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ケルト人と謎の古代人スキタイ(8)

ここで簡単に、ケルトに関する年表を示しておきます。

紀元前3000年 巨石文化
前3000年から2500年 ストーンヘンジ
紀元前2000年から1500年、インド、ヨーロッパ語族ヨーロッパ定住。
紀元前750年600年 ハルシュタット文化。(岩塩採掘センターとして栄える)
紀元前6世紀 ブリタニア、アイルランド、イベリア半島への最初のケルト人移動。
紀元前4世紀 ケルト人のローマ占領。ケルト人使者ドナウ川でアレクサンドロス大王と会見。
紀元前2世紀 ケルト人の衰退。ローマによるガリア征服が始まる。
紀元前58年から54年 カエサルのガリア遠征。カエサル軍ブリタニアで戦う。ローマ軍のブリタニア制圧。
紀元43年 ローマ人ブリタニア南部を占領。
ハドリアヌスの城壁。2世紀末ケルト人ローマによってアルプスの北に押し返され南下が止む。
紀元 225年、ディオ・カシウスがローマ史を著す。
4世紀 ブリタニア西部にアイルランドのケルト人が侵入(スコット人)。
5世紀初頭 ケルト人(後のブリトン人)コーンウォールからアルモリカに移住。
410年 西ゴート族のローマ侵入。432年セントパトリックアイルランドへ布教。
5世紀 ブリテン王アーサー。
450年頃 ブルトン人の地、ブルターニュ形成される。
499年 歴史伝では、アーサー王、ベイドン山の戦いでサクソン人を破る。
787年 バイキングブリテン島に来襲。
843年、アルピン王ピクト人を支配下に入れ、スコットランド統一
1532年、ブルターニュ、フランスに併合、
1506年 ウェールズ、イングランドに併合

ヨーロッパの文化は、古代ギリシャ・ローマのヘレニズムと、ユダヤ・キリスト教のへブライズムの世界観を二本の支柱として完成したと説明されています。ヘレニズムが体現するのは、哲学や科学、演劇など学芸であり、書き言葉の文化となります。そしてヘブライズムが体現するのは「はじめに言葉ありき(ロゴス)」のフレーズが表すとおり、こちらもロゴスの文化であります。
その一方、ヨーロッパの文学や絵画を見回すと、中世諸国に流布したアーサー王伝説がそこかしこに満ちています。
魔術や、全身緑色の森の人の姿や、19世紀の詩人ハイネが流刑の神々と呼んだ妖精(エルフェ)といった想像力の産物は、キリスト教とギリシャ思想だけでは説明ができません。ケルト文化はこの説明できない要素を多分に担っているのです。例えばケルトの神話には、妖精や異界の存在の不思議な力によって、この世界が常に変化にさらされていると言う脅威の物語が語られており、唯物論的一神教世界とは異なる世界観が垣間見得ます。

欧州におけるケルト文化は、2500年以上の歴史があると言われています。
古い文化ではありますが、その原点にある古代ケルト人は、文字を持たず、自ら歴史を書き残さなかった事により、謎につつまれた存在でもありました。ケルト人は文字の資料はなくとも、その神話や美術に触れる時、自然、生死、時空間などに対する感覚に、私たち日本人にも感じることのできる共通する精神性があるようにも思えるのです。

見出し画像は、「ケルズの書」と呼ばれているもので、三大ケルト装飾写本のひとつとされ、アイルランドの国宝となっております。世界で最も美しい本と呼ばれているものです。ケルト美術は唯一の真実を掲げる表現を嫌い、1つの存在が様々な意味のひしめく場となって変化するという特徴をもっているようです。

「ケルト」を語る時、類似的に用いられる「ガリア」についてですが、紀元前4~3世紀のカルディアの歴史家「ヒエロニュモス」は、ケルトイ(ケルト)とガラタイ(ガリア)は同義語であるとしています。
また、カエサルの『ガリア戦記』では、「ガリア人の一部がケルト族である。ただしイベリア半島のケルト族はガリア人ではない。という言い方もしているようです。
そして、前5世紀のヘロドトスは、北方人は西方の「ケルトイ」と東方の「スキタイ」という表現を用いています。
さらに、後2世紀、アレクサンドリアの天文・地理学者プトレマイオス・クラウディオスは現在のフランスを「ケルト・ガラチア」、イベリア半島のケルト文化圏を「ケルティケー」、小アジアを「ガラチア」と呼びました。

英語やフランス語が確立していない10世紀頃までは、ブリテン島をブリタニア島と呼び、ブルターニュをアルモリカと表現しており、「アルモリカ」は落合史観の門弟には、ウバイド西極の拠点として馴染み深いものとなっているかと思います。

ブルターニュで有名な巨人ガルガンチュアに関して、19世紀後半のケルト学者アンリ・ゲドスによると、ギリシャ神話の英雄ヘラクレスのガリア版の名残だとされています。
これに関しては、帝国ホテルの設計者であるフランクロイドライトは、自身を円卓の騎士の末裔であると公称していますが、帝国ホテル1階にあるホテルショップの「ガルガンチュア」という名称もフランクのルーツであるケルトを意識したものではないかと思うのです。

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