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Hello, Goodbye


永年一緒にプレイしてきた楽器は、永年連れ添った相棒みたいなもので。

ここ↓でも紹介した、Gibson / Les Paul Bass(以下、レスポール君)。

購入したのは、20年以上も前。

当時学生だったボクは、なけなしのお金3万円だけを握りしめて、大阪は心斎橋の楽器屋へ。
先輩から「頭金さえなんぼか入れたら、無金利でローン組ましてくれるから」と。
いま覚えば、こんなあやふやな情報でよく買いに行ったよな…。

楽器屋の店員さんはとても威勢がよく、気前がよかった。
「好きなだけ弾き倒したらええで〜」
なんて言いながら、一緒に行った仲間は次から次にいろんな楽器を試奏しまくっていた。

ボクはといえば、奥の高いところに吊るされていたレスポール君に一目惚れ。
「…あのぉ、あれ弾いてもいいですか?」
「おぉ、兄ちゃん、いい目してるやんけ。もちろん、ええでぇ」

それは、とても美しい赤いサンバーストのボディで、黒くしなやかに伸びるネックと、その先の重厚なヘッドと対称に取り付けられたペグが、とてもかっこいいベースだった。

手に取った瞬間、
「これにします」
「いや、弾かんでええんかいっ」
大阪では礼儀であるツッコミをしっかり受け止めて、音を出す。
(音の飛びがいい。サステインも艶やか。いいなぁ)
「兄ちゃん」
「はい」
「ええ音するやろ?これな、ほんまやったら30万はするやつや」
「えっ…マジすか…」
「けどな、今日は特別に半額でええわ」
「マジすか!」
なけなしの3万円を頭金に残金を12ヶ月分割で購入(無金利)。
とっても重いやつなのに、帰り道の足取りは軽かったのを覚えている。

あれから二十数年。

たくさんのライブもレコーディングも、すべてレスポール君と一緒だった。
でも、この子↓を購入してからというもの、音もボディも重たいレスポール君は、すっかり弾く機会が失われてしまっていた。

ショートホーン君

相棒のようなものだからこそ、触れてやれていないことに悩んでいた。

音が強すぎてDTM環境だとすぐ音が割れる。
ボディが重くて、ネックが長くて、狭い部屋では取り回しが大変…
悪いところを挙げればキリがない。
でもそれは、同時に彼のいいところでもあって、いまの環境だとそれを持て余し、彼を弾かなくなっていくのが、申し訳なくて…

そんなある日。

近所の楽器屋の奥の高いところに吊るされていたギターに一目惚れ。
「…あのぉ、あれ弾いてもいいですか?」
「もちろん、いいですよ」
「これって…L-00ですよね。小さくて軽くていいですね」
「はい。でも音は流石のギブソンですよ」
「入荷されてるのあんまり見たことが…」
「はい、つい最近たまたま入荷されたんです」
軽く弾いてみる。
手に馴染む。
音に心が馴染む。

その晩。
悩んだ挙句、レスポール君とサヨナラする決意をした。
要するに下取りに出す、ということなんだけど、ここで眠るより次の持ち主にちゃんと弾いてもらってほしい。
勝手な理由だと、わかってはいるけれど。

最後の夜、ほんの少しだけ弾いてみる。

3フレットのところに傷がついてる。
「そうそう、これ、買って初めてバンドで音合わせたときに、ハイハットが倒れてきて、ハットが刺さったんだった」
手に馴染む。
音が心に馴染んでいる。
「あぁ、やっぱりいい音だ。しっかり弾いてもらっておいで」

次の日。

レスポール君とタカミネ / DMP50S WR(↓下記事参照)を両手に抱えて、近所の楽器屋へ。

待つこと30分で、下取り金額が出てくる。
「タカミネは〇〇円です」
「はい、そんなもんですよね。…レスポールは、どうでした?」
「レスポールですが…Gibsonですし、珍しいものですね。でも調べるとちゃんと出てきて、どうやら97年製ですね。
 当時から14万円で販売されていて、製造はもう終わってるんですけど、いまも定価は変わらず同じくらいですね」

 





 ん?
 
 



「なので、〇〇円でいかがでしょうか」
「…えーと、定価が?」
「14万円です」


 




あの威勢のいい大阪の店員、半額って言いながら1万円ぼってるやんけ!!


 




とかなんとか、言いながら。

Goodbye, レスポール君。
Hello, Gibson L-00 Standard。

ハードケース付き
美しいサンバーストのボディ
Gibson L-00
ヘッドとペグ
ブリッジはこんな感じ
おまけのピックケース
どこから見ても美しい

レスポール君の成仏のためにも、弾き倒してやります。




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