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二木一夫(ふたぎ・かずお)近畿大学総合社会学部教員。元毎日新聞記者。講義は論作文指導や…

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二木一夫(ふたぎ・かずお)近畿大学総合社会学部教員。元毎日新聞記者。講義は論作文指導や平成事件史など。石川県出身。https://www.facebook.com/profile.php?id=100005944361280

マガジン

  • 創刊号

    • 3本

    web版「総社ジャーナル」がコロナ禍の中、この春スタートします。創刊号は、新聞制作実習の授業を受けている近畿大学総合社会学部社会・マスメディア系専攻2年生が取材した記事を掲載します。

  • コロナ禍の豪州生活

    • 5本

    大学を休学し、2020年春、オーストラリア・ブリスベンへワーキングホリデーに出かけたゼミ生の山口秀斗君は、現地でコロナ禍に見舞われます。その中で見たもの、聞いたもの、味わったものは何だったのしょう。帰国するこの春までの1年間を振り返りました。ゴールデンウィーク中に計5回、集中連載します。

  • コロナ禍の学生たち(仮)

    • 1本

    コロナウイルスの感染が拡大した2020年春、キャンパスから学生が消えました。授業はオンラインとなり、外出は自粛を求められ、友人ともなかなか会えない。つらい日々は1年続き、4月からはようやく授業は原則対面に。でもまだコロナ禍が収束したわけではありません。激変した環境の中、学生は何を考え、どんな生活を送っているのでしょうか。

  • covid-19@2020春

    コロナ禍初期の一斉休校から緊急事態宣言中の世の中を記録しました。

最近の記事

  • 固定された記事

【注釈2020*vol.0】はじめに

改元を待つ浮ついた1年前の春から一転し、新たな感染症への不安に襲われる中、世の中の変化を切り取る300字のコラムを書き始めます。2018年春まで33年間毎日新聞の記者を務め、文章を書くのは慣れているとはいえ、コラムを書くのは久しぶり。見聞きした身近な出来事から簡潔に現代社会を描きます。(2020/3) 今、近畿大学の教員となり、授業で論作文の書き方を指導しています。新聞記事と同様、読む人にわかりやすく事実を単刀直入に書くのが大事。そういう文章術も書きたいと考えています。メアド

    • 【注釈2020*vol.36】いい話だから…

       Facebookを開くたび、だれかの若い頃のモノクロ写真か、だれかが読んだ本の表紙が目に飛び込んできます。  「昔の写真リレー」とか「7日間ブックカバーチャレンジ」と呼ばれるもので、友だちから指名されたら投稿し、ほかの知人にバトンを渡します。家にいることの多い今、アルバムで過去を振り返り、読書をして知識を深めることで、充実した時間を過ごせるでしょう。  そんなSNSでの増殖ぶりを見ていて、東日本大震災で拡散したチェーンメールを思い出しました。  コンビナートの爆発で有

      • 【注釈2020*vol.35】合い言葉

         官民あげての合い言葉がSNSにあふれています。  「ステイホーム」「家にいよう」。イラストがあり、使いたくなるデザインもあります。  3月の終わりから、海外のアスリートの発言としてメディアが紹介し始めました。広まったのは東京都の小池百合子知事が記者会見で協力を求めてからでしょう。  この困難をみんなで乗り越えよう。良い言葉なのに、みなが口々に言うと、善意や正義感からであっても同調圧力と感じてしまいます。  野草を摘んでいたら警察官に職務質問されそうになったという投稿

        • 【注釈2020*vol.34】 冷え切るGW

           いつの間にか大型連休が始まっていました。公園を歩いて、桜に代わって、鮮やかな赤紫のツツジが見ごろになっていることに気づきました。今年は季節感が鈍くなっているようです。  この時期、いつもだと半袖を着るほどの汗ばむ日もあるのに、日陰にいると肌寒く感じます。朝晩は冷え、ストーブをつけることもあります。  ウイルス禍の自粛で人が動かなくなったからでしょうか。社会活動が滞れば、熱は発しません。ぼくが勤める大学も、学生はキャンパス立ち入り禁止。教室は無人で、教員も在宅勤務が多く、

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        【注釈2020*vol.0】はじめに

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        • 創刊号
          3本
        • コロナ禍の豪州生活
          5本
        • コロナ禍の学生たち(仮)
          1本
        • covid-19@2020春
          37本

