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エピソード89 豆腐小僧

89豆腐小僧

豆腐小僧(とうふこぞう)は豆腐を持っている子供の
姿をした日本の妖怪。

頭に笠をかぶり、盆にのせた豆腐を乗せた姿で描かれ
る。
顔は、人間の子供そのままのタイプや、一つ目である
タイプなどが見られる。
供の姿で現われる妖怪として草双紙では描かれており
雨の夜などに人間のあとをつけて歩くこともあるが、
特にひどい悪さをしたりはしないと扱われている。
昭和・平成以降の妖怪関連の文献では、雨の夜に現れ
通りかかった人に豆腐を食べるようにすすめるが、食
べると体中にカビが生えてしまうとされることが多い


89豆腐小僧 オリジナルストーリー

仙台の城下町を侍が提灯を持って歩いていた。
今夜は雨がシトシト降り、侍は少し急ぎ足になってい
た。

侍:
お奉行の説教が長くてすっかり遅くなってしまった。
それにしても恒例の速足競争で俺が車輪のついた下駄
使ったからって、何で失格なんだよ。
納得いかねーな。
まあいい雨の晩にはいい記憶がねえから早く帰ろう。

侍はさらに足を速めて歩いていると、前の方にも提灯
の灯りが見えた。
しかも立ち止まっているようだ。
よく見ると提灯を持っているのは12、3歳の男の子
供のようだ。

しかもその小僧は大きな笠をかぶり、提灯を持ってい
ない手にはお盆を持ちそこに何かのせているようだ。
よく見るとお盆の上にのせているのは豆腐のようだっ
た。

侍:
おやおやおや前にもこんな場面に出会った気がする。
何故か最後まで覚えていないが、嫌な感じしかしない
急いで通り過ぎよう。

侍はさらに足を速めて立っている小僧の前を通り過ぎ
た。
侍は何故か小僧が追ってくると思った。
...しかし、追って来ない。侍は後ろを振り返った。
小僧はその場に立っていた。

侍:
な、なんで追って来ない?前は追って来た気がするん
だが。
え~い気になってしょうがない。あの小僧に聞いてや
れ。

おい小僧、お前は何で夜中なのにこんな所に立って。
しかも雨降っているのにお盆に豆腐のせて、
つまり..その~...その豆腐は木綿か?

小僧:
絹ごしの豆腐です。いきなりなんですか?
なんで夜中に子供が一人こんなところに豆腐を持って
立っているのかってことですよね?

侍:
あ、あぁ~そうだこんな夜中に小僧が一人でいたら危
ないだろう。
この近くの子なら俺が家まで送ってやろう。
どこだ家は?

小僧:
ありがとうございます、でも僕はある人を待っている
んです。それに僕はとっても強いですからご心配には
およびません。
たぶんもうすぐ来ますし。

そんな話を侍と小僧がしていると、通りの奥の方から
羽織を着たきちんとした身なりの、しかし以上に頭の
大きな何者かがこちらに歩いてきた。
そして二人の前に立ち止まった。

小僧:
お待ちしておりましたぬらりひょん様、やっと自信の
持てる豆腐が出来ました。ぜひ食べてください。 

小僧は頭の大きな男に豆腐を差し出した、そして男は
それを食べた。

ぬらり:
うん、前回より格段に旨くなっておる、しかし、お前
の先代の味には遠くおよばない。
まだこれではワシの仲間に入れることは出来ん。
三日後またここで味見じゃ。

大きな頭の男は足音も立てずにその場から去っていっ
た。
豆腐小僧は頭を抱えてうずくまって泣いているようだ
った。 
侍は可哀そうになり小僧に声をかけた。

侍:
おい、小僧そんなに気を落とすな。
もしかしたら俺が手助けできるかもしれない。
じつはな、昔やくざ者にからまれてた豆腐屋を助けた
ことがあってな。
その主人がちょくちょく俺のところに豆腐を持ってき
てくれるんだ、しかも来ると必ず長々と豆腐の作り方
こまごま話していくんだよ。それで覚えちまった。
だから四代続く旨い豆腐屋の水、大豆、にがりの事や
作り方お前に教えてあげられると思うんだ。
それにな、豆腐で肝心なのは長旅をさせないってこと
なんだ、つまり......

こうして侍から旨い豆腐の作り方を教わった豆腐小僧
は練習に練習をかさねて三日後の晩また同じ場所で待
っていた。
もちろん侍も隠れて見ていた。

すると三日前同じ時刻にあの羽織を着た大頭の男が音
もなく小僧のところにやって来た。
侍は今度不味いといったら承知しないとばかりに刀に
手をかけた。

ぬらり:
ほう、今日はかなり自信があるようだな目に気合がみ
なぎっとる。
ど~れいただこう。
うん、これはうまい!こらなら先代の味に勝るとも劣
らぬ出来栄えじゃ!
よし、今日からお前を我が妖怪百鬼衆の仲間に加える
としよう。
よくやったぞ豆腐小僧。

大頭の男はまた音もたてずその場から消えて行った。
 
小僧:
やった~!お侍様のおかげで僕もぬらりひょん様の仲
間に入れてもらえることになりました。
本当にありがとうございました。
よかったらお侍様も豆腐食べてください。

豆腐小僧は満面の笑みで侍に豆腐を出してきた。
侍も一緒によろこび一緒に豆腐を食べた。
たしかに旨かった。
豆腐屋の親父の豆腐よりうまいと思った。

小僧:
あ、言い忘れてましたけど、いっぱい練習したんで古
いのも入ってますから気を付けてくださいね。

そう言われて侍が体を見てみると体中からカビが生え
てきた。
しかもどんどん増えて体を覆いつくしていく。
侍は気絶した。

侍は目を覚ました。
なぜか自分の家の布団で寝ていた。
あれは夢だったのか?と思って起きてみれば、部屋の
隅にタライにおいしそうな豆腐が三丁入っていた。

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