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エピソード84 土蜘蛛

84土蜘蛛

土蜘蛛(つちぐも)は、古代の日本においてヤマト
王権・大王(天皇)に恭順しなかった豪族たちを示す
名称であった。
各地に存在しており、単一の勢力の名ではない。
近世以後になって、蜘蛛のすがたの妖怪であると広く
みなされるようになった。

「土蜘蛛草紙」では、巨大な蜘蛛の姿で描かれている
源頼光が家来の渡辺綱を連れて京の都の外、北山に赴
くと、空を飛ぶ髑髏に遭遇した。
頼光たちがそれを追うと、古びた屋敷に辿り着き、
様々な妖怪たちが現れて頼光らを苦しめた、
夜明け頃には美女が現れて目くらましを仕掛けてきた
が、頼光はそれに負けずに刀で斬りかかると、女の姿
は消え、白い血痕が残っていた。
それを辿って行くと、やがて山奥の洞窟に至り、
そこには巨大な山蜘蛛がおり、
この蜘蛛がすべての怪異の正体だった。
激しい戦いの末に蜘蛛の首を刎ねると、その腹からは
沢山の死人の首が出てきたという物語である。


84土蜘蛛 オリジナルストーリー

夕暮れの平安京の朱雀大路を一人の若い武士が歩いて
いた。
武士の名は上総広常(かずさひろつね)と言った。

広常:
親父に、京より帝の警護を仰せつかった、京に行って
帝をお守りするのじゃ!って言われてたから来てみれ
ば。
どうなってるんだこの都は、まるでふねけじゃね~か
盗賊・野盗はやり放題だし、流行り病も横行している
し、やたらと付火と思われる火事も起きてる。
京の都ももう長く持たねえな。

そこに、いつの間にいたのか汚れた格好をした山伏が
声をかけてきた。

山伏:
そこの方すみませぬ、独り言を耳にしてしまった。
かなり都のことを嘆いてらっしゃるようだ。
そこで相談がございます。私が見たところあなた様は
かなりの剣の腕前と見た。
実は私が加持祈祷をしたところ、宮中の左大臣様はも
う殺され亡くなっておられる。

広常:
そんな馬鹿な!今日も左大臣を見かけたぞ、ちゃんと
足で歩いておられてた!

山伏:
そうでしょうな。
あの左大臣は偽物、本物の左大臣様を殺した者が化け
ておるのです。
そしてその者こそがこの荒れ果てた都の元凶、土蜘蛛
という化け物なのです。

広常:
なに、化け物が左大臣に化けてるだと!
そんなこと出来るのか?

山伏:
はい、土蜘蛛は自分が吐いた糸で何にでもそっくりに
化けられるのです。
しかも大きさも自由自在。
そしてその土蜘蛛がその毒気と糸で帝様を操っている
のです。

広常:
なに、許せん!化け物ならば俺が退治してやる。
おい山伏、左大臣を本当の姿にする方法はあるのか?
化け物に戻れば斬っても、誰も文句は言うまい!

山伏:
お任せあれ、私に妙案がございます。
すべて用意いたしますので今夜、宮中の左大臣の部屋
の前で待ち合わせいたしましょう。

そして、日も暮れ人の往来も少なくなった宮中、左大
臣の部屋の前、約束通り広常と山伏
そして二人は左大臣の前に乗り込んだ。

左大臣:
な、なんじゃお前たちは!
誰か、誰かおらぬか、曲者だ。
、、、、誰かおらぬのか~?

山伏:
左大臣様誰も来ませぬ。
私が香を焚いて近くの者たちは眠らせてあります。
それよりもこの薬草とイオウを混ぜたこの液で姿を現
しなさい!

山伏は手桶の中身を左大臣に浴びせかけた。
シュウシュウ音をたて左大臣から煙が上がり、左大臣
は本当の正体・土蜘蛛になっていた。

山伏:
やっと姿を現したな!ならば私も本当の姿に戻ろう、
そして私の仲間の烏天狗たちの恨みを晴らしてくれよ
う、覚悟。

山伏はその装束を脱ぎ取ると、顔が真っ赤で鼻の長い
天狗となった。
そして土蜘蛛が吐いてきた糸を持っていた天狗の団扇
ではじき返した。

土蜘蛛:
お前はあの時の天狗達の生き残りか。
安心しろすぐに仲間の所に送ってやるからな。
ハッハハハハ。

今度は土蜘蛛は毒針と火の玉を吐き出してきた。
天狗はしばらくは避けていたが、毒針が何本か身体に
刺さった。
しかし天狗はその身体で土蜘蛛に飛びかかった。

天狗:
広常殿、私が土蜘蛛を抑えているうちにこいつを退治
してください。お願いいたします!

広常は父からお守り代わりにと預かった先祖代々の
太刀で、力いっぱい土蜘蛛を切りつけた!
土蜘蛛は断末魔を上げるとその場に崩れ落ちた。

天狗:
広常殿、お見事これで我が仲間の無念も晴らせました
ありがとう。またどこかでお会いしたいものじゃ。

そう言うと天狗は空に去って行った。

この光景を物陰から冷たいまなざしで見守っている女
がいた。

女官:
おぉ~ようやった。天狗も我の話を信じてよく土蜘蛛
を退治してくれた。
これでもうこの宮中に我の邪魔をする者はもういない
フッフフフフフ。

満月の照れされた女の影はまるで狐のようだったそし
てその狐には九本の尻尾が生えていた。

第14話 玉藻の前 へつづく。
   

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