        記事

          【注釈2020*vol.33】あの日から15年

           マンションにぶつかった電車の下から助けを求める乗客の手だけが見えました。どれだけ手を尽くしても車両は動きません。その晩、阪神大震災で親族の親子が亡くなったことを思い出しました。  「しまった。あの人はきっと家族のだれかと話したかったのだ。せめて携帯電話で連絡をとって、すき間に入れてあげればよかった」  107人が死亡したJR福知山線脱線事故。現場につくられた資料展示室では、救出にあたった人たちのこのようなつらい思いを読むことができます。  惨事を知ってもらおうと、1年

          【注釈2020*vol.33】あの日から15年

          【注釈2020*vol.32】 『パニック』

          開高健の『パニック』(1957年)は、ネズミの大群が人間社会を恐慌状態に陥れるさまを描いた小説である▼ある地方で120年に一度という笹の花が咲き実を結ぶ。実を目ざして集まったネズミは翌春、無数の群れとなって、森林を滅ぼし、子供を食い殺し、人々に中世の恐怖をよみがえらせ、腐敗した政治への不満をもめざめさせた。ネズミの出現は収賄事件が起きた頃。官僚たちは策略で保身を図った▼この小説は現代の寓話だという。ネズミはいったい何を表しているのか。作者は、戦争末期のサイパンの集団自殺、放射

          【注釈2020*vol.32】 『パニック』

          【注釈2020*vol.31】電車にて

          平日の朝、阪神甲子園駅から奈良行き快速急行に乗った。先頭車両の乗客は15人。間隔を空けて座っている。スマホを見ているか、本を読んでいるか、目をつむっているか。電鉄会社の作業服を着たマスク姿の4人が立っている。職場の同僚を話題にずっと愉快そうにしゃべっていた▼電車内で話し声を聞いたのはずいぶんと久しぶりだ。せきエチケットが浸透しているせいか、静かである。帰りの車内でもくだをまく会社員を見かけない▼ナチスドイツに併合されるオーストリアを舞台にした「サウンド・オブ・ミュージック」を

          【注釈2020*vol.31】電車にて

          【注釈2020*vol.30】 ラジオ

          熊本地震から4年たった。今、大地震が起きれば、避難所に人が押し寄せ、ウイルス感染が広がる。そうならないよう家に居続けたり、車で暮らしたりする必要がある。行き場所のない人のためのテント村も用意しなければならない▼5日放送されたMBSラジオ「ネットワーク1・17」は、防災研究者をゲストに、命を守るための避難行動を考える内容だった。被災者を支え、災害に備えるをコンセプトに25年間続く防災番組が感染症をテーマにしたのは初めてだ▼映像と違い、ラジオは恐怖や不安をあおらない。ありがたかっ

          【注釈2020*vol.30】 ラジオ

          【注釈2020*vol.29】広告の自粛

          高見順の『敗戦日記』からのエピソードを一つ。昭和20年の正月、高見の母が成田の不動尊におまいりに行く。護摩の札は1人2枚までと注意書きがあった▼「札を受けるためには、本人がやってこなければならないわけで、そうして大切な輸送機関を混ませるわけである」。軍需輸送を優先した戦時中、鉄道を混雑させてはならず、来た人にもっと多くの札を配れということだろう▼いま、トイレットペーパーや除菌ティッシュの1人1点限りが続く。スーパーの人出は変わらず、とうとう、けさの新聞に広告の自粛を知らせるチ

          【注釈2020*vol.29】広告の自粛

          【注釈2020*vol.28】みなさんとともに

          自宅隔離を終えたドイツのメルケル首相が国民に向けてスピーチをした。日本語訳が「クーリエ・ジャポン」に載っている。家で一人でいなければならない高齢の人、持病のある人たちへのお見舞いに始まり、自粛の要請に協力する国民をねぎらい、「“その後”は必ず訪れる」と呼びかけている▼財政支援と社会保障は過去最大級。官僚的でなく迅速に手続きしているともアピールした。「連邦政府はみなさんとともにある」というメッセージは聞く人の胸に響いただろう▼日本の首相も記者会見をしたり、SNSで発信したりと同

