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音の幻像 5人目

この記事を読む前に、『音の幻像』とは?という方はこちらをご覧ください。



客席からステージへ

 ただのギター好きの大学生が、気づけば「ギターをしばく歌い人」というキャッチコピーでシンガーソングライター活動をするようになりました。毎週大阪の心斎橋までライブを観に行き、そのたびにギターの演奏法を学んでいたのですが、気づけばステージに立っていました。

 『音の幻像』はそんな僕が客席にいたころに、あったらいいなと思っていたコンセプトのイベントです。客席側で居続けていたらきっと誘えなかっただろう人たちとの共演です。僕が0cmの高さからどんな景色を見ていたのか、僕が何を見せたいと思って26cmの高さに上ったのか、9/2(土)はそれらすべてを詰め込んだイベントになります。

 今日はPrologueでは綴らなかった、「音の幻像」の秘密についてお伝えしようと思います。

僕の見ている景色

 『音の幻像』について綴るのは今日で6日目になります。1日目、Prologueから順番に読んでくださった方はもしかしたら気づいたかもしれませんが、僕は隠しごとをしながら今日まで記事を書いてきました。気づいてほしくてあえて矛盾や違和感が出るように書いていたので、逆叙述トリック(?)に気づいた方はまさに名探偵ですね。ひとつひとつ答え合わせしていきましょう。

過去形と現在

 まず第一に、Prologue「僕の見てきた景色」にて僕は「音が色や形、視覚的なイメージとして見えていた」と書きました。そう、実はもう僕に音は見えていないんです。続けて「“色聴”に近いものだったと思います」というのも、本当の“共感覚”を実際には持っていないことを書いていたわけです。では、ここまで書いてきた出演者の音イメージが嘘だったかというと、そういうわけではありません。「音の幻像」について、詳しくは次の章で説明します。まずは音が見えなくなった経緯について説明させてください。

 僕が音の色や幻像を見れなくなったのは自分がステージに上がって歌うようになってからです。はじめの方は自分も含めてまだまだ駆け出しの人達としか対バンすることがなかったので、まだ色がない人たちなのだと思っていたのですが、圧倒的に上手い人たちと対バンしたときに「あれ?」ってなったんです。もしかして、自分は音の色が見えなくなっている?という疑問を持つようになったのですが、それが確信に変わるのにそう時間はかかりませんでした。久しぶりに客として観に行ったライブハウス、活動を始める前に出会っていた人、その人の音を浴びに行ったのですが、その人の音も見えなかったんです。

 今まで見えていたものが見えなくなったという事実、その喪失感は僕を落胆させるには十分なものでした。「自分はこれから何を目指していけばいい?」音の色が見えなくなったことで、それまであると思っていた自分の才能(音を色で感じられることを才能ととらえていました)と、目指すべき到達点を文字通り見失ったわけです。

 それからの日々はなかなかに苦痛でした。ライブをするようになってからは、ずっとずっと楽しかったはずの音楽が、初めて楽しいと思えなくたった瞬間でした。それでも僕はアーティストが好きだったので、誰かしらのライブは月1で観ていたと思います。乾ききったわけではないけど、もう満たされることのない心を引きずっていた期間、ある人との再会が僕にとっての第二の転機となったのです。

 僕が1番憧れているミュージシャン、拠点が関西ではなかったため、彼のライブを1年ぶりくらいに観に行ったのですが、他の誰にもない光を放っていたんです。これは比喩ではなく、本当にそう見えたんです。「あぁ、この人だけはずっと変わらない。どんな人にも音を見せられるホンモノなんだ。」と、音を色として認識できていたのは自分の才能ではなく、アーティストたちの才能だったのだと気づきました。そして、なぜ見えなくなったのかという謎についても、ある仮説をもとにある程度解明するに至りました。

音の幻像の正体

 見えていたものが見えなくなったり、見えなくなったものが見えるようになったりと忙しない僕の目ですが、なにも幻覚に悩まされてるわけではありません。音の幻像の正体は、最近になってようやくそれらしい仮説をたてるに至りました。「音の幻像」の正体、それは「自分の中の“激情”の映像化」なのではないかということです。

