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ものを覚えるということ(日常の記憶力)

ものを覚えるということについて、僕が今、勉強の合間の息抜きでしている新聞配達(夕刊のみ)に即して考えてみたいと思います。

僕の配達区域は1.5km四方ほどと結構広いです、部数は100部強あります。これを1時間半で配っています。

どこの家に新聞を入れるかを覚えるのは、勉強で図表や年号を覚えるのとはかなり違います。

まず、

1、法則性がない

です。配達先の家からして偶然に決まりますし、家の配置、大きさ、間隔、形、全てが、誰か一人の人物による統一されたコンセプトや目的に沿って作られたものではありません。無数の要素が積み重なってできた、一つの歴史的産物であり、現実です。

次に、

2、それぞれの覚える項目に唯一無二の個別性がある、

ということです。番地はある程度順番に並んでいることもありますが、たいていは苗字や特徴(最初の方の~曲がってすぐの山田さん、○○公園の近くの犬がうるさいところの田中さん、..etc)で覚えます。

不思議と法則性のあり過ぎる整った区画の番地や集合住宅の部屋番号の方が覚えにくいです。この点、勉強とはかなり違うのかもしれません。


以上のような位置的にバラバラで個別性のある、「新聞を入れる家」をどうやって早く、間違いなく配れるように覚えるか。

通常は、まず、順路を決めます。その方が、覚えやすく、漏れも少なく、効率もよいからです。そして、新聞屋さんの場合、地図とは別に順路帳というのを作ります。それは、次のようなものです。

[スタート]
 市田
[十字路右折] [右手3件目]
 二岡
[斜め向かい]
 佐川
[隣]
 品川
[T字路左折] [左2件目]
 後藤
[Uターン] [ト字路直進] [T字路右折]
[左手1件目]
 六車

・・・

(実際は[]カッコ内をそれぞれ記号で書きます。)

そして、最初の数回だけ前任者に付いて行ってポストの位置等を覚え、あとは上記順路帳を頼りに一人で配ります。大抵の人は1週間くらいで、順路帳を見ずに配れるようになります。

この件数が、多い人だと200件、300件あったりもしますが、覚えられないことを苦にしている配達員を僕はこれまで見たことがありません。

郵便配達をしていたこともあるのですが、その時もほぼ同じ要領でした。職場の郵便配達員はみんな、自分の担当区域内の千数百世帯の位置、特徴、名前を全て覚えていて、郵便物を順路順に束ねる内務作業、外での配達作業を基本、全て一人でこなしていました。


こういった、おそらく誰もが駆使している日常の記憶力は、工夫すれば勉強にも生かせます。言語の学習には間違いなく生かせると思います。

20歳の日本人が理解できる日本語の単語は、平均で45000~50000語だそうですが(ウィキペディア「語彙」の項目より)、こういった言葉は一人一人の頭の中では、50音順に整然と並んだ国語辞典の記述とは違い、住宅地にバラバラに並んだ山田さん宅や、犬のうるさい田中さん宅のように並んでいるはずです。

いきなり、「可憐(かれん)」ってどういう意味?って聞かれても答えられない日本人は多いと思いますが、

「可憐な少女」

とか

「可憐な花」

といった「可憐」という言葉に連なる他の言葉やイメージが並んでいれば、「可憐」の意味内容を単に「かわいい」といった表面的な意味だけでなく、かなり細やかなニュアンスまでも含めて理解できます。20歳の日本人の平均語彙には間違いなく、「可憐」という言葉は入っているはずです。

人間の脳は、

1、法則性のないリアルな空間(例:地形、言葉の具体的な文脈・状況など)に配置された、
2、個別的なものの連なり(例:山田+田中(犬)+原田・・、可憐+少女(白くてヒラヒラの服)・・)

であれば、1万個でも2万個でも簡単に覚えられるようにできています。

今の僕に関心のある司法試験でも、仮に試験時間内に答案を書くために覚えなければいけないことが1万項目あったとしても、この種の記憶力を活用して対応できれば全然大したことないわ~と楽観しています。


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