しかし灰は降り続く
しかし灰は降り続く
睫毛にかかり瞬きするその
奥行のない世界に差しだす手爪の尖に
かすむ閑かな中庭を
埋めていく
私から立ちのぼり
私を空洞にしていくそれらは
読まれることのない手記の焼尽の痕跡であり
たなびく幾枚もの緞帳の向こうに
在るとは思えないものの降灰それ自身のうちに
靜黙となって身躯から締めだされる私の
選択肢のない事柄にかかわる希望を
物語ってもよいのか
灰はなお降り続く
踏む大地は私を押しかえさず
私の歩みは開傘しない錐揉なのか
異様な測位系の迷走なのか
立体座