七瀬翼の正体
お久しぶりです。
以前書かせていただいた『七瀬翼の正体』考察の記事を改めて今回書かせていただきました。
まず早速、結論から述べますね。七瀬翼の正体は⋯
『 雪の妹 』
です。
それでは考察していきましょう。
【1】綾小路の仮説
綾小路に「まだ何かがある」と語らせてる以上、七瀬は未だ重要な秘密を抱えているキャラだといえます。
以下、綾小路が七瀬に語った『仮説』をまとめてみました。
では、綾小路が立てたこの仮説が当たっているのか検証していきましょう。
[仮説①]綾小路の高育入学は最初から決まっていた
上記の綾小路パパと月城のやり取りから、綾小路の高育入学は最初からパパによって仕組まれていたと考えられます。
よって、綾小路の[仮説①]綾小路の高育入学は最初から決まっていた は当たっているといえます。
[仮説②]WR側に綾小路を退学させる意思はない
これは[仮説①]が当たっている以上、検証するまでもないかもしれませんね。
文化祭ではWR側の人間が綾小路の意思を確認するだけで排除には動かず、それ以降現在に至るまでWRは綾小路に何の干渉もしていません。
上記の石神の発言を踏まえても[仮説②]WR側に綾小路を退学させる意思はない は当たっていると考えられます。
[仮説③]七瀬は綾小路の『補助役』として送り込まれた
2-8巻の特典である七瀬の心情カードには、無人島試験3日目のビーチフラッグのシーンにおける七瀬の心情が記されています。
このことから、七瀬は『3日目』の時点で「WR生の存在を知っていた」かつ「WR生の襲撃から綾小路を守ろうとしていた」ことがわかります。
また、七瀬は綾小路に敗北した直後のシーンにおいて、WR生の存在を知っていながら知らないフリをしています。
以上の3日目の時点で綾小路を守ろうとしていたこと、綾小路にWR生の存在を教えなかったことから、綾小路の推測通り七瀬が綾小路に負けて味方になるところまでがWRの計画であり、七瀬は現在もWRの指示を遂行している可能性が高いといえます。
2-4.5巻七瀬SSで「刺し違えてでも綾小路に貢献できる成果を残す」と述べていたことからも、七瀬は綾小路を『補助』する目的で動いていることがわかります。
よって、[仮説③]七瀬は綾小路の『補助役』として送り込まれた は当たっていると考えられます。
[まとめ]
以上より、綾小路の3つの【仮説】は当たっていると考えます。
そして、このことから七瀬が現在もWR側の人間である以上、七瀬が語った松雄親子の死亡が事実なのか怪しくなります。よって、七瀬の正体について改めて考え直す必要があることがわかります。
【2】七瀬翼の正体
七瀬は『WR側の指示を現在も遂行している』ことから、少なくともWR側に属す人物(厳密には月城が用意した駒)である可能性が高いです。そこで、以下にいくつか七瀬の正体候補を挙げてみました。
それでは一つ一つ整理していきましょう。
[正体①]松雄栄一郎の幼なじみ
●松雄親子の生死
2-3巻の七瀬の独白では、松雄栄一郎の自殺を目撃した時の七瀬の心情が語られています。
この部分の七瀬の語りを信頼するならば、七瀬は松雄栄一郎の幼なじみということで間違いないでしょう。
しかし、松雄父は綾小路を勝手に高育に逃がしたことが理由で自殺に追い込まれたと綾小路パパは語っていましたが、『綾小路の高育入学は最初から決まっていた』ことから、松雄父が死ななければならない理由が無くなってしまいました。
よって、松雄親子が本当に死んだのかどうか現状怪しくなっているといえます。
そうなると、七瀬の独白における松雄栄一郎の自殺についての語り、七瀬が松雄栄一郎の幼なじみであると語っている点も全て信憑性が無くなってしまいます。
つまり現在、七瀬は『信頼できない語り手』(https://ja.wikipedia.org/wiki)であるといえます。
このことから、七瀬の独白における松雄栄一郎の自殺についての語りが『虚構』であった可能性が浮上するわけですが、実際にこの心理描写は『自己暗示』として解釈することができるでしょう。
綾小路がこのように分析している通り、七瀬は綾小路と戦うために自らに松雄栄一郎であると思い込ませる自己暗示を掛けていました。
つまり、七瀬の独白における松雄栄一郎の自殺についての語りも、自らの中に松雄栄一郎の人格を作り出すための自己暗示だった可能性があります。
ようは松雄栄一郎を死んだことにしてその場面を想像することで『松雄栄一郎の仇討ちをしたい幼なじみ』になりきっていたということですね。
上記のシーンは綾小路・堀北・七瀬がDクラス同士での協力について図書室で話し合いをしているシーンですが、七瀬は松雄栄一郎になりきる必要がないにも関わらず「ボク」と言い間違えています。
このことから、思わず言い間違えてしまうほど七瀬が日常的に自己暗示を掛けていることが伺えます。
よって、七瀬が常に『松雄栄一郎の幼なじみ』を演じている可能性も十分にあると考えられます。
しかしその一方で、たとえ死ぬ理由が無かったとしても松雄親子が死んでいる可能性も十分にあります。
