LAMY pico のレビュー
僕は「良いプロダクト」は高価だったり希少だったりする必要は無いと思っている。
例えばキッコーマンの醤油瓶やCASIO F-91Wなど、特に何も考えずに使っているような日常品にも様々なこだわりや工夫が詰まっている。
反対に僕の思う「良くないプロダクト」は、高価だけど実用性の無いものや何の工夫も施されていない安価な製品だ。そこにステータス性や付加価値は無い。
その点このLAMY picoはとても良いプロダクトだと思う。
ドイツ製品らしい丸みのあるメタルボディ。
ぱっと見ただけではこれが何か分からないデザイン、ピルケースや小さなライトに見えるかもしれない。
だけどよく観察するとノックボタンやペン先がある。
そしてノックボタンを押すと
「シュポン」という心地よい音と共に一気にボディが伸びて、ボールペンに変身する。
小さい、または短いボールペンというのは少なくない。
その名の通り弾丸をモチーフにしたフィッシャー「ブレット」や、ゼブラのT-3(こちらは4C芯を使っているのでシャーボXの替え芯を使うと快適です。おすすめ)など、とにかく探してみると色々見つかる。
だけどどれも一点集中型というか、機能や用途のために使いやすさを犠牲にしている気がするのだ。
このpicoもそのひとつだと考えていた。
picoのアイデンティティーはその伸縮機構にある。
これは間違いないのだが、それだけでは終わらないこだわりがある。
基本的に僕たちがボールペンと言われて想像するものは、ゼブラ サラサクリップやUni ジェットストリームのような、「ノックボタンを押して使うペン」だ。
だが上記のブレットはキャップ式だし、T-3はツイスト式なのだ。
勿論、キャップ式やツイスト式にもさまざまなメリットがある。
だけど日用品として考えた場合では通常のノック式に軍配が上がる。
それから、picoはロゴマークがボディの微妙な位置に配置されているのだが、これがクリップ(転がり防止目的の点で)とグリップの役割を満たしている。
特に明言されているわけではないので、あくまで僕の思い込みかもしれないと思っていたが、pen-infoの土橋正さんも同じことを書かれていたので、そうなのだと確信している。
このロゴマークなどに見られる設計思想は、僕の愛してやまないホンダ・ダックスに通ずる部分があるように思う。
今でこそ"名車"として認知されているし、そのフォルムに疑問を抱く人も少ないダックスだが、当時はそのフォルムに異論を唱える人が多かったらしい。
これは初期のスケッチ。
ガソリンタンクも無ければリアサスも無い(実際にはスイングアームの根本にある)。
"バイクらしさ"を徹底的に無くそうとしているように見える。
言われてみれば特異なデザインだ。
だがダックスの魅力は、"バイクらしさ"を無くすことで、モノとしての利便性を得ている点にある。
燃料タンクをフレームに内包するメリットは多い。
デザインとしては"バイクらしさ"を無くすことで、若者や女性など、バイクに対して取っ付きにくさ感じていた人達にもアピールすることができた。
また外に出ていないので、転倒しても凹むことはないし、単純な形状なので比較的安価に作ることができ、交換時のコストも低い。
デメリットとしては容量の少なさが挙げられるが、そもそもダックスで遠出をしようという人は少ない。
話を戻すが、picoも同じように"ペンらしさ"を無くすことでペンとしての利便性を得ているわけだ。
小さくてもクリップやグリップを付けようとするのではなく、無くしてしまえ。
そして代わりにロゴマークを付けることで、握りやすさや転がりづらさを実現している。
また、様々なバージョンが販売されていたダックスと同じように、picoのペンらしくないシンプルなボディーはどんな色でも似合う。
僕のはメッキボディのクローム。
他にも、まるでストームトルーパーのようなホワイトや精悍なマットブラック、マルマンカラーのニーモシネコラボモデルや鮮やかなネオンカラーがある。
小さなボディに詰め込まれた大きなこだわりが感じられる、金属製のボールペン。
おすすめです。
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