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東北一周自転車旅(29)山形県米沢市〜福島県福島市

東北一周自転車旅
第29ステージ
山形県米沢市〜福島県福島市(2km・鉄道利用)

今朝は8時頃にホテルのバイキングで朝食。お昼にまた米沢牛のランチを食べたいと思っていたから、あまり食べ過ぎないように気をつけていたんだけど、結局結構食べてしまった。バイキングはあれもこれも気になって、つい取り過ぎてしまう。

このあとパンも2つ食べてしまった

朝食会場のスタッフのおばちゃんと雑談していたら、米沢には台湾の高校生がよく修学旅行で来るのだそう。どうして米沢なのだろう? あるいはどうして山形なのだろう? 温泉も行くのかな。台湾にも温泉あるしな。行程が気になる。

部屋に戻って30分くらい日記を書き、10時に出発。しかしチェックアウトして外に出ると、強い雨が降っていた。なので自転車で出かけるのは諦めて、フロントに荷物を預けて傘を差して歩いて観光に出かけた。米沢は上杉家の町だから、ゆかりの場所を見たい。

上杉謙信を祀る上杉神社の手前に、「伝国の杜(もり)」という巨大施設があり、この中に「米沢市上杉博物館」があったので、入ってみることにした。入館料は700円。

伝国の杜

日本史に疎いぼくは、上杉家というと上杉謙信の名前くらいしかわからないのだけど、どうもこの米沢市では、上杉謙信よりも上杉鷹山という人物を強く推しているみたいだ。博物館の外にも、「上杉鷹山をNHK大河ドラマの主人公に」みたいな推薦運動の旗が立っていた。

米沢市上杉博物館

シアタールームでは2つの映像(各17分間)が上映されていたので、最初に両方観ることにした。そしたらどちらも「米沢藩主・上杉鷹山がいかに名君だったか」という内容だった。それぞれおもしろかった。余談だが、博物館では映像資料を積極的に観るようにしている。映像はわかりやすくまとまっているから、概略を掴みやすい。そのうえで展示史料を見た方が、興味を持てるし理解が早まる。

上杉鷹山

かの有名な上杉謙信は、織田信長と同時代の戦国武将。対して上杉鷹山は、それから約200年後の人物。上杉家は関ヶ原の戦いで敗戦側についたため、会津(福島県)120万石から、米沢(山形県)30万石に減らされてしまったそうだ。それで財政赤字が続き非常に貧しい藩になってしまっていた。いかにこの困窮から抜け出すか、という場面で日本史に登場したのが上杉鷹山。17歳にして藩主となり、積極的な藩政改革を実行した。途中、隠居していた時期もあったが、生涯をかけて改革に取り組み、ようやく彼の晩年、産業と教育に力を入れた長期的な改革が実り、米沢藩は借金をほぼ返済し、プラスの利益が出てくるところまで持っていけたという。

アメリカのジョン・F・ケネディ元大統領は、最も尊敬する政治家として上杉鷹山の名を挙げたそうだ。そういうわけで、鷹山は米沢市民にとっての誇りのような存在になっている。そんな印象を受けた。きっと司馬遼太郎も『街道をゆく』か何かで鷹山のことを書いているだろう。帰ったら読んでみたい。

上杉神社

その後、サクッと上杉神社へ行って参拝してきた。そこにはあの、「なせば成る なさねば成らぬ何事も 成らぬは人のなさぬなりけり」という言葉の石碑があった。これ、上杉鷹山の言葉だったのか。そして藩政改革に向き合う彼の気持ちだったのだなということがようやくわかった。世の中ではこの言葉だけが名言として切り取られてひとり歩きしているから、発言の背景を知って腑に落ちた。

上杉鷹山の言葉だったとは

いろいろと勉強になった。が、博物館をじっくり鑑賞したためもう11時過ぎてしまい、「これは米沢でお昼を食べるのは無理だな」と判断した。

今日は福島市へ向かうのだけれども、その途中には標高1000メートルの峠があるので、電車で行くことにしていた。雨だからそもそも自転車ではリスクが大き過ぎるのだけど、仮に晴れていても、おそらく電車を使っていただろう。

当初は米沢から会津方面へ抜けていくルートを考えていたが、残り時間的に厳しいのでプランを変更した。米沢から福島に出て、そこから郡山、白河へと向かう。この旅の3日目にも通ってきた東北の玄関口、白河まで出れば、一応「東北一周」ということになる。

しかし、米沢と福島の間に立ちはだかるのが奥羽山脈。標高500〜600メートル程度であれば、力試しに登ってみるのはアリだと思っていた。だけど1000メートルの山は、今の自分には体力的にも装備的にも厳しい。最後まで登れないかもしれないし、気温がグッと下がるのも心配だ。もし途中でパンクでもしたら途方に暮れてしまう。そういうわけで、今回は安全策を取って輪行することにした。早く福島に着いて日記を書きたい、という本音もある。

ただ、電車の本数が少ないのだ。福島行きのJR山形線(奥羽本線)は、朝7時台と8時台に1本ずつあり、その次は13時08分発。さらにその次は夕方なので、確実に13時08発に乗りたい。

これからお昼を食べようとするとアウトになってしまうから、米沢牛は残念だけど諦め、自転車で2km走って米沢駅に向かった。そして輪行の準備をして、無事電車に乗り込んだ。