 どうしようもない感動、うっとりしてしまうほどの世界観、身震いするほどのエネルギー、ライブにはそういったものがつきものです。そうした要因にしげきされ、感情のメーターが振り切れたものを“激情”と呼びましょう。その“激情”のイメージを具体化、僕の場合は視覚的なイメージとして映像化したのが『音の幻像』の正体なのだと思います。

 見えていたものが見えなくなったのは、自分がステージに上るようになってライブの見方が変わったから、昔ほどの“激情”を受け取ることができにくくなっていたから。見えなくなっていたものが見えるようになったのは、それだけ当時の僕にあらゆるインスピレーションをくれるパフォーマンスを彼がしていたから。こう考えると辻褄が合います。幻想が見えた時は必ず大きな感情の波が心の中にあったので、わりと正解なのではないかと思っています。

 これを自覚してから昔とは違い、少し引いた位置で「音の幻像」を観ています。昔は単にそのように見えていただけなのですが、今はなるべく言語化できるように自らバイアスをかけているんです。天邑さんの音を“ラメパウダー”と書いたのも、ガクさんの音を“空間を広げる音”と書いたのも、翠の音を“惑星”と書いたのも、uiuniちゃんの音を“紫のインク”と書いたのも、不自然に具体的な表現だったかと思います。自分の中での具体化・映像化の過程で、よりハッキリと見えるように「この人の凄さはどこからくるのか」「この人の音に合うイメージは何か」「この人の凄さの根底と音に合うイメージ、そして自分が受け取った感情をかけ合わせると何が生まれるか」こうした思考によってバイアスがかけられ、僕が見ている幻想は成り立っているんです。

 ただ、先に書いた通り出演者紹介で記載したそれぞれの「音の幻像」に嘘はありません。天邑さんの呼応する輝きと温かみのある光は、天邑さんが客席のひとつひとつに目を配る姿とお客さんの温かな表情が僕の心をギュッと掴んだから見えた景色で、ガクさんの空間を広げる音は、マイキングなどステージを空間としてつかって歌う姿と情景が浮かぶほど心に刺さる歌詞に感動したから見えた景色です。翠の惑星みたいな音は、声の強さと引きつけられるメロディ、そして少しの休符がグッと身体ごと吸い寄せられるみたいに翠から目が離せなかったから見えた景色で、uiuniちゃんの紫は情熱とアートに対する考え方、そして歌唱力の高さが高い次元で噛み合っているからこそ見えた彼女の色なんです。

 明日歌ってくれるアーティストはこのように、僕に“激情”をくれるホンモノのアーティストです。会場に来てくださる方、配信で見てくださる方、みなさんがどんな“激情”を抱き、どんな景色を見るのか、心から楽しみにしてくださるとうれしいです。

アーカイブカードについて

 当日の物販についてお知らせです!会場限定物販として「アーカイブカード」を販売いたします!

アーカイブカードとは

 「会場でのライブをもう一度見たい!」という方向けに、2週間限定でもう一度ライブ映像を視聴できるというものになります。各出演者の物販にて販売しておりますが、アーカイブカード1枚でその日の公演を最初から最後までご覧いただけます。

販売価格

1枚 1,000円
売上は販売したアーティストに100%入ります。

アーカイブカード イメージ

 いつものアーティストからも買うもよし、はじめましてのアーティストに投げ銭感覚でご購入いただくもよし、思い出の一助になればと思います。

イベント詳細

9月2日(土)@下北沢DY CUBE
こばやしゆうと連続企画
ワンマンまでの道 中編
『音の幻像』

出演
こばやしゆうと
カナザワマナブ
天邑
うたうたいの翠
uiuni

開場 18:30 / 開演 19:00
予約 ¥3,000 / 当日 ¥3,500 ※+1D ¥600
配信 ¥2,000

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