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HIVより怖い(?)HPVの話

最近ネットフリックスでシングルアゲインを見ていたら、主人公が若いゲイとセックスするシーンで、若いゲイが「PrEPをしているからコンドームしない」と言って、それに対して主人公が「性病はHIVだけじゃないし、~」とコンドームを付けることを進めると「君は姑みたいだな」と言われるシーンがありました。

最近のゲイのリアルな姿なのかもしれません。確かに「PrEPをしている=コンドーム無しでOK」みたいに考えてしまうかもしれないと思います。
でも、本当に性病ってHIVだけではないです。ある意味、もっと怖いと言えるかもしれない性病もあります。

HIV以外のやっかいな性病

以前の記事で、HIVになる前に一度性病に罹ったというような書き方をしましたが、すみません、嘘でした。1回ではありませんでした。
カウントしていないもので、クラミジア2回、毛じらみ1回がありました。
ただ、クラミジアも毛じらみも、薬を使えば治せましたし、ゲイもストレートも男も女も関係なく、割と罹っているいる人が多いものだと思うので、正直言ってそれほど印象に残っていませんでした。確かに、発覚したときは「性病になっちゃった。。」とショックを受けましたが、喉元過ぎれば熱さを忘れるといった感じでした。もちろん、クラミジアもなかなか完治しない場合もあるようなので侮ってはいけませんが。

それとは別に、僕に心身ともに大ダメージを与えた性病があります。それはHPVへの感染です。

尖圭コンジローマの恐怖

HPVと聞くと、ワクチン関係のニュースで子宮頸がんの原因となるウイルスであるということを知っている人は多いと思います。
HPVは子宮頸がんの原因にもなるのですが、決して女性だけの話ではないのです。

まず、HPVは色んな型があるらしく、がんを引き起こすタイプのものと、その他に尖圭コンジローマを起こすものがあります。尖圭コンジローマは性器にイボイボを発生させる病気です。イボ自体は悪性の腫瘍ではないのですが、見た目が悪いし、患部が傷つきやすくなり他の性感染症にもかかりやすくなります。
「おち〇ちんがカリフラワーみたいになる」とか表現されているのを聞いたことがありますが、酷い場合はそういう状態になるのでしょう。

尖圭コンジローマを検索すると性器への感染の話が沢山引っかかると思いますが、感染するのは性器だけではないのです。肛門・直腸にも感染するのです。そして僕は以前、直腸に尖圭コンジローマをうつされたことがあるのです。
以前別の記事で肛門科に嫌な思い出があると書きましたが、それは尖圭コンジローマの時のことで、本当に心身ともに大ダメージを受けて、死んだ魚の目をして抜け殻みたいになっていたのですが、その時の詳しい話はまたいつか別の記事で書こうと思います。

簡単に書きますと、直腸に尖圭コンジローマが発見されると「肛門を使った性行為」を疑われます。肛門にカメラをぶっ刺された状態でモニターに映し出された醜悪なイボを見せられながら、専門家である医師と看護師に囲まれて「あなたは肛門を使って性行為をしますか?」と聞かれます。いきなり逃げ道が完全ふさがれた状態で強制カミングアウトをさせられるようなものです。
そして、尖圭コンジローマは飲み薬では治せないので、外科的な治療が必要になります。男性器であれば、液体窒素でイボを取るような治療になって、それほど心身の負担が大きいものではないようですが、直腸にできてしまうと、入院して手術をすることになります。HPVに感染した粘膜を焼きごてみたいなもので焼くのです。3日間くらい入院して、手術の後は当面お尻にガーゼを当てて過ごすことになり、排便のたびに激痛を味わうことになります。一度の手術で取り切れない可能性も高く、僕の場合は二度入院して手術しました。しかも、悪い場合は、手術の後に狭窄を起こしてしまい、排便が困難になる場合もあるようです。
入院して手術をするので、当然、お金もかなりかかります。

「肛門性交をして感染症にかかって直腸にイボイボができた」なんて絶対に誰にも言えない、と思い、家族にも友人にも誰にも言わず、こっそりと入院しました。めっちゃ孤独だし、自分のバカさに打ちひしがれるし、さらに悪いことに病院の人が結構差別的な対応を取る看護師が多かったんです。
HIVを診ている医師や看護師はゲイへの理解もあって、すごくメンタル面も考慮した対応をしてくれるのですが、肛門科はそんなことなかったです。少なくとも僕が入院した病院は控えめに言って最悪でした。また詳細はいつか書きたいと思いますが、クローズドなゲイである僕が、初めて社会で明確な差別を受けたと感じました。
今はもっと理解が進んでいることを切に願っていますが、病院選びは気を付けたほうが良いと思います。

とりあえず、尖圭コンジローマが直腸にできた場合に心身にどれだけのダメージを受けるか、ある程度想像していただけたのではないでしょうか。

他の癌のリスクを上げる

今回の記事を書く際に、そういえば尖圭コンジローマの治療をしている際にネット調べたとき、「HPVは肛門癌のリスクを高める」という記事を読んだな、と思い出し、念のため調べてみたら以下のような記事がありました。

肛門がんと診断された方のうちHPVに感染が見られたのは約80~90%だそうです。肛門癌の人を検査していたらHPVに感染している人が多かったということで、HPVが肛門がんを引き起こしているのか、因果関係がハッキリ書かれていないのですが、すくなくともHPVが肛門癌のリスクを高めるのは間違いないのでしょう。

また、HPVは陰茎癌のリスクを高めるそうです。詳しくは、以下の記事を参照してください。

HPVと聞くと、子宮頸がんに関する情報が多いので、男性は関係ないと思ってしまうかもしれませんが、男性もHPVによって発がんリスクが高まるのです。尖圭コンジローマでイボが出来るだけではなく、恐ろしい癌の原因になるのです。そして、特に肛門を使った性行為をするゲイは、そのリスクが陰茎と肛門にあるのです。

HPVワクチンのすすめ

女性にはHPVワクチンの接種が推奨されていますが、今のところ男性に対してはあまり積極的に推奨はされていないようです。
ただ、意識の高いストレートの男性やゲイも最近はHPVワクチンを接種したことをSNSなどで発信されているのを見かけます。友人の中にもHPVワクチンを受けたことをツイッターで発信している人がいて、思わず「偉い!HPV怖いもんね!」て反応しそうになりましたが、尖圭コンジローマの件は秘密なので、ひっそりと「イイね」をしておきました。
僕も今更手遅れかもしれませんが、HPVワクチンを接種しました。
4価(4種類の型のウイルスに効く)ワクチンと、9価(9種類の型のウイルスに効く)ワクチンがあるのですが、なぜか僕が接種した病院では「男性は4価しか打っていない」とのことで、4価のワクチンを受けました。
一定の期間を空けて3回打たないといけないことや、保険がきかないなど、ちょっとハードルはありますが、やはりワクチンで予防できるものであれば、予防しておいた方が安心ではないかと思います。


リスクの高い行為をしてHIVに感染している手前、僕が姑のようにお説教をするようなことは出来ませんが、
HIV以外にも厄介な病気があって、その中にはワクチン接種で予防できるものもあるっていうことをお伝えして、皆さんの素敵なセックスライフの一助になればよいなーと思います。
ところで、性病って、学校では学ばないですよね。とても大事なことなのに。僕の世代ではなかったけど、最近の教育では性病のことも勉強するのでしょうか。罹ってから「こんな病気があるなんて!」と存在を知るのではなく、正しい情報を出来るだけ早い段階で提供してもらえる社会だと、性病に苦しむ人を減らせるのではないのかな、と思います。



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