JR米沢駅
JR山形線

福島までは45分で着くが、こんなに勾配のある電車は初めて乗ったかもしれない。標高が上がっていくと、木々の色づいた山も見えて綺麗だった。

自転車が倒れないようリュックを重石にする

いちばん標高の高いところの駅名は「峠駅」だった。そのまんまだ。峠駅のホームに停車すると、120年以上の伝統がある「峠の力餅」という名物の和菓子を販売する「峠の茶屋」の売り子が声を轟かせながらドア付近にやってきた。すると何人かの乗客がサッと買っていた。停車時間はわずか30秒。一瞬の出来事だったが、風情があった。この駅でしか見られない光景。

峠駅
峠の力餅の売り子

そして電車はどんどん山道を下っていき、やがて福島駅に到着。これで福島から宮城、岩手、青森、秋田、山形と巡り、再び福島県に戻ってきた。

奥羽山脈を越えて福島盆地へ
福島駅。東北各県をぐるりと回ってきた

西口の駅前で自転車を組み立て、そこから徒歩1分のアパホテルに入った。しかしまだ2時半で、チェックインまでは30分待たなきゃいけなかったので、荷物だけ預けて東口の駅ビル内にあるスタバへ行き、夕方まで日記を書いていた。

福島駅のスタバで作業

18時に空腹に耐えられなくなった。そういえば今日はまともなお昼を食べていなかった。上杉神社近くの売店で、米沢の和菓子屋「永井屋」の「大黒舞」という大福を2つ買って食べた。「ずんだ餡」と「くるみ餡」の2種類。あとは駅の売店で買ったおにぎりも電車の中で食べたけど、それだけだったからいつもより早くお腹が空く。

日本のどこかに大黒舞さんは存在するだろうか

上品なものではなく、「早くて安くてうまいもの」をガッツリ食べたかったので、東口の「餃子会館」という店でラーメンと餃子を食べた。Googleマップで高評価なだけあって、かなりうまかった。Googleのレビューで平均4.0以上あればだいたい外れない。ここ数年、食べログはほとんどチェックしなくなった。

ジューシーでおいしい餃子だった

その後にようやくチェックインして風呂に入った。再び駅のスタバで作業の続きをしていると、21時前くらいに、福島在住の鈴木優さんが会いに来てくださった。

鈴木さんは、サッカーJ3の福島ユナイテッドFCで、フィジカル面の強化を図るS&C(ストレングス&コンディショニング)コーチをされている方。今回の旅にご支援もしてくださった。

鈴木優さん

以前ぼくの投稿をご自身のラジオ(スタエフ)で取り上げてくださったことがあり、そこから交流するようになった。ぼくの好きな本を3冊勧めたところ、すべて読んでくださり、感謝と感想を書いたメッセージを送ってくださったのも嬉しかった。ちなみにお勧めしたのは、『シンクロニシティ』『サードドア』『リーダーシップの旅』の3冊である。

鈴木さんとは職業は異なれど、価値観や境遇で共通するものがあり、今夜はサッカーやお仕事の話、生き方の話、お薦めした本に関する話などで時間を忘れて語り合い、素敵な会合になった。

また、ぼく自身の生き方も肯定・応援してくださり、励みになった。正直、旅が終わりに近づいてきているため、また現実に引き戻されそうで、今後について不安を感じることもある。

旅をしている最中は、シンプルに生きられる。自転車で長い距離を移動して、原稿を書く。その毎日の繰り返しで、もちろん身体はキツい。疲労はピークに達しているけど、ひとつのことに集中できる分、気持ちは楽だった。そのおかげで元気でもあった。

しかし家に帰ったら、この非日常の日々も一旦終わる。するとまた、「このままでいいのかな」とか「やっぱり普通に仕事して、ちゃんと稼がなきゃな」とかそういう思考に襲われるかもしれない。

だけれども、作家を目指してこの旅と発信のチャレンジを始めた以上、中途半端になったらいけない。不安や焦りもあるけど、葛藤しながら、チャレンジを継続していきたい。続けるなかで、開けてくる道があるはずだ。

今はすごく楽しいし、進む方向は間違っていないはず。自分が旅をして、発信して、それを喜んでくれる人がいる。元気になってくれる人がいる。たくさんの方からのメッセージやコメントを通して、それは事実としてあると実感している。だから、どういう形で継続的な収入に変えていくのかはまだ見えていないけど、なんとかしてこの生き方を続けていけないかと模索している。

そしてこの模索のプロセスこそ、ぼくは発信していきたい。すぐに成功しなかったとしても、理想を追い求めてもがく自分の姿を、発信していく。旅をしていても、旅をしていなくても、ぼくが命を輝かせながら書く文章にはきっと何かしら価値があると信じている。人を芯から温めたり、魂を鼓舞する何かが。だからそれを信じてやり抜いていく。

こういう姿勢を、少なくとも鈴木さんは肯定してくれて、応援してくれた。ご支援もしてくれた。それがぼくにとっては力になっているし、元気が出てくる。不安になることもあるけど、また頑張ろうという気持ちになる。全国各地でチャレンジしている方々と出会えるのも、挑戦することの価値のひとつだ。類は友を呼ぶ。こういう風に人と交流しながら頑張っていきたい。

お土産に福島銘菓の「いもくり佐太郎」をいただいた。栗と白あんを練り込んだスイートポテト、おいしかった。鈴木さん、ありがとうございました!

東北一周の旅は、残り2日。明日は郡山、そして最後は白河まで戻って、ぐるりと東北一周を実現したい。感謝の気持ちを持ちながら走ろう。

「なせば成る なさねば成らぬ何事も 成らぬは人のなさぬなりけり」

<今日のお金>
ラ・フランスジュース 320円
博物館 700円
大福 300円
電車賃 770円
おにぎり 146円
夕食 1200円
スタバ 460円
ホテル 5922円

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