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『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』と「美しい」+「です」(感想)

ヴァイオレット・エヴァーガーデンはハードルが高かった。

有休に好きなことすると、次の出勤日が辛くなるのであまりしないんですが、するとやっぱり良いですね。してしまった。

昨年(2020年)の春に録画するだけして放置していた「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の再放送を観ました。

こう、ただでさえ新しい作品に手を出すのってハードルが高いのですが、精神的な負荷が大きいとわかっている作品はなおさらで、その筆頭が「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」でした。

それが、金曜ロードショーで特別編集版等々を放映するに当たり、次週予告ということでざっくりあらすじを紹介していたシーンがあったのをたまたま目にして、それで何となくイメージがつかめて、ハードルががくんと下がりまして、それで観ることができました。

精神的な負荷が大きいという見立てが正しかったことがよく分かりました。
ずっと泣いていた。途中までは「ああ……本当に観て良かった……映像も音楽も良い……」というくらいだったんですが、第5話で一気に来られた。

昨日もさんざんスタァライトロスの話をしたのですが、連日こうも凄まじい作品に接すると、さすがに気持ちが落ち着いてきますね。
(と思っていたら、劇場版レヴュースタァライトの三方背BOXのデザインが公開されて一気に引き戻された。何あのクランクアップ後みたいな表情。うーわっ。)

感想1:第10話と第5話の破壊力

第5話の話をするに当たり、思い出したのが下記のツイートでした。
(全く観ていない時にタイムラインに流れてきて「へえ……」というくらいにしか受け止めていませんでした。)

テレビアニメを一通り観た後に改めてこのツイートを見ると、的を射すぎというか、これを言語化できていることに感服してしまいました。
さらに、この視点で概観すると、全体の作りのみならず、各話のエピソードもかなり定型的な文脈に落とし込むことが、しようと思えばできるなあとは少し思っていました。
(特に、ストーリーラインだけに着目すればオチが見えてしまうということもあります。私は第10話がそうでした。)

けれど「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」では、その定型的な文脈から飛び立って、例えばヴァイオレットの、例えばアンやオスカーの、それぞれの物語が確立されているわけで、そんなことは全く問題にならないのですよね……
(とはいえ、アンについては50年後までの手紙まで認められているとはさすがに思わなかった。)

それを完全にしてやられたのが、当の第5話でした。
シャルロッテ姫とアルベルタの関係性。俗な物言いをすれば年の差百合ともなんとも言えるのですが、まあこれがもう本当にもう……

私としては、ここに大いなる百合があるとは思っているのですが、しかし同時に、シャルロッテ姫とアルベルタとダミアン王子と、3人とも応援できてしまう。悔しい……

感想2:第8話の「美しい」+「です」

また、(本当に話したかったのは標題のとおりこちらなのですが)一番個人的に「おっ」となったのは、第8話。以下のシーンです。

(女主人の開いている露店に並んでいるブローチをヴァイオレットが見て)
ヴァイオレット「少佐の瞳と同じ色です。これを見たときの、こういうのを、なんと、言うのでしょう。」
女主人「どうです。美しいブローチでしょう。」
ヴァイオレット「うつ、くしい……」
女主人「ええ!」
ヴァイオレット「うつ、くしい、は知りませんでした。きれい、と似ている言葉ですか。」
女主人「そうだね!」
(場面が変わって、川沿いを歩く2人)
ギルベルト「君の瞳と同じ色でなくて良かったのか。」
ヴァイオレット「いいえ。これが一番、美しいでした。言葉がわからなかったので、言ったことはありませんが、少佐の瞳は、出会った時から、美しいです。」
(全て筆者書き起こし)

この「美しいでした」と「美しいです」について。
ここに、【形容詞】と【断定の助動詞の終止形の丁寧体「です」】という構造の日本語の難点が如実に表れているわけですが、この難点をこの会話の中で瞬間的に習得したとは(ヴァイオレットとはいえど)思いがたく。

そうすると、ここの「美しいです」も、「美しいでした」と同様、あくまで上記の構造から逆算した形、あるいは「美しい」という単語を名詞的に用いる形からは抜けていないのだろうと思います。

それなのに、結果として「美しいです」という自然な形になっているようにも見えるという妙技。たまらなくないですか……?

さらに、この妙技が更に光るのが第13話。
ギルベルト少佐の母(ブーゲンビリア夫人)に出会う場面で、上記のブローチのシーンを回想します。

夫人「(ヴァイオレットの示したブローチを見て)あの子の瞳と同じ色だわ」
(回想)ヴァイオレット「少佐の瞳と同じ色です。」
夫人「美しいわね。」
ヴァイオレット「……はい。」
(回想)ヴァイオレット「言葉がわからなかったので、言ったことはありませんが、少佐の瞳は、出会った時から、美しいです。」
ヴァイオレット「……美しいです。」

この時のヴァイオレットは(言わずもがな既に指名も入る程に自動手記人形としての地位を確立しており)、上記jのブローチのシーンとは言語能力も段違いです。
そのヴァイオレットが、自分の言っていた「美しいです」をどう思うか(それ以降に、少佐との会話や報告書を通して文法を習得した過去をどう振り返るか。)、その上で今「美しいです」と言ったか

それを考えるだけで、もう私がどうして良いか分からない。

外伝と劇場版を観るのはまた明日(以降)に。その順番で見よと周囲にめちゃくちゃ強く厳命されましたが、果たして……

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