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春の公園でみた、あどけない光景です

春の公園でみた、あどけない光景です

瓦礫が築いた階段を蒼ざめた陽がのぼります
崩れたアーチに鷗が下りベンチをみつめます

昨夜からずっと、トルソが座っているのです
前屈みのそれは微笑んでいるのか
苦悶に圧し潰されているのかわかりません

落ちた手がシャボンを吹こうとしています
子どもが麦のストローを渡しました
口がないので一緒にふぅしました
七色の浪漫が薔薇の噴水より高くあがります

天頂を仰いでいると海から霧が走りよります
霧笛の大音響、こんな近くは初めてです

煙る波間に、あたまが溺れてしまいました
赤い靴をはいた子が掬おうとしています

霞む芝生を失われた二足が其其すすみます
でも行く道を決められず、東の端と西の端で
立ちすくんで泣きだしてしまいました

陽が隠れ、日時計は時を見失いました

鎖に繋がれた黒い葬船はもう航海しません
それでも冷凍コンテナが運ばれ積まれます
朔日の今夜は道路が輸送車でぎっしりです

重くて悲鳴をあげたコンテナの亀裂から
一つまた一滴
沁みこんだ大地から
一つまた一泡
トルソが公園に漂流します

夜の宙から降るシャボン それに映る自分に
何をなすべきだったか問おうとした一瞬
トルソと交わる痛みに襲われました

陽がのぼるときまで、あのベンチにすわり
この点景をいれた大きな画について
語らうことができればと思います

【AN0TMB1】

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