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ユーモア会話術講座を受講する

 ダジャレは得意だ。だが、それが何の役に立つとも思えない。思えないが、そんなダジャレやおやじギャグを教える通信講座があるのだそうだ。教えるぐらいだから役に立つのか? 何の役に? その講座、「ユーモア会話術講座」によると、そもそもダジャレとは平安時代の風流を示す<「ざれ」「され」の発音が変化>したもので、<文化的にも認められた表現方法>なのだそうだ。古くは和歌、現代ではヒップホップがダジャレの系譜であり、ダジャレを聞いた相手の反応で<自分と相手の親密度>がわかったり、距離感をつかむことに使えるという。そうだったのか! しかしダジャレを言える相手というのは、非常に難しい。少々仲が良くても引くんじゃないか? どういうタイミングでどう言えばいいのか? その心構えも書かれていた。
<女性に下ネタは厳禁>
<笑いの強制は嫌われる原因のひとつ>
<自らの身を削るような謙虚な気持ちで言うことが大切>
 なるほど。ちなみにシャレは全く違うものを2つ並べてのそ共通点を見つけ出すもの、ダジャレは音の共通点を見つけるもので、さらにダジャレが言葉の使い方やスタイルで客観的に判断されるのに対しおやじギャグは言う人の“おやじらしさ”で判断される主観的なものだという。
 「ダジャレの発想方法」の初級編に、<軽い気持ちで10個ほど作ってみましょう>とあった。動物・人名・擬音を使ってダジャレを作るのだ。例に挙がっているのが
・パンダをかたどったパンだ
・ベッカムのプレーはさすがに別格(ベッカク)
・バッタがバッタバッタ飛んでいく
 ……これって面白いか? よくわからないので嫁に感想を聞いてみた。
「フトンが吹っ飛んだ、に似てるよ。前に聞いて感動したもん、フトンが吹っ飛んだ」
 フトン? ああ言った、言ったことある……そうだねえ、布団は吹っ飛ばないよねえ、ありえないよねえ。あれはベーシックなんだよ、「おやじギャグ&ダジャレ ネタ500選」の定番編にも出てたし。
「聞いたことなかったもん」
 そうなの?
「もしそういう状況でダジャレを言えって言われたら、私はフトンが吹っ飛んだって言おうと思ってる」
 そういうってどういう状況だ、それ? 
 では軽い気持ちで10個ほど作って……いざ作ろうとするとできない。全然出ない。どういうことだ? ムカデが足の動かし方を考えたら足がもつれたようなものか。できないできないと部屋の中をうろついていると嫁が呆れた。
「うそでしょ! あんなにやめて~と頼んでもやめないのに、できない? 世の奥さんたちはあんなに迷惑してるのに?」
 世の奥さんじゃなくて、あなただけだから迷惑してるの。勝手に被害を拡げないでください。
 重い気持ちで10個、なんとかできた。
・動物で
 ブタにぶたれた・トナカイは行かない・カニがカンニング
・人名で
 いけるマイケル・本庄まなみの本性・郷ひろみの合否発表
・擬音系で
しげしげ見たら泉谷しげる・牛肉ぎゅうぎゅう詰め・キウイ、ういういしい
 
 ……こんなもんか? こんなもんだよ、と読み上げる。聞いていた嫁は、
「いいんじゃない? 好感持てるし。でもねえ、」
 トナカイがわからない、とこっちを見た。
「そこかい、トナカイ、行くんかい? みたいな」
 へ?
「貝を買いにいっとるんかい! みたいな?」
 は、はい。
「チャウチャウちゃうんちゃう、みたいなね、リズムよね、リズム」
 鋭い指摘。あ! 上級編にこう書いてあるぞ、<高等な“ダジャレ”にはリズム感が不可欠>! ……うちの嫁、天才?

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