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「だからどうということではない」話

「だからどうということでもないのだけど」
そう言って、彼は突然話し始めた。

どうやら、長年両片思いをしていた相手と、ついに関係を進める、ということらしい。

普通だったら『おめでとう』なのかもしれない。
だけど、彼は、わたしが長年片思いをしている人だった。

う、痛い。


彼とは5、6年の付き合いになる。
密な時期もあったし、その時々で「彼女になりたい」「パートナーになりたい」と伝えていた。

だけど、彼はずっと彼女が好きだった。
彼女も、その時々で彼が好きだった。

彼らはすれ違いな両片思いをしていたし、誰のものでもない彼なら、いつかこちらとの関係を進めてくれるかもしれない、と淡い期待をしていた。
そう。相手に期待していたんだ。

なので、ついに彼らが関係を進める、と聞いて、とてもショックだったし、もう終わりなんだと、終わらせなきゃと、思った。

だけど、その彼とはかなりの時間を一緒に過ごしてきた。
共通のコミュニティもたくさんある。

『ここからどうしたらいいんだろう。』

と、しばらく考えていた。



そこで気づいたのは

『だからどうということではない』

という言葉だった。


彼は、彼女が好きで。
わたしは彼が好きで。

その関係性は変わっていないのだ。
だから、どうということはないのだ。

そう考えたら、彼とわたしの間には何も変わることはなかった。
(わたし個人にはもちろん変化はあるのだけど。)

そう考えたら、彼との間で何か行動や言動を変えようとか、そういうことは不要な気がした。
気まずさだって不要だし、わたしが彼を好きという気持ちを封印することも不要だと思えた。

恋愛は、相手ありきのことで。
一人ではできないし、相手への何かを求めてしまう。
でも、わたしは一人で恋をしているだけだから。
相手に何かを期待したり求めたりは不要なんだ。

それは、逆も然り。
わたしも相手から何かを求められることも期待されることも不要なんだ。
無理に離れることも、気持ちを忘れようとすることも、しなくていい。

うん。
『だからどうということではない』んだな。


彼と彼女が一緒にいるところを見るのはきっとすごく辛いだろう。
だけど、そんな未来を想像しても心が痛いだけだ。

一旦、目の前にある彼との時間を、変わらずに大切にしていこうと思っている。


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