綾小路パパは高育に入学させる計画を綾小路に見抜かれないように注意していたことから、あえて計画については何も教えず、独断で綾小路を逃がしそうな人格者である松雄に世話をさせることで、計画を綾小路に悟られないようにしたというパターンが考えられます。
この場合、たとえ綾小路の高育入学が計画通りだったとしても、「勝手に逃がした」という大義名分をもって松雄を死に追いやることができますよね。
ただこのパターンでもわざわざ松雄を罰する意味は結局のところ無いといえます。また、そもそも松雄が確実に綾小路を逃がすとは限らないという点ややり口が回りくどい点などしっくり来ない点はいくつかあります。
また、それ以上に、本当に松雄親子が死んだのなら、その幼なじみである七瀬がWRの計画に協力している理由が謎すぎますよね。
なので、どちらかといえばやはり松雄親子は生きている可能性の方がやや高いのではないでしょうか。
ただどちらにせよ確証がないので、現状は松雄親子の生死についてはハッキリとしません。
なので、この部分は今はこれ以上掘り下げなくて良さそうです。
●メタ的な視点で見ると…
綾小路に「七瀬翼にはまだ何かある」と語らせて強調している以上、七瀬の正体が変わらず 松雄栄一郎の幼なじみ だとは考えにくいのではないでしょうか。
少なくとも七瀬は"ただの"松雄栄一郎の幼なじみでないことは間違いないはず。
七瀬は「綾小路を退学させる」という条件をクリアすることで「綾小路パパと会う」という目的を果たすためにWRの計画に参加していたことを明かしています。
ただ綾小路の仮説③七瀬は綾小路の『補助役』として送り込まれた が正しいことから、実際の条件は「綾小路を退学させる」ではなく「綾小路を補助する」であったと推測できます。
しかし、それが七瀬がまだ隠している秘密だとするといささかインパクトがないので、七瀬がWRに協力している目的は「綾小路パパに会う」ことではないのではないでしょうか。
このことから、七瀬が 松雄栄一郎の幼なじみ だったとしても、WRに協力している目的は松雄の件とは関係がない可能性が高いと考えます。
[正体②]WR6期生
七瀬がWR生なら5期生の天沢と面識がなかったので『WR6期生』となります。
しかし、スペック的に七瀬がWR生とは考えにくいでしょう。
ただし、自己暗示で架空の一般生徒・七瀬翼を常に演じることで、本当の実力を隠しているのならば話が変わってきます。
とはいえ、そのように判断できる材料はないのでこの可能性については考慮しないで良さそうです。
[正体③]WR脱落者
1-11.5巻において、月城は『WR脱落者』について言及していました。
WR脱落者の大半が雪のように精神に支障をきたしてしまい「使い物にならない」と述べていましたが、志朗のように精神が健常な脱落者も少なからずいると考えられます。
七瀬翼もそのうちの1人である可能性があるでしょう。
七瀬がWRの「脱落者」ならWR生にしては低いスペックにも説明が着きますし、元WR生なのでホワイトルームの事情を含めた計画について月城が詳しく教えた上で駒にしたとしても自然です。
また、七瀬は高育入学前まで「過酷」な環境にいたことを示唆するようなことを語っているのも気になるところです。ホワイトルームにいたならば、平穏な日々を求める心理も納得できます。
そして、景色を楽しんでいる点でもホワイトルームから逃げてきた綾小路と重なります。
ただ、仮に七瀬が『WR脱落者』だとしてそこからどのように話が広がるのかちょっと想像しにくいところではあります。
それでも、個人的には正体候補の中でも有り得る方の説だと考えています。
[正体④]月城がWRの計画とは別の意図で用意した駒
本編だけ読むと綾小路パパ直属の部下に見える月城ですが、0巻においてどの勢力にも属さない『便利屋』のような立ち位置であることが明かされました。
つまり、月城の行動=WRの指示 とは限らないということです。
よって、七瀬や八神を駒として用意したのは月城なので、七瀬にはWRが与えた『補助』の役割とは別に月城が個人的に与えた役割がある可能性が考えられます。
月城がWRの意図とは別に与えた役割として
等が考えられます。
このように、月城は自分が認めた相手としか仕事をしないと語っています。
『親しみ』を表している。
このことから、月城は綾小路清隆を自分のクライアントになり得る人間として認めている可能性が高いといえるのではないでしょうか。
「また会いましょう」と再会を仄めかしていることから本編中で綾小路と月城が再び関わる可能性も考えられます。今度は月城が綾小路の味方として。
月城はその時に備えて七瀬を通して綾小路の動向を監視しておくと同時にコンタクトを取れるようにしているのかもしれません。
ただ、今のところ七瀬の心理描写を読む限り『補助』以外の役割を与えられているようには読めませんし、仮に七瀬が隠している「何か」の答えが「月城がWRとは別の意図で用意した駒」だとするとちょっとインパクトがないように思えます。
●月城はどこから七瀬を調達した?