          【注釈2020*vol.28】みなさんとともに

          【注釈2020*vol.27】授業スタート

          授業を始めた。登校禁止なので、ゼミの2、3年生24人を相手にLINEとメールで。この1週間で関心を持ったニュースとそれを選んだ理由を300字で書いてメールで送り、私が全体的な批評を一斉メールで返す。簡単な連絡はグループLINEを使う▼ほかの学生がどんな出来事に興味があるかを知ると、見たい情報しか見ない「フィルターバブル」に陥ることもなくなる。そう思って始めた▼今週、一番胸を打ったのは「JAの和牛プレゼント」を選んだ2年生の文章。「実家が農家。人ごとでない」「感染者が出たら作業

          【注釈2020*vol.27】授業スタート

          【注釈2020*vol.26】 『ペスト』

          ペストの感染で封鎖されたアルジェリアの港町オラン。食糧が平等に行き渡らず貧富の差が広がり、人であふれた収容所は悪臭と騒音、隔離への恐怖でひどさを増した。しかし、新聞が報じるのは「平静と沈着との感動すべき実例」。実態からかけ離れた当局からの情報と美談だった(カミュ『ペスト』)▼ヒッチコックの『海外特派員』(1940年)は第2次大戦前夜の欧州に派遣された米紙記者が主役。新聞社の社長は「記事に必要なのはファクト」「政府の発表はいらない」と言って送り出している▼『ペスト』は主人公の医

          【注釈2020*vol.26】 『ペスト』

          【注釈2020*vol.25】ゼミ生たちへ

          ゼミ生、基礎講読生のみなさんへ  1年前の浮かれた空気は何だったんでしょうね。気の滅入る日々を過ごしていると思います。  きのう、政府が緊急事態宣言を出しました。関西では大阪府と兵庫県が対象です。  自粛要請といってもこれまでと違い、法に基づくものです。罰則がなくても社会への心理的圧迫は一段と強まります。  「日常」が知らないうちにどこかへいきました。今は、「非常時」と思ってください。  家でじっとしていることが増えるでしょう。だらだらと一日を送るわけにはいきません

          【注釈2020*vol.25】ゼミ生たちへ

          【注釈2020*vol.24】4月7日

          この前の日曜日に散歩がてら、えべっさんの総本社、西宮神社へ出かけた。1月の「十日えびす」のときの雑踏、にぎわいはない。境内は閑散として、心ゆくまでお参りできた▼通り道の阪神西宮駅前に大時計がある。元々は商店街のアーケードに掛けられていた。1995年1月17日の朝5時46分に発生した阪神大震災の揺れで針が止まり、震災を語り継ぐため残った。家に帰る途中の住宅街には、犠牲者をいたむ労働組合の慰霊碑が植え込みに立っていた。こうしたモニュメントに、ここは6434人が亡くなった被災地だと

          【注釈2020*vol.24】4月7日

          【注釈2020*vol.23】 「戦場」

          中東シリアの内戦で国内最大の都市アレッポは4年前に陥落する。アラブの春をきっかけに反体制勢力が集まり、政府軍との市街戦が続いた。上映中の「娘は戦場で生まれた」は、死と隣り合わせのアレッポで生き抜いた人たちのドキュメンタリーである▼スクールバスは爆撃で焼け、教室を地下につくる。病院ですら空爆の対象だ。その模様をカメラに収め続ける女性ジャーナリストに、夫の医師は言う。「この先、危険と恐怖が続く。でも最後に自由が待っている」▼映画を見て、ウイルス禍のいまと重ね合わせた。見えない感染

          【注釈2020*vol.23】 「戦場」

          【注釈2020*vol.22】消しカス

          研究室の長机に、消しゴムのカスがたまっている。きのうの夜、ゼミ生が就職希望先へのエントリーシートを何度も書き直し4時間かけて完成させた。その名残である。締め切り日の消印有効で、郵便局の時間外窓口へ大急ぎで行った。日付の変わる直前、「間に合った」とLINEで知らせがあった▼きょうから学生はキャンパスに入れなくなった。1年365日開いている門がしまっているのを見て、ウイルスの脅威の広がりを感じた。立ち入り禁止はゴールデンウイークまで続く▼ゼミ生たちとはしばらくSNSでのやりとりと

          【注釈2020*vol.22】消しカス