ヨクト

たちどまると かなしみと愛 暴力といのりにみちた 加害性の深まる 不条理な世界がみえて…

ヨクト

たちどまると かなしみと愛 暴力といのりにみちた 加害性の深まる 不条理な世界がみえてきます ろうそくを持ち そのひとつひとつの物語ー小さい物語 大きい物語 その緊張ーを 詩というかたちで うけとめ 書きとめていくこととしました (noteは習作手帖です)

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お知らせ

2024/04/30  第1詩集「黄道のシンフォニア」を、パブファンセルフを通じ、AMAZONのプリントオンデマンド(ペーパーバック)にて刊行予定です。

    • 『詩と思想』詩作品 2024年3月号

       『詩と思想』2024年3月号(編集:詩と思想編集委員会、発行:土曜美術社出版販売 、2024年3月1日刊行)に、「欠けた太陽が炙りつづける街の中心を覆う黑體に」にて参加させていただきました(ただし、同書規格に応じ変更を加えたバリアントの詩篇として)。  掲載のお誘い、編集・校正、掲載誌ご送付など、あらためて編集委員会等関係者皆様に心より御礼申し上げます。  同書は、以下にてお求めいただけます。 ・土曜美術社出版販売  ご質問やご感想等ありましたら、メールにてお受けいた

      • 自明の破局をむかえる朱殷い海を渡り

        自明の破局をむかえる朱殷い海を渡り  渚をこえ強まる風沙が沙丘をうごかし  刻刻と貌をかえる荒地の際を漂う群蝶  殻殻と崩落し迷蝶が行きまどう廢墟群  深まる夜に燦めく蝶道の帶を腰にまき ひと足毎に広がる波紋を辿る先に靜む  祭船を解體し彼が組みあげる野外舞台  立ちのぼる篝火の火粉が月を朱く粧い  海鳴が幾度か乾沙に沁み始まる律動は 識閾を越境し音をたて橋懸を先導する  爆ぜる焚木、風の奥にたち上る長弓音 息をつぎ音階を移行する低音提琴の背 に人が立ちその左右にも到着する

        • それが倒れてくるとき、奔る亀裂の絶叫に

          それが倒れてくるとき、奔る亀裂の絶叫に背を蹴ら れ、自分がどこに在るのか、そこに在るのは何なの か、目にしているのは何か、何をみているのか、な ぜ蹴られるのか、見たことのない光景、記憶できる のか、それが倒れてくるとき、そこから自分がどの ようにしてどこのここへ移動し、私のあの小さな箱 庭はどうなったのか、爆撃音、散逸していく画像の 時間の軸を一本に纏め、そこに繋ごうとする自分が 何者であるかふりかえろうと、それが倒れてくると き、欠損だらけの絲鋸嵌絵に埋まり、それは何を寫

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          住家には水面の流れがある、澱みがある

          住家には水面の流れがある、澱みがある、溶けこむ 情愛がある、誰もいないこの時も、互いの心は気遣 い揺れ動いている、大きな内履に寄りかかる小履、 誰彼に昏む廊下の先の寝椅子に円くなる三毛、時お り流しを打つ水滴、天板に置かれる丸皿の食麵麭の 齧りかけ、模造牛酪のしみる、残しちゃだめ、もう ムリ、イヤぁ、食卓の端で燥ぐ親子を見つめる紫檀 の茶湯器の奥で微笑むいくつもの家族の寫真の、硝 子をゆがめる黑の濤は、砥粉色してはためく麗絲の かげか、壁掛の大画面が絶えず呟く音列の回析、点

