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『ドローイング・ドローイング』について

これは私と彼女 ふたりの日常の記録である。


私は20代の ごくごく普通のレズビアンだ。
現在、都内の某所にてパートナーである彼女と共に暮らしている。

私と彼女は 交際を始めてから1年が経過しており、同棲を始めてからも
もうすぐ1年が経とうとしているところだ。
大きな喧嘩もなく毎日がとても穏やかで 順調な日々を過ごしている。
順調すぎると言ってもいいくらいかもしれない。

「こんな日々がいつまでも続けば…」
幸せを噛み締めている人ならば誰もがそう思ったことがあるだろう。
私も例外ではない。
彼女との幸せがこれからも続いていけばいいと思っている。

しかし私たちの関係とは不思議なもので
どれだけ互いを愛し合い
互いを「パートナー」「ふうふ」だと思っていても
同性婚の出来ない現在の日本においては 戸籍上は赤の他人である。

同性同士の結婚を認めないのは「違憲」という判決が
札幌地裁で出たことが記憶に新しい。
判決が出たあの日、彼女は職場から私に電話をかけてきた。
「違憲判決が出た。やったよ」
そう言った彼女の声は嬉しさのあまり少し震えていたように思う。

この判決は同性婚実現に向けた大きな一歩であったことは
間違いないだろう。

しかし私たちはまだまだ他人のまま。
私たちが「ふうふ」になるには まだまだ道のりは長そうだ。

では、どうしたら私たちの関係は変わるか?

そう考えた時に真っ先に頭に思い浮かんだのは

「自分たちの存在を可視化すること」。
「声をあげ続けること」。

単純なことのように見えて意外と難しい行為。

同性愛者は世界にごくありふれた存在ではあるが
異性愛前提で動く世の中では非常に可視化されにくい存在でもある。

これらの行為の実現のために 私は真っ先に
私と彼女の存在を「絵」を通して可視化しようと考えた。
私は「絵描き」だ。
絵描きだからこそ こういった可視化の仕方がある。そう思ったのだ。

「声をあげ続けること」に関しては
表現において「線」に主眼をおく「ドローイング」で私と彼女を表現し
枚数を多く重ねることを目的とすることにした。

表現方法が決まったら、あとは何を描くか。

私と彼女の何気ない日常を記録していけばどうか。

何気ない日常。

それは彼女と一緒に歩く時にのぞく横顔だったり
彼女が大好きなゲームに夢中になっている時だったり
ふと私と抱き合う時だったりするかもしれない。

そんな日常を少しでも多く切り取り、発信していこうと考えた。


『ドローイング・ドローイング』は私たちレズビアンカップルの
日常を切り取り、発信していくシリーズとなる。
どれだけ多くの作品が生み出されるかまだ分からないが
私にとって絵を描く上で非常に大きな転換期になりそうな気がしている。

この作品が一人でも多くの人の目に触れますように。

そう願って作品を生み出し続けたいと思う。


2021年4月1日 吉野まゆむ


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