見出し画像

編集者に壁打ちをしてもらい、小説を書くモチベについて話題になった話

 本づくりについて話そうと思う。 
 
 同人誌づくりという形から始まったぼくの執筆活動は、一番のこだわりを「良い本を作る」ということに据える。だから小説を書くとは言え、ぼくはあくまで本文担当に過ぎない。友人にして戦友のイラストレーターやデザイナーにお願いをして表紙を仕上げてもらい、友人に土下座して校閲してもらい、チーム戦で一冊の本に仕上げる。良い本を作ることがぼくの執筆活動における最大のモチベーションである。

 ただ、昨年にある程度、形が見えてしまった。今までにないクオリティの本ができたと実感したと同時に、同人誌レベルでの限界も感じたのである。昨年夏に書いた「真夏のピアノソナタ」という小説ではイラストにデザインと本の装丁に拘り抜いた。冬に出した「81」という将棋の小説はプロ棋士の先生に解説を頂いてしまった。それぞれ納得がいったが、同時に、これ以上のことは同人レベルでは難しいかもしれないと実感した。

 「良い本」とは何か?当然、それは良い紙を使い、良い表紙が描かれ、良いデザインがなされ……そして当然、良い本文が書かれたものである。しかし良い表紙を書いてもらおうにも心許ない自分の財布では限界がある。デザインも紙も同様である。良い本文を書こうにも、小説というものは本来作家と編集者の二人三脚で作り上げるものである。同人誌を書くためだけにプロの編集者に金を払うようでは、首が回らなくなってしまう。

 ーこれ以上の本を作るには商業くらいしかない。

 したがって、この結論に至る。上を望むのであれば、自分の代わりに本づくりお金を出してくれる人間が必要な段階に来てしまったのである。しかしお金を出してもらうということは、出したもの以上の金が帰ってくることを期待されなければならない。つまり好き放題書くのではなく、「売れる」小説を書くということだ。

 ところが、今までぼくは好き放題に本を書いていたから、「売れる」かどうかの目線で物事を考えたことはない。手っ取り早く解決するために、プロに相談することにした。このコミュニティに参加したのである。

 このコミュニティに参加するとチャットで参加者とおしゃべりできたり編集者さんにプロットの感想を見てもらえるのだが、ここでは一旦省く。今回話題に上げるのはオプションとして4400円払うと編集者さんに1時間、壁打ちをしてもらえるシステムだ。コミュニティが始まるとすぐにぼくは壁打ちの予約を入れた。編集さんはこのコミュニティを運営している会社の社長さんをしていらっしゃるこの方である。

 
 実に楽しみにしていた壁打ちの日はすぐに訪れた。ぼくはあらかじめ「売れそうな小説」の企画書を作っておいて、社長さん(以下、愛称のオタペンさんと呼ばせていただく)にビシバシと叩いてもらうはずだった……が、自分が「売れる小説」を作るにあたって心配していることは、自分が提案した企画書が抱える一つの問題に集約されることを教えていただいた。本質を見抜いていただいたおかげで、30分ほどでその部分のご指導が終わってしまい、残り30分ほどの時間が余ってしまった。

「どうしたもんですかねぇ」

 となってしまったが、オタペンさんのほうから話題を振ってきてくれた。

「四宮さんはどうしてコミュニティに参加されたんですか?」

 これに関しては明快だったから、上に書いたことのようなことを話した。そうしたら

「珍しいですね」

 と言われた。これにはびっくりしてしまった。自分には作家仲間が少なく、イラストを描く友人が多い。イラストを描く友人は「良い本を作りたい」というモチベーションで絵を描いている場合が少なくなく、小説においても似たようなものだと思っていたのである。

「珍しいんですか?」

「そうですね~。やはり皆さん小説で有名になりたいとか、たくさんの人に読んでもらいたいとか、そういう動機が多いですよ」

 正直ピンとこなかったが、これまで何十人何百人の物書きを見てきたオタペンさんが言うのだからそうなのだろう。自分は「大勢に自分の作品が売れる」ということをあまり考えず、「良い本を作る」ことが主となっていた。商業を目指すのもその一環だし、その場合は「良い本」の条件に大勢に売れる本であることが条件として加わるだけだと思っていた。

 壁打ちはこのままVTuberの話や編集の話など多岐にわたり、時間が来て終わりとなった。だが終わった後に、オタペンさんと話したモチベーションのことが気になってきた。

 自分は珍しいのだという。「有名になりたい」、「大勢に読んでもらいたい」というモチベーションはおそらく、ハングリーさが出る。それと比較して「良い本を作りたい」というモチベーションはハングリーさが少ないのかもしれない。ただハングリーさを拗らせるパターンも見受けられるので、このままでいるメリットもある。客観的に考えて、どちらにも一長一短があるだろう。

 ……悩んだ結果、現状維持で行くことにした。まあ何とかなるやろ。どうせ売れる本を目指すって結論は一緒で、やることも同じやろしな。


※現在四宮はBB小説家コミュニティに参加しています。小説に対するモチベがもりもり上がるので物書きの皆さんおすすめです!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?