀る神でありますが、いわゆる王族スキタイ人はさらに「ポセイドン」を祀るとのことです。
このようなギリシャ神話として有名な神も、オリジナルは古代オリエントとされており、スキタイの神であったようです。

ちなみにスキタイ人は外国の風習を極度に嫌います。特にギリシャの風習を嫌うとされていますので、上記の神々のオリジナルはスキタイだと言って良いと思います

また、前7~5世紀の黒海北岸のスキタイの地の近隣に「オルビア」や「パンティカパイオン」などのギリシャ植民都市が生まれた。スキタイは遊牧生活をし、家畜が生活の糧であり、馬乳を飲み、肉やチーズを食べた。穀物は支配下にある農耕民族から貢納させ、ギリシャ人からブドウ酒、オリーブ油、武具、贅沢品などを調達していた。一方で、スキタイ人は農産物、蜂蜜、獣皮、魚、とりわけ小麦を有していた。多くの古代ギリシャ都市、特にアテナイの人々は、スキティアの森林ステップ地帯やクバーン川流域のマイオタイの地(現在のアゾフ海東側)からもたらされた穀物のおかげで生活していた。
※以上はギリシャとの関わりを示しています。

また、古代ギリシャの詩人アリステアスは、「スキタイ人たちは、彼らの祖先の地である東方のアジア奥地から黒海に移住した」としています。
スキタイ人が世界史に登場したときから、スキタイとは「恐るべき破壊力」を意味し、ヘロドトスによると、黒海北岸へのスキタイの領土拡張は、先住者のキンメリア人を追い出し、その無人となった地域を占領したことでなされたといいます。まもなく、スキタイ人自身は侵略の目的で南に移動し、カフカスを通過し、メソポタミアに侵入しました。アッシリアの年代記『王統表』によれば、このことは前7世紀の70年代に起こったとされています。

一方で『ケルト神話』においては、「ケルト人は、紀元前1500年前までに中央アジアからヨーロッパに移住してきた民族で、馬に引かせた戦車(チャリオット)を使う。」という特徴があり、紀元前500年頃には、ヨーロッパ全土に広がり、ブリテン島、アイルランド島に住み着くようになります。
彼らはローマ人からは『ガリア人』と呼ばれ、一部はローマの傭兵として活動するようになります。
以上のことから、欧州におけるケルト人に「赤毛」が多いのも中央アジアとの混血からくるもののように思えてきます。

しかし、ここまで書いてきて、「ではスキタイがケルトになったのか?」との疑問がでてくると思いますが、さらに奥があるようで、スキタイと行動を共にしていた別の種族がいたようなのです。

ケルトと言えば、「ドルイド」と呼ばれる祭祀(知識階層)を受け持つ政治指導者が重要な役割を担っておりますが、カーストで言えばバラモンに相当します。その観点から見ると、スキタイはクシャトリアにあたり、ケルト(ガリア)社会は他のインド・ヨーロッパの民族にも見られるような知識層(祭司)・騎士・民衆の三層構成を成していたようです。
少なくとも、ドルイドにあたる種族はスキタイではないのですが、ケルトを理解しようとすると、公開情報のスキタイやアラン人、イアジュゲス族などのクシャトリア階級から見ていく方がわかりやすいようなので、しばらくはこのまま続けます。

ところで、現在の西側諸国、主に西ヨーロッパ世界は古代ローマの継承者ですが、古代ローマに影響を与えたのはギリシャ文明です。そして、上述したように、そのギリシャに多大なる影響を与えたのが「古代人スキタイ」となると、クリミアの地の重要性がより一層増してくるように思えます。
かつてスキタイの拠点としてネアポリスが置かれていたクリミア半島を掌握することは、世界史的にも重要な拠点を手中に治めることになるでしょうから、NATOにとってもロシアにとっても、未来をかけた戦いとなっているのではないでしょうか。


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