ペーパーバック印刷コスト変更の注意点と、『今しかできない』戦略
1.「印刷コスト変更」という、Kindle作家にとって少し大きなニュース
今日、KDP(Kindle Direct Publishing)のページを見ていたところ、以下のようなメッセージが出ていました。
え、ペーパーバックの印刷コストが変わるの?
これって割と大きな変更では…?
と思い、少し調べてみました。
また、調べた結果から『Kindle作家として、今どんな行動を取るべきか』について自分用にまとめたので、本記事でシェアしていきます。
印刷コストの変更に関するよくある質問 (FAQ) (amazon.co.jp)
▲本記事は、KDPの「印刷コストの変更に関するよくある質問」をベースに執筆しています。
2. 印刷コストの新旧比較
まずは、現在の印刷コストと、新しい印刷コストを簡単に比べてみます。
なお、おそらく最も使われているであろう「モノクロ印刷・110~828ページ」という条件のみ比較していきます。
【旧】(全サイズ)175円+2円×ページ数
【新】(標準版) 206円+2円×ページ数
(大判) 206円+3円×ページ数
ベースの価格が175円から206円に。
プラス31円、つまり約18%の値上げです。
まあ、最近の物価上昇や原材料高騰の流れを見ると仕方ないかな、という気もします。
しかし、ここで注目すべきは、ベースの値上げではありません。
今回、新たに「大判」というサイズ別価格が導入されたことです。
これまで、どんなサイズでペーパーバックを作っても、印刷コストは一律でした。
しかし2023年6月20日から、「幅 155 mm・高さ 229 mm以上」のペーパーバックは、ページ単価が1.5倍に跳ね上がるのです。
ここから、200ページのペーパーバックを作った場合のコストを試算してみます。
【旧】(全サイズ)575円
【新】(標準版) 606円 [現行+31円]
(大判) 806円 [現行+231円]
標準サイズの場合、まあ許容できる値上げです。
しかし大判サイズの場合は、231円のコスト増加…
ペーパーバックを作っている人は、根本的に見直しが必要なレベルです。
3.印刷コスト変更から見る、Kindle作家として取るべき行動
ここから、Kindle作家として取るべき行動が見えてきます。
①何もしない
一つ目の行動は、何もしないこと。
例えば私のペーパーバックはほぼ全てA5サイズ(148mm×210mm)にしているので、「標準サイズ」の範囲に収まっています。
このような本は、1冊あたり31円の印刷コスト増加。
もうこれぐらいなら、諦めて飲み込んでしまっても良いと思っています。
②価格変更
大判サイズでペーパーバックを出している人は、価格変更が必要かもしれません。
1冊あたりの印刷コストが大幅に上がるので、せっかくペーパーバックが売れてもロイヤリティ(収益)がまったく発生しない…
ということが起こり得ます。
ペーパーバックで収益化を狙っている方は、これを機に値上げするのも一つの答えでしょう。
4.『もともとロイヤリティがゼロ』の本はどうなるのか?
本記事で、最もお伝えしたかったことはコレです。
というのも、一部のKindle作家には『絶対に無視できない影響』があるからです。
私が出している本の中で、1冊だけB5 サイズ(182mm×257mm)のペーパーバックがあります。
それが、『キンドル出版企画ノート』という作品。
この本は、ペーパーバック(紙媒体)に書き込み、そのままノートとして使ってもらうことを想定しているため、少し大きめに作っています。
また、この本はペーパーバックでの収益化を目的としていません。
・ペーパーバック本を最低価格で出したらどうなるかという実験
・Kindle本ではなく、ペーパーバックを主体にするとどうなるかという実験
・Kindle出版業界を盛り上げる企画の実施(この本を出した当時、ある企画をしていました。詳細はこちら)
という目的で作ったので、売れても私にロイヤリティが発生しないような価格設計にしているのです。
とにかく面白いことをしたい!と思いつきで作り、価格は最安の724円。
(110ページの本では、Amazonの価格設計上、これより安くすることはできませんでした)
ちなみに、ペーパーバックの最低小売価格は、
・印刷コスト / 60% (ロイヤリティレート) ×1.1(消費税)
で計算できます。
ここから試算すると、「110ページのペーパーバック・大判サイズ」として出せる最安値は、
【旧】395円 / 60% × 1.1 = 724円
【新】536円 / 60% × 1.1 = 982円
となります。
(切り上げや切り捨てのルールはわからなかったので、実際は1円ズレる可能性があります)
まとめると、
現在、大判サイズであっても「110ページの本」なら最低価格724円で出版できる
2023年6月20日から、「大判サイズ・110ページの本」は982円以上でしか出版できない
となります。
つまり、今後大判サイズでペーパーバックを作る場合、どう頑張っても1,000円ぐらいにはなってしまうのです。
そして、もう1点。
今回の価格変更のQ&Aには、このような文言があります。
驚いたのは
「希望小売価格が新しい最低希望小売価格を下回っている場合、ロイヤリティはゼロになります」
という文言。
うーん…
「724円で売っている本」は、もともとロイヤリティがゼロ。
この本を放置していたらどうなるの?
価格は、自動で更新されるの?
よくわからなかったので、KDPに問い合わせしてみました。
その結果がこちら。
とりあえず、価格は自動更新されないみたいです。
では、「もともとロイヤリティがゼロの本」を放置すると、どうなるのか?
その答えがこちら。
なんと、
『価格を変更しないと、6/20以降は販売されなくなる』
という回答でした。
私が現在724円(ペーパーバックの最低価格)で売っている本は、自分で価格を修正しないと販売停止になってしまうようです…
5.『今しかできない』戦略
とりあえず、私が以前出した『キンドル出版企画ノート』は、6/20からは値上げせざるを得ない、という結論です、
このような”最低価格戦略”は、この仕様変更によりかなりパワーを失いました。
一方で、逆に今しかできない戦略って、なんだろう?
と少し考えてみました。
かなり用途は限られますが、
『今のうちに大判サイズ本を作り、著者用価格でたくさん注文しておく』
などが、まさに今しかできない戦略でしょう。
例えば110ページの大判サイズ本なら、現時点では1冊395円のコストで作ることができます。
著者であれば、印刷コストのみでペーパーバック本を購入することが可能。
なので、1冊400円ぐらいであれば、今のうちに大量に購入しておき、
・イベントで配ったり販売する
・名刺代わりに、人にあげる
といったことが可能です。
これが、6月20日からは「1冊 536円」のコストに跳ね上がる。
なので、ストックを買っておくなら今!と言えます。
Kindle作家には、少なからず影響のあるペーパーバック価格変更。
今のうちに、とれる戦略を考えるのも面白いかもしれません。
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