          住家には水面の流れがある、澱みがある

          棺をひく者がいる、彼は一歩を踏みだす度に

          棺をひく者がいる、彼は一歩を踏みだす度にひとつ の数を聲にだす、その読みあげる数に紐づく悦びは 棺を半歩だけ前へ進め、棺には荷を積む余白が半歩 分増える、彼があらたに積む荷は悦びとなり、円周 率の最後の数を言いあてるまで彼はその旅を続ける なぜ円周率なのか、私たちの人生が繰りかえし同じ 円周をなぞるからではなく、円周率には愛が隠れて いるからと彼はいう、それは残余を切りすてる方形 の世界に曲線を取りもどし、綻ぶ世界を円く縫い直 すだけではなく、内接多角形の剣の切れ味を削ぎ、

          棺をひく者がいる、彼は一歩を踏みだす度に

          『多様性が育む地域文化詩歌集――異質なものとの関係を豊かに言語化する』

           『多様性が育む地域文化詩歌集――異質なものとの関係を豊かに言語化する』(コールサック社 、2023年10月12日刊行)に、「皆伐」にて参加させていただきました。  編集・前校正・著者校正、掲載本ご送付など、あらためて関係者皆様のご支援・ご協力に心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。  同書は、以下にてお求めいただけます。 ・コールサック社  なお、当面のあいだ、note公開の原詩は非公開とさせていただきますので、ご理解ください。  ご質問やご意見があり

          『多様性が育む地域文化詩歌集――異質なものとの関係を豊かに言語化する』

          私を自発的に喪失しようという彼は、すでに

          私を自発的に喪失しようという彼は、すでに何度も 心の密室で破壞した残骸を持ち、遺體安置する、空 を突きぬける階段の一つのひな壇に、何の疵もない 青瘀色して膨らむ私を箱ごとつみあげ、荒ぶること なく私が輪廻におちていくために、些末な紙幣と交 換に、おき去りにされる私の、閊える頭に蓋をされ 閉塞する世界に、さらにもうひとつの底荷に壓し潰 される私とは裏腹に、共同墓地には眩しい緑、石段 を下る彼らの軽やかな、泡沫の、人形供養の賑わい に、翳る古木に仮現する面相の瞼が僅かに攣縮する

          私を自発的に喪失しようという彼は、すでに

          『詩と思想詩人集2023』(詩と思想編集委員会)

           『詩と思想詩人集2023』(詩と思想編集委員会/編、土曜美術社出版販売 、2023年8月31日刊行)に、「車窓に反対風景がかさなり流れていく」にて参加させていただきました。 掲載のお誘い、編集・前校正・著者校正、掲載本ご送付など、あらためて編集委員会等関係者皆様のご支援・ご協力に心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。  同書は、以下にてお求めいただけます。 ・土曜美術社出版販売 ・AMAZON  なお、当面のあいだ、note公開の原詩は非公開とさせてい

          『詩と思想詩人集2023』(詩と思想編集委員会)

          私たちは、いやもう一度訂正しよう、私は

          私たちは、いやもう一度訂正しよう、私は原拠なく 生まれるものではないし、亀裂のない目蓋のうちだ とはいえ、弱さゆえに世界が昏いわけではなく、深 海に滲透する星影をすでに肌は感じているし、歩行 の始まりがいつとなるのか身體は記憶しているし、 反復する呼吸に終わりがあるとおり、或日やってく る未来との遭逢が、無垢な幸福であるのか天賦の受 難であるのか、最初に射しいる光焰が私に彫刻し、 その後何度も切り開かれる傷口が生きよと言うその 光景を、私自身が予め知っていることに驚いている

          私たちは、いやもう一度訂正しよう、私は

          翅ばたくたび舞いあがる細氷の輝光

          翅ばたくたび舞いあがる細氷の輝光 咳きこむほど詰めこまれ浮遊する 凍結した漆黑の死臭分子 釘打ちされた黑柩に横たわるものはすでになく その名が最後に呼ばれて久しく 溜めこまれる透明な寒流が 無言のまま凍洞の氷壁を削りつづけている たえず何かが起滅する暗闇に 渦巻く鎖を翅端に牽連し さけび聲もなく乱流に弄ばれる私たち 時おり途切れる飛翔軌道に頽れ 不在となったものの氷結した因果をたどる それは 氷河を遡上すること 砕氷とともにくだること あるいは 氷塊に輪郭もなく刻まれる貌

