母の言葉

今日、3月1日は僕の誕生日。

今日、母に会う予感がしていた。
予感というより、確信が二日前からあった。

しかし、困った。
いつ、どこで会うのか分からない。
確認しようにも、確認の取り方がない。

母はとっくに亡くなっているからだ。


誕生日の朝、眼を覚ましたら、横に立っている。
かも知れないと、そっと目を開けてみたけど居なかった。

事故に遭って、あの世で会うのかも?
と思って、バイクの運転はいつも以上に気をつけた。

頭の中に声が聞こえるかも知れないと、
時々、耳を澄ませてもみたけど、現れてこなかった。


夕方、すっかり忘れて、ガレージへ。
久し振りのオートバイいじり、
思った通りの加工ができず、時間が掛かったけど、
不思議と落ち着いていられた。

作業を終えて帰宅の準備をしていると、彼女が来た。
夜道を一人、杖をつきながら歩いてきた。
「 夜になって冷えますね 」と声を掛けると、
「そうですね」と、嬉しそうに返してくれた。

とても快活な女性で、終戦直後から働いたらしい。
乞われて、銀行員として 50年、神戸で働き、
1995年 大震災の時には辞めていたらしい。

「私は負けず嫌いなのよ」
「爺さんは大酒飲みで、父さんも大酒飲みなの」
身長 は 145cmか、白髪の元気な人だ。

そんな彼女が僕に言う。
「身体、元気にしていてよ 」


バイクでの帰り路、彼女の歳を計算してみた。
亡くなった母と同い年だった。


そうか、彼女の言葉、母の言葉だったのか ・・ 。
ありがとう。


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