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歌の経験は法律の勉強に役立つか

・・もちろん役立ちません(笑)

しかし、確か5年くらいかな、惰性で続けてきたことでも思い返してみると、いろいろ気付かされることもあるのですよね。そんな話を今回はしてみたいと思います。

僕には推しの歌手がいます。20年くらい前のジブリ映画「猫の恩返し」の主題歌を歌っていた女性シンガーソングライター【つじあやの】で、その映画が再放送される度に多かれ少なかれメディアに取り上げられたり、歌のランキングが上がったりするおかげもあって、今でもライブ活動をされています。

僕は彼女の歌が好きで好きで仕方がなく、ファンになって10年以上経つのですがいまだに毎日聴いています。派手さはないのですが、まるで古典の文章のように味わい深く、一貫して優しく、暖かく、心地良く、こちらの心臓の鼓動とか血の温度まで全部コントロールされ、持っていかれるような、不思議な感じになります。彼女みたいに歌ってみたい、一人ウクレレで弾き語りするときでさえも、声の詳細、音の詳細、隅々までにあの不思議な感じを行き渡らせて、会場の人が静まり返るような、ライブ会場で泣いている子どももすーっと静かになるような不思議な一体感を再現してみたい・・などと、壮大な目標を掲げて、歌のレッスンに通い、ギターのレッスンを受けたりしていたのですよね。

つじあやのについては、公式のYouTubeでこれまで出された曲が公開されていますので、リンク貼っておきます。

レッスンですが、結論から話すと、全然身に付かなかったと思います。ギターは自分の不器用さが嫌になって半年も経たないうちに挫折、歌の方も、音程やリズムをきちんとする、ずっと音楽をしている方からして違和感なく歌うというのがどうしてもできず、また、自分で録音を聴いても、目標の彼女に比べると全然ダメってことだけはわかるけど何が悪いかはピンと来ない。何が足りないか自分で分からないから練習に身が入らない。そんなこんなで歌の方も、先生が出産のため休職されるのを機会に辞めてしまいました。

とはいえ、レッスンに通って先生の話を聴いたり、いろいろ試したりしているうちに、つじあやのの何がすごいかということに気付きはありました。

それを一言でまとめると、

その場その場の表現上不要なことは、絶対に出さない。いろんな意味で雑音が全くない

ということです。

つまり、聴く側にとって違和感を生じさせる要素が全くないということで、これは、リズムや音程が正確という技術的なことも含みます。それと同時に、本当はできることが多いにしても、それがそこで必要ないならば絶対に出さないのです。ダダダダダっっ・・とか超絶技巧でびっくりさせたり、誇示したりをしない(もちろん、それが必要な曲やシチュエーションはあり得ます)。だから傍目には、いつも本来できることの3割も出さずに、楽に、力を抜いて歌い、演奏しているように見えるのです。

これに気付いたのは、ギターのN先生のライブを見たり、レッスンで実際に話を聞いたりしたときです。

N先生は僕が実際ライブの演奏を聴いて、一番つじあやのの演奏と同じくらい心を動かされる方だなと思った方でした。エレキギターで昭和歌謡のバンドの演奏をされていたときも、クラシックで超絶技巧の曲を弾くときも、同じように心を動かされる方でした。

で、レッスンを受けると、先生の指導全体に一貫するメッセージは、速く、確実に、正確に弾けるよう、いろんなバリエーションの基礎練習を時間を惜しまず、徹底的にやる、ということでした。先生自身、3日も経たずに弦がダメになるような基礎練習を10何年もずーっと続けているということでした。

こればかりは筋トレと一緒で、何年もかけてちょっとずつできるようにするしかない、ということでしたが、僕が間近で見せてもらったときは、違う音階を正確に何百分音符で弾くとか、もう素人耳には音の切れ目はおろかその前後も分からず、水がバシャー!みたいにしか聴こえない、凄まじい速弾きでした。

でも、僕が取り組んでいた教材のお手本を弾くときは、書いてあるとおりのスピードと音の長さで、聴いてて退屈に思うくらい丁寧に、楽譜に書いていること以外は何も出さず弾くのです。あの何百分音符も、先生の感覚では同じように弾いてるんだなと思うと怖くなったくらいです。

実際のライブ演奏をする際には、楽譜に書いているより微妙に遅らせたり、速くしたりといったことを意識的にコントロールしているそうですが、練習ではとにかく、速かろうが遅かろうが、楽譜に書いている以外のことは絶対にしないということを徹底されてました。

こういったことから推測するに、おそらく、実際目の前に観客のいるライブ演奏において大事なのは、演奏中の瞬間瞬間で、その場で必要なこと以外は絶対に出さない、観客に違和感を生じさせない、そうすることで、N先生が表現として出したイレギュラーな要素が素人耳にも分かるくらいの質感でぐわー--っと襲い掛かってくるんだろうなと思いました。

100点満点とるためには、10000点取れるくらいの余力がないとダメなんだよ、ということを先生から教えられたような気がしています。

たぶん、個性とか、個別性が重要になる分野では、こういった損得抜きで時間も労力も注ぎ込み尽くすようなことがないとダメなのでしょうね。僕は音楽で、ここまで本気にはなれません。法律の勉強でならできそうですが、役に立つかと言えば、微妙です。逆に合格からは遠ざかる気がします。

最後に、布教活動。僕が一番好きなライブ映像です(笑)

一応、アルバムにも収録されています。

#大切にしている教え
#つじあやの
#ギター
#歌


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