          翅ばたくたび舞いあがる細氷の輝光

          アストロラーベの叙唱

          そこにはかつて香りたかい死の部屋があった 死の薫氣とは何か いやかつてそして今も そのような鼻道の歓びに硬直することは ないかもしれないが あのときは 終末に侵されていく確実な 臨死の倫理的な夢のなかにあって 不条理に腐れ 死にゆくものたちとの一度きりだが 決して離れることのない 心の結びつきを 存在論的共感という病理のうちに 私たちの名前が縺れ 微小な針の刺突に喚起される世界の変容を 苦痛というほどではない痛みの香煙を 指にまき 全身を縛り その異臭に麻痺する肉體がひぃと

          アストロラーベの叙唱

          しかし灰は降り続く

          しかし灰は降り続く 睫毛にかかり瞬きするその 奥行のない世界に差しだす手爪の尖に かすむ閑かな中庭を 埋めていく 私から立ちのぼり 私を空洞にしていくそれらは 読まれることのない手記の焼尽の痕跡であり たなびく幾枚もの緞帳の向こうに 在るとは思えないものの降灰それ自身のうちに 靜黙となって身躯から締めだされる私の 選択肢のない事柄にかかわる希望を 物語ってもよいのか 灰はなお降り続く 踏む大地は私を押しかえさず 私の歩みは開傘しない錐揉なのか 異様な測位系の迷走なのか 立体座

          しかし灰は降り続く

          そこにはかつて香りたかい死の部屋があった

          そこにはかつて香りたかい死の部屋があった 死の薫氣とは何か いやかつてそして今も そのような鼻道の歓びに硬直することは ないかもしれないが あのときは 終末に侵されていく確実な 臨死の倫理的な夢のなかにあって 不条理に腐れ 死にゆくものたちとの一度きりだが 決して離れることのない 心の結びつきを 存在論的共感という病理のうちに 私たちの名前が縺れ 微小な針の刺突に喚起される世界の変容を 苦痛というほどではない痛みの香煙を 指にまき 全身を縛り その異臭に麻痺する肉體がひぃと

          そこにはかつて香りたかい死の部屋があった

          殷く融ける空と地に屹立する

          殷く融ける空と地に屹立する 槍の穂先に貫かれ 確かに彼は両眼をひらき 世界とつながったまま息絶えているが 鋒端からかるく飛びたつ蜻蛉の 貌が彼のものであることもまた真実であり その胴の縊れに結ばれる絲の端をもつ児の目が 六角の多眼であることも疑いなく 私が彼の名をよぶとき 児が引きよせる女の指先に 滴る雫がひろげる波紋に ゆらぐ月が真円をとりもどし 指極星を指す彼の翅が殷い天をふたたび波うたせ 彼女の胸に抱かれる児の力強い拳に にぎられる世界は 炎舞する千切絵 無邪気な甘い余

          殷く融ける空と地に屹立する

          鎖鋸が伐る老樹の膝が折れ

          鎖鋸が伐る老樹の膝が折れ 脇を支えるものたちが次次に両掌を突き 嗚咽とともに吐きだす白く細い指 肋骨の浮きでる土瀝青の瘦地に散乱し 自身の躯を顎に挟むものたちの黑い列に取りこまれ 迷霧にかすむ垤の尖鋭な立體迷宮へ攫われていく 中心を欠く螺管迷路は 不規則に顫動する触角が手繰りよせる渦動 重力を無効化して内壁を旋回し 憶えられない数多の曲角を直進し 食餌安置の茫漠たる暗昏に投棄される 反撃しない私たちの指の異様なしずけさ 横倒しになり時針の停まった振子箱のすみで 廢頽してい

          鎖鋸が伐る老樹の膝が折れ