月城はWR生や脱落者の中から七瀬を駒にしたのかもしれませんし、はたまた本当に松雄栄一郎の幼なじみである七瀬に目をつけたのかもしれません。
つまり、先述した[正体①②③]と[正体④]は両立し得ます。
しかし、ここでこれらとは違う可能性を提示したいと思います。
それは、月城が七瀬を『大場組』から調達した可能性です。
つまり、七瀬は『大場組』が管理していた子供だったということです。
そもそも『大場組』とは0巻で名前だけ登場した綾小路パパが懇意にしてるヤクザです。
このことから、『大場組』が非合法で子供を入手できる組織であることが窺えます。
こうした『大場組』に七瀬が育てられたとすると、
ということを述べているのも納得です。
とはいえ、ヤクザの中で育ってあのような品行方正な人間になれるものなのか疑問ではあります。
[正体⑥]政財界関係者の親族
石神や神崎のように綾小路パパと関わりのある政財界の子息が他にいてもおかしくはないでしょう。
七瀬もだとすると政財界の子息として英才教育を受けていた可能性が高いので、育ちが良く、品行方正な性格で優秀。そして、ちょっと世俗には疎い面もある、といった七瀬翼という人間が形成された背景としてしっくり来ます。
ただし、それだと「平穏な日々」を求めている点の説明が難しい、メタ的に石神と立場が完全に被ってしまう、WRに協力している理由が不明、といったツッコミ所もあります。
とはいえ、ここまで考察してきた通り七瀬が"ただの一般人"とは考えにくいので、最低でも政財界に関連した一族の人間であるのは間違いないのではないでしょうか。
[まとめ]
正直どの説も確証がないと言わざる負えません。ただその中でも可能性が高い順(筆者の主観)に並べると
といったところでしょうか。
ただ冒頭でも述べた通り、私は七瀬の正体は
⑤WR関係者の親族=『雪の妹』
であると考えています。よって、これについて説明したいと思います。
【3】七瀬=雪の妹
●雪
雪は0巻で登場したWR5期生で綾小路に恋慕していた少女です。
しかし、最終的には脱落し、現在はホワイトルーム時代のトラウマに苛まれ精神的に病んでしまっています。
綾小路はそんな雪とホワイトルームの外で高育入学の1年前に再会しましたが、雪を冷たく突き放し、絶望に落としています。
七瀬はこの雪の妹であると考えます。
このように、資産家が自身の子供をWRに1人預けもう1人は自身の家庭で育てるといったパターンがあると語られています。
よって、七瀬がWR生である雪の妹であることは十分に有り得るといえるでしょう。
●仮説『七瀬=雪の妹』
この説も確証はありません。しかし、私がこの説を推すのはこの仮説が正しければ説明がつく部分が多いからです。ということで、まずは結論から説明させて頂きます。
以上を前提として仮説を組み立てます。
[1]WRに七瀬が協力している理由
七瀬はWRから綾小路を『補助』する役割を与えられています。
そして、七瀬自身も『綾小路が無事に卒業する』ことを願っていると考えられます。
2-4.5巻特典の七瀬SSでも七瀬の綾小路に卒業して欲しいという思いが語られていたことからも、七瀬は『綾小路を卒業させる』ことが目的であると考えられます。
つまり、『綾小路が無事に卒業する』ことは七瀬に何らかのメリットをもたらすと考えることができるのではないでしょうか。
だからこそ七瀬がWRに協力し、綾小路の『補助』を担っているのだとすれば辻褄が合います。
では、『綾小路が卒業する』ことで七瀬にもたらされるメリットとは何でしょうか?
[2]『綾小路が卒業』することで生じる七瀬のメリット
仮説の前提条件として七瀬は『雪の妹』です。
そうなると七瀬が綾小路を卒業させようとしていることに当然雪が絡んでくるでしょう。
つまり、七瀬が綾小路を卒業させようとしているのは雪のため、と考えることができる。
このことから、七瀬(雪)にとって『綾小路が卒業する』ことが必要だといえます。
それは何故なのか。ここで、『綾小路が卒業』することで生じる可能性について考えてみましょう。
『綾小路が卒業』することで生じる可能性、これはWRが綾小路を高育に入学させた『目的』から読み取れます。
このことから、綾小路パパは清隆を『WRの指導者』にするか『政治家』にするかで迷っていることがわかります。
よって、以上の発言より、綾小路を高育に入学させた目的として『綾小路の政治家としての資質を試す』ことがあったと考えられます。そして、
綾小路パパは清隆に『感情』がないことを問題視しており、改善を図ろうとしていることから、高育に入学させた目的として『綾小路に感情を学習させる』こともあったと考えられます。
このことから、WRが綾小路を高育に入学させた目的は
の2つであるといえます。
よって、WRの想定通りに計画が進み綾小路が卒業すると
以上の2つの可能性が生じるといえます。
ここで ②綾小路が『感情』を獲得する が七瀬(雪)にとってのメリットになると考えます。
雪はホワイトルーム時代のトラウマによって精神疾患に陥っていましたが、恋慕していた綾小路だけはトラウマのホワイトルーム時代の中で灯る唯一の希望でした。
だからこそ雪の父親は治療する術が見つからなかった中でそこに治療のきっかけを見出し、綾小路と雪を会わせたわけですが、綾小路は雪を冷たく突き放しました。
このことから、雪の精神疾患は現在も治療できていない可能性が高いのではないでしょうか?
そうなると七瀬一家は現在も雪の治療方法を見い出せずにいると思われますが、一つわかっているのは「雪は綾小路にだけ心を開いていた」ということ。
である以上、再び雪の治療の活路を綾小路に見い出してもおかしくはない。それでも、
「以前突き放されてるのにまた会わせるかね?」
このような懸念点があると思います。
しかし、次に雪と会う時、綾小路が『感情』を持っているとしたらどうでしょう?
雪と会った現時点から3年前の綾小路は、『感情』を持っていない冷徹な人間でした。だからこそ雪は突き放されてしまった。
しかし、WRの計画通りに高育を卒業した場合、綾小路は『感情』を持った人間になっていると考えられる。そんな綾小路と雪を会わせたら、4年前とは違う対応を取ってくれるかもしれない。
高育の3年間の生活の中で綾小路に『感情』を獲得させ、綾小路の人間性に変化を与える。
こうしたWRの計画を七瀬が月城から聞かされていたなら、そこに雪の治療の可能性を見出す可能性はあると考えます。
つまり、『綾小路が卒業』することで生じる七瀬のメリットは
『感情』を獲得した綾小路と雪を再会させることができる
ということです。
だからこそ七瀬は『綾小路が無事に卒業する』ことを願っていると考えれば辻褄が合います。
[まとめ]
月城は七瀬一家が雪を治療できていないことからその経緯など全て調べた上で七瀬に接触し、WRの計画の『目的』を教えつつ、卒業後綾小路と雪をもう一度会わせる機会を用意する見返りとして、七瀬を計画に引き込んだ。
七瀬はこのことを綾小路に悟らせないように隠しながら綾小路を『補助』している。全ては卒業後綾小路と雪を会わせるために。
これが私が考える『七瀬=雪の妹』説の全貌です。
このように考えると、以下の事柄に説明がつきます。
【4】雪の妹=椿桜子 説
『雪の妹』候補の人物が実はもう1人います。
それは『椿桜子』です。まだ正体は明かされていませんが、この人も恐らく『WR側』の人間でただの一般生徒ではないと思われます。
根拠は以下の通りです。
⬆️ただ個人的には椿桜子は『WR6期生』である可能性の方が高いと考えています。興味がある方はご覧ください。
【5】おわりに
以上、七瀬翼の正体についての考察でした。
正直なところ確たる根拠がどの説にもないため推測や想像で補ってしまっている部分はありますが、各説の検証は十分できたと思います。
いずれにせよ、2年生編11巻が楽しみですね!
もしかしたら11巻の内容次第では拙文ですがまたnoteを書かせて頂くこともあるかもしれません。
ともかく、ここまで長々とお付き合い